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最新Apple Arcadeから見る、Appleの方針変更。リリース以来最大のリニューアルが意味するもの

2021年4月、Appleが展開する定額ゲームサービスApple Arcadeはローンチ以来最大のリニューアルを行った。
それまで、Apple Arcadeのゲームはユニークな体験を持つインディーを中心としていた。そこに、ソリティアなどの定番ゲームを”Timeless Classics”として、過去にAppleが表彰した人気作を”App Store Greats”として加えたのだが……このリニューアルを見ていくと、明確に方針転換があったことが分かる。

具体的には

・落としきりインディー至上主義路線からの変更
・米国、Apple中心主義から世界をにらんだ戦略へ
・顧客層にあったゲームの追加

が顕著に表れていると考えている。今回は、なぜそう思えるのか説明していく。

初期のApple Arcadeの方針をおさらい

まず、Apple Arcadeについて振り返っていこう。
Apple Arcadeは、無料ゲームに押されて有料ゲームが敬遠されているスマホ市場において、有料アプリでしか作れない個性的なゲーム体験を再び市場に取り戻すという理想を掲げ、2019年9月にサービスインした定額ゲームサービスだ。
正式リリース時点で100本のゲームがあり、月額600円ですべてが遊び放題。さらに、毎月4ゲームが追加され続ける。リリースされるゲームは以下の条件を満たしているとされた。

・オフラインでも遊べる(対戦など通信必須の機能でなければ)
・広告なし、追加課金なし
・Xbox Game Passなど他の定額ゲームサービスでは遊べない
・多くがコントローラー対応
・スマホではiOS専用(Androidでは遊べない)
・Mac、Apple TV、iOS端末に対応し、クラウドセーブでどのハードで遊んでも続きが遊べる。

スマホで人気を博した『オーシャンホーン』の続編、『Monument Valley』開発会社の新作、そのほかインディーの有名ゲームを看板としており、Appleのゲームビジネス参入として発表は大きく話題になった。

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2020年の年初、市場調査会社 IHS Markit Technology の調査・分析ディレクターは、Apple Arcadeの会員は2020年に1,200万人に達し、定額制ゲームサービスの中で地位を築くだろう、とGameindustory.bizで予測を述べていた

予想外?予想通り?の苦戦

しかし、ローンチしてみるとApple Arcadeの苦戦は明らかだった。Appleは自社サービスの会員数などを誇ることで知られているが、Apple Arcadeの会員数についてはローンチ以来発表がない。つまり、上手くいっていないのだ。
また、多くの地域においてApp Storeを見てもApple Arcadeのレビュー数は少ない。レビュー数が少ない=遊ばれていないわけで大変なことだ。

この記事を書くに当たって、日米のApple Arcadeの全レビュー件数、その他主要18国の人気ゲームのレビュー数を2021年5月5日に私が手作業集計した。この記事でレビュー件数という表示が出たら、私の手作業集計の数値である。

何度か書いているが、下記が大きな障害になっていたと推測される。

1.キラータイトルの不足
加入の動機となるタイトルがなく、坂口博信さんが制作する『ファンタジアン』が看板として宣伝されたが、リリースはサービス開始から1年半後になってしまった。

2.広報体勢がいまいち
キラーと行かずとも、ゲームファンが喜びそうなタイトルもあったが、そういったゲームは日本では宣伝がなされず、知名度が上がらずに終わってしまった。これは今も改善されていない。

3.加入後に契約を継続する理由がない
エンディングがあり、終わるアプリが中心のラインナップだったため、目当てのゲームが終わったあとに次に遊べるゲームがなければ退会されてしまう。
追加されるゲームは基本的に1ヶ月4本で、ゲームの質と量の両方が足りていなかった。

結局、2020年中頃には多くのメディアで「Appleが方針を見直した」と報道され、実際に何人かの開発者からもAppleが方針を見直していることがゲームキャストに伝えられていた。
そして、その情報通りにリニューアルが行われたのが2021年4月2日となる。

実際どうなのか?調査会社による米国のレポート

先ほど書いたように、Apple Arcadeリリース以来、会員数の発表などは行われていない。だが、モバイル関連の調査会社DigitalDevConnectが米国で2020年7月に18歳以上2,000人を対象に調査したデータが公開されているので、それを軽く見ていこう。

結構気になるのはこのあたり。

1.Apple Arcadeは比較的若いゲーマー層が加入している
2.Apple Arcade加入者は60%が既婚であるのに対して、非加入のスマホゲーマーは49%が既婚で、加入者の既婚率は高め
3.Apple Arcadeはもともと金を払うヘビーゲーマー層が加入しており、加入者が1ヶ月内に無料ゲームに課金した割合は85%、非加入者は43%。
4.独占ゲーム、価格に対して優れたゲームが主な加入理由
5.解約理由は「充分な量のゲームがない」、「価格に見合わない」が多い
6.充分な量のゲームがないとするゲーマーは、多くが100本のうち10本程度のゲームしか遊んでいない。
7.加入者の忠誠度は低く、78%のアクティブ会員は「3ヶ月以内にやめよう」と考えている

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