プレイヤーが得をしづらい、ゲームメディアの奇妙な収益構造

最初に

タイトルの話の前に、前回の記事の反響について。Noteの支援だけでなく、本家サイトのゲームの記事RT数などもすごく増えて、前回の記事を書いてから「応援されている」ことに力をいただいています。想像してないほど応援されていて、希望を持って進めるようになりました。本当にありがとうございます。

メディアはスポンサーの奴隷になりやすい

さて、本題。大昔「メディアなのだから中立で記事を書いてください」なんて事をブログのコメントで言われたことがあります。いやいやいや、基本的に中立なメディアなんてないのです。

例えば、現存する古参大手メディアはほぼ企業の代弁者です。大手企業からの広告を前提に運営されており、基本的には大手ゲーム会社の御用聞きになりやすい構造になっています。ゲーム会社から読者を集めるソースとなる情報をもらっていて、ゲーム会社からお金をもらっている。スポンサーであるゲーム会社の支援なしに成り立たないものです。
だから、そういったメディアはゲーム会社を守るために動くし、企業の利益と反するとき、よほどのことがないとプレイヤーのために動きません。

中立じゃないことを知った日

私はその昔大手メディアの純粋な読者で、彼らのお勧めに従ってとあるソーシャルゲームを始めて、そのゲームで明らかな詐欺(課金専用の有料ガチャで、本来でない低レアアイテムが出た)があり、運営に連絡しても補填されない事件がありました。
現在なら「有利誤認、詐欺だ!」となるところですが、当時はそういった知識もなく、みんな泣き寝入りしていました。が、私は消費者庁ではなく、ゲームを紹介した雑誌宛てにメールしました。「あなたがたが勧めてるゲームは、詐欺をしていますよ。紹介をやめてください」という内容だったと思います。
当時は純粋だったので「これは感謝されて、次回の記事でお詫びが載るに違いない」ぐらいに思っていましたが、現実は違いました。メールは無視されて、それ以降もそのゲームはお勧めされたし、広告も載って現実を思い知ったのです。

その後は自分でブログを始めて情報を発信するようになりましたが、色々あって問い合わせても無視ですし、『シノアリス』のサービス開始時のような目立つ時期でも、「企業で発表するのは無理なのでゲームキャストで頑張ってください」でした。
読者が被害を受けてもそれを発表できないほど、ソシャゲを扱う商業メディアは企業寄りの立場なのです。しかし、金を出しているのが企業なのだから、企業が利益を享受するのが経済的には健全とは言えます。

企業向けメディアだって重要なゲーム仲間

また、彼らは彼らで業界において役割を果たしています。昔は「大手メディアは腐ってる!」と思っていたのですが、今になってみると彼らの存在って結構まっとうで、欠かせない業界の一部なのだと思っています。
例えば、ファミ通などの古参商業メディアはお金をもらわなくてもゲームを紹介することが多いですね。それがPVに結びつかなそうなゲームであっても、特に初めてプレスリリースを送ったり、初めてゲームを出す会社などにはチャンスを与えようとする傾向があります。家庭用なら紙面も割きます。大企業の金で動いて、その成果を他の零細ゲームにも分け与えようとしているわけです。

インディーゲーム界隈や、小規模なゲームで「プレスリリースを送れば、無料でもプロモーションできる」という話がありますが、FGOをはじめとした人気ゲームならともかく、無名ゲームの情報は掲載すると人件費もかかるし、PVにならないし、本当に見せたい記事が見えづらくなるし、特に大手からすると結構サービスなんですよ。
(だから、ずっと広告を出さない小規模なソーシャルゲームのプレスリリースなどはプレスリリースを載せることが価値になっているSocial Game Info意外に載らなくなっていきます)
すべてのゲームメディアが Youtuber やゲームキャストのように「興味ないと載せない」と言い始めたら、完全に露出の場を失うゲームが出てくる。彼らがいないと始まらなかったゲームもきっとある。重要なメディアなんですね。

