見出し画像

『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス』が弱い男でも全国大会に出られた2011年の奇妙なゲーム事情。「勝手にライバルが脱落していった」

インターネットの普及によって、ゲームはパッチでコンテンツを増やし、攻略側はゲーム攻略動画が出せるようになって、遊び方も攻略方法も変化した。しかし、パッチが当たるのに攻略動画はない(コンテンツは増えるのに攻略速度は増えていない)という谷間がかつてあった。2011年~2012年の『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス』がまさにそれだった。
そして、この記事ではそんな状況に助けられて全国大会に出場できた弱い(※一般的には強いが、強者の中では弱い)プレイヤーの話を記録として残す。

本記事は、「バーチャロンの有名プレイヤーが、ゼロから『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス』を始めて全国大会に出場するまで 」というタイトルにだったのだが、書いているうちにタイトルをかえた方が良いという結論になり、元記事の内容は影も形も消えてしまったことも書いておく。

さて、本文

「対戦でもっと勝ちたい、うまくなりたいなぁ」

対戦格闘ゲーム、FPS、カードゲームなど、対戦ゲームを好むプレイヤーなら、そう思ったことがある方が多くいることだろう。自分もそうだ。
幸いなことに、私には『電脳戦機バーチャロン』では強いことで知られる有名プレイヤーで、ゼロから『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス(以下、エクバ)』始めて、全国大会で128チーム中ベスト32まで残る実績を出した弟がいる。
彼に初心者から強くなるまでの話を聞けたら、きっと多くのプレイヤーの参考になるだろう。そう思って『エクバ』で勝てるようになるまでの話を聞いてみた。

弟は”むーみん”という名で『バーチャロン』をプレイしており、当時は強いことで有名だった。彼が発見したテクニックは”むーみんキャンセル”などと名付けられてwikiなどにも乗っているし、『バーチャロン フォース』ではテストプレイヤーとしてスタッフ側に引き抜かれている。2D格ゲーのプロプレイヤーのように有名でもないが、ゲームで金を得たという意味ではゲーセン全盛時代のプロプレイヤーと言えると思う。

で、ゲームを始めて全国大会でそれなりに活躍できた背景を聞けたのだが……「自分は全国大会に出られるほど強くなかったが、勝手に周囲のプレイヤーが脱落していった」という話だった。勝手にプレイヤーが脱落するとは、いったい…?

・パッチでゲームバランスが話変わるようになった
・オンライン対戦ができなかった
・ゲームプレイヤー層の入れ替え
・ゲーム攻略動画が普及していなかった

などなど、2011年のインターネット事情と、『エクバ』独自の事情が重なった奇跡があった。

本論の前にゲームの強さについて

これはゲームセンターにおける先輩の受け売りだが、対戦ゲームプレイヤーの強さは、おおざっぱに2種類に分けられると考えている。
1つ目の強さはプレイスキル。操作ミスなしに攻撃・回避・コンボを繰り出せる、超反応で敵の隙をつけるなど、操作に強いスキル型プレイヤーが強いのは言うまでもないだろう。
2つ目の強さは戦術を考える思考力。キャラクターの長所を生かした戦術や、ゲームシステムの思わぬ使い道、キャラ相性を利用した戦術を考えられるロジック型のプレイヤーもまた、スキル型と別の方向で強い。

現代eスポーツに通じるプレイスキル・ロジックの分け方
思考型に特化したプレイヤーには大きな泣き所がある。戦術というのは1度見たらプレイスキルが高いプレイヤーには真似されてしまうというところだ。だから、現代のゲームではそこまで思考型の能力が高くなくても、トッププレイヤーの攻略動画を見たり、カードゲームだったらデッキを真似するとかなり強くなれてしまう。よって、現代では思考型は昔よりも思考型の価値が落ちているといえる。
とはいえ、情報収集して、ここ一番で相手の癖を読んだり、誰も知らない新手を生み出したりできるのはとても重要なので、現代eスポーツではプレイスキルが高めのプレイヤー(もちろん、トップともなればスキルも戦術面も高いのが当たり前だ)と、分析能力などが高いコーチによってチームが組まれる。

弟はどちらかと言えばロジック型のプレイヤーであり、ゲームの仕組みを考えること、勝ち方を考えることに秀でていた。

エクバのプレイヤーは若く、勝利より満足度を大事にしていた

さて、ここから『エクバ』で強者が勝手に脱落していったという話をしていきたい。

画像4

まず大きかったのは、当時の『エクバ』プレイヤーは若くて中高生も多かったという事情だ。若いプレイヤーたちの間には「強キャラを利用して勝つのはかっこ悪い」という風潮があり、強いキャラクターを使い続けるプレイヤーが罵倒されるようなことすらあった。
こういった若いこだわりは争いを生み、伝説的に“マスターガンダム”が強かったゲーム初期は、これを使っているだけ秋葉原では警察が調停にやってきたという(※)。若い。

※マスターガンダムで警察がやってくる
マスターガンダムはとにかく強くて、明らかにバランスブレイカーだった。登場時は「究極無敵」、次にパッチで弱くなって「ダントツ最強」、さらにパッチで弱くなって「最強キャラ」、3回目の弱体化パッチでようやく「上から5番目ぐらい」というありさま。
秋葉原のゲームセンターでは、マスターガンダムを使用したことからけんかが始まって、警察がやってくる事件があった。『ストII』時代に懲りたプレイヤーではなく、新しいアツいプレイヤーがやってきていたのだ。若い人を取り込めたガンダムはやっぱりすごい。

また、『エクバ』にはオンライン対戦機能がなく、ゲームセンター内の人々と対戦しなければいけなかった。そうなると、ゲームセンターの人間関係が問題としてついて回った。ゲームセンターの常連と折り合いをつけないと、ゲームが続けづらかったり、タッグ仲間が見つかりづらかったりして大変だったのだ。常連が「強いキャラはつまらない」とか言い出したら、人間関係に配慮して使わないような遠慮も求められた。
一方、弟は年上すぎてコミュニティに溶け込めておらず、そういった人間関係とは関係なく遊んでいた。

また、対戦・大会に臨んでは強い相手と組むよりも友人と組むことを優先する若いプレイヤーが多かったという。弟がタッグを組むにあたってはゲームセンターで知り合った強豪を選んだが、その外では「本来であれば自分よりも上手いプレイヤーが、友人とタッグを組んだことで敗北していった」という。

※この先は有料だけど、満足しなければ返金OKな設定にはなっています。11月のゲーキャス秘密基地マガジンに登録していれば課金なしで見れるはず。

パッチ信仰によるプレイヤーの脱落

ここから先は

3,945字 / 3画像

¥ 500

げーむきゃすと は あなた を みて、「さいごまで よんでくれて うれしい」と かたった。