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RAGE  自由社会が撲殺される日

寛容の代わりに非寛容が、言葉の代わりに暴力が世界のルールになるのは、ほぼ確実になっている。

アメリカの大統領選でいえば、ついこのあいだまで、やや勝ち誇ってさえいた民主党のブルーの輝きが急に褪せて、完全な五分、今日(10月30日)の朝のニュースでは激戦州だけに焦点を与えると、トランプ勝利の形勢ということでした。
もっとも伯仲した状況を反映して猫の目のようにメディアの分析と予測が変わる今回の大統領選なので、正直なところは、「どっちが勝つか誰にも判らない」というところでしょう。

正しくも、報道機関の「中立」という落ち着いて考えてみれば現実味の薄い概念を信じないアメリカマスメディアを見る人は、頭のなかにCNNやFOXが、どの辺の政治的立場に立って、どういう傾きで報道するか判っているので、レポーターやコメンテーターの言ったことを政治関数電卓に代入して、忙しくポンポンとボタンを叩いて計算する。

ご破算で願いましてええは、ポンポン、トトトン、えーと、トランプの勝ちかな?

それに較べると、UKやNZのマスメディアは、本当の立場はバレてはいるが、一応、中立、agendaなしを標榜しているので、純粋に信頼度の問題で、ザ・テレグラフから引用して、おおまじめな記事や論文を書くと、「あんたはアホか」と言われるのは、そのせいです。

「他人が言うことなんか迂闊に信用するおまえが悪いんじゃ」という、UK人一般の人生に対する態度の反映と言うも可なり。

そのUK紙が、「トランプ勝ちそうじゃん」と言い出したので、アメリカインテリのなかにも「あれ?おれが聞いてる話と違う。ハリスが優勢なんじゃなかったの?」と、そわそわしだしている人が出て来た。

背景には、マスメディアばかりか、ネット上のソーシャルメディアを含む情報メディアも、現実の世界で起きることを伝え切れなくなっている、という事情があります。

いま試みに、ネット上の東スポAIと言われる(←言われてません)ChatGPTに右翼系ソーシャルメディアを挙げてもらうと、

1 X-twitter
2 Truth Social
3 Parler
4 Gab
5 Gettr
6 Rumble

が挙がって、真っ先に「X」が右翼系ソーシャルメディアとして挙がるのが、なにがなし、哀しい笑いを