さらに言えば、彼らは今がんじがらめで、変わりたくても変わりづらい状況にあります。ある時期、ゲーム紹介時に「サーバー安定させてね」程度には苦言を呈することがありました。が、わずかなネガティブ部分をまとめ系の迷惑ブログに強調して抜き出されたりしたあと、そういったことを書かなくなったように記憶しています。何もしないと「点数水増し・癒着」とか言われて、何かすると「【悲報】有名メディアが××にダメだし」とか使われるわけです。見ていて本当にツラい。
PV優先でバズれば良い日本の迷惑系サイトが待ち構える環境と、経済的な依存、両方が古参メディアを縛っている。だから、企業と共同でコンサートイベントをしたり、eスポーツイベントをしたりして、より企業に依存する方向性で動くしかなくなっているように最近は見えています。

例外は少しあった

かつて、そういった状況ではないときもありました。大昔のAppBankは「●●社がゲームをパクっている」という記事を出して非難していた時期もあります。
ただ、それはメディアの方が力が強い(メディアに掲載されなければ売れないほど、メディアが重要だった)時期だったからで、力関係が弱くなった今では無理なわけです。あ、今でも4gamerはもともとオンラインゲームが強かった(プレイヤーコミュニティ寄りに発言する必要があった)背景もあって、言うべき所を言うことはあると思いますね。あと、未だに4gamerだけはDL効果が高いという話も聞くので、力もあるのでしょう。
ただ、最初から最後まで読者サイドに立つゲームメディアは「ゲーム会社の広告を廃して自由にレビューする」と言っていた、今は亡き『ゲーム批評』だけだったかもしれません。

ゲームキャストのスポンサーはAppleだった

ゲームキャストはというと、ゲームにお金を払うプレイヤー寄りです。企業の当たり前の事情は少し勘案しようとも思っていますが、基本はプレイヤーを守るべく「サーバートラブルは仕方ない、課金トラブルはゲームを止めろ」的なことを言います。ゲームは金を払うエンタメだと思っているから「ゲームは無料で当然」と言われたら反論するし、作者に還元すべきと言う。少額でも課金するプレイヤーを馬鹿にされたら怒る。
価格のわりにヤバい物は「ヤバい」というし、他のゲームと比べて評価する。改めて書いてみると本当にニッチだ……。

そんなニッチな「こじらせたゲーマー視点」でも多少収益化を可能にしていたのが、App Storeのアフィリエイトです。何を書いても、App Store のアフィリエイトは App Store に客を誘導している限り怒らないですからね。
そもそも iPhone がゲームスマホとして優れている事実もあり、私は積極的に Apple の端末をお勧めしてきましたし、貢献できたと思っています。
ゲーム代を稼ぐ程度の収益だったから記事にされたくないと聞いたことも書いたし、御用聞きメディアにはなっていなかったと思いますが、Appleを推進してきたスポンサーとメディアの関係でした。

ゲームキャストの奇妙な収益構造

で、ここからやっと「奇妙な収益構造」の話になります。奇妙なのは商業メディアではなく、ゲームキャストなんですよ!
ゲームキャストは、自分なりのワガママのまま、自己満足で企業メディアの逆で運営してきました。
有料ゲームで面白いけど救われていないゲームに着目したい、発売前のインディーゲームの注目度を上げていきたい、商業メディアで見捨てられたソシャゲでも、一度好きになって読者に強く勧めたら(プレイ時間がなくても)できれば墓場まで見守って最後を飾ってあげたい。

ゲームキャストのやっていることは、一部の読者やお金のないインディー開発者には喜ばれることだと思いたい。しかし、受益者が読者やインディー開発者のはずなのに、受益者からお金が出ない構造であり、メディアとしてはとてもいびつなのです(当然、終了するゲームからお金が出ることもない)。
そう、ゲーマー目線と言いつつ、ゲーマーから金をもらう構造を作れていない。金をもらうほどのバリューを感じてもらえていないか、その仕組みがないか(両方の可能性もある)、そんなダサい場所なわけです。

ちょっと現状を整理してみます。予防線として言っておきますが、下記はゲームメーカーや読者を非難しているわけではなく、現状の整理です。
ゲームメーカー側としては成長すると、ゲームは人気が出てるからネタを提供するだけでPVが出ます。成長したゲームは記事を依頼する必要がなくなります。むしろ、成長したら普段掲載されない媒体にお金を出して掲載されようとします(本来、ここに何かの提案を出さないといけないが、出す物ができてない)。
読者に関しては基本的にWEBのゲーム情報は無料だから、現在のウェブの常識として、情報に金を出す意識があまりありません。しかも、情報を有料化したら今度は拡散されなくなり、無名ゲームを広げるのが難しくなります。深さをウリにしているサイトだとメルマガなども考えられますが、ゲームキャストはそこそこの深さで、早いのをウリにしているのでちょっと合わなくて難しい。

この状態を打開するアイデアを出さないといけません。

ゲームキャストの現状

本当は、ゲーム紹介だけで生きていく方向性はあまり考えていませんでした。2018年2月ぐらいまでは。しかし、ちょっと欲が出て「頑張ればゲーム紹介だけで食えるようになりそうだし、そうしたら濃い情報出し続けられるし、ずっとこの方針でやっていけたらいいんじゃないか」と思って収益化を考え始め、2019年4月ぐらいには食っていけそう……と思ったところで今回のApp Storeアフィリエイト停止です。動き出していたのでなんとかなりましたが、何も考えないでいたら即死でした。不幸中の幸いです。

ゲーム会社については状況が好転していて、かつてゲームキャストに紹介されたインディーメーカーの方々が、最近のゲームキャストの拡散力に注目して広告を依頼するケースが出てきました。出ている所だと『マッチョGoGoGo』がそうなんですが、プレスリリースの相談や記事の掲載依頼も含めて出てきました。これは読者との合わせ技でもあって、ゲームキャストの読者が濃いし、ツイートもしてくれるのでときどきバズって爆発力を発揮したり、業界に知れ渡ったりするから「安いわりにワンチャンある」というのが魅力になっているようです。
とは言え、これだけでやっていけるほどではなく、インディー開発社、読者両方からきっちり収益を得られる提案を考えて、清く正しい読者視点メディアになりたいなぁ、とは思っています。上手くいったらノウハウをまたNoteで共有するので、ご期待ください。

以下、有料部分のお品書き

さて、以下は有料部分のお品書きです。マネタイズに当たり、企業の大口広告を得なくても上手くいっている無料ゲームサイトを調べた結果や、ゲームキャストの実験結果、後は自らの経験による「なぜゲームを紹介せず●連ガチャ回せる、などを推すのか」の説明。当分Noteを書く予定はないのでとりとめも無く詰め込んでしまいました。
例によって時限有料の性格を持ち、後々ゲームキャストの記事としてネタにすることはあるかもしれません。

1・無料ゲーム紹介サイトに応募して書いてみた
2・ゲーム紹介サイトのアフィリエイト勉強会に行ってきた
3・なぜ、ゲーム内容を紹介せず「おっぱい」と「今なら10連ガチャ引ける」「人気声優出てます」のバナーが出るのか
4・PRやAD表示をつけるとPVやアフィリエイト成功率は下がるのか?ゲームキャストのサイトを使った実験結果

有料部分の始めに

ネット上には、無料のゲームだけを紹介してるサイトが無数にあって、「ゲーム名 評判」とか、調べるとたくさん出てきます。これらは、個人が運営していたり、企業が運営していたりして、かなりの収益を出しています。
「なら、その方法でやれよ」
と思われるかもしれませんが、その運営理念はまったくといって良いほどゲームキャストになじみませんでした。やるぐらいならサイトやめます。しかし、取材したので飯の種にすべく、今回は記事にして供養します。
あとは、何か質問があればこの記事の末尾に追記したりしておこうと思います。
以下、5500文字程度続きます(長いよ!)

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げーむきゃすと は あなた を みて、「さいごまで よんでくれて うれしい」と かたった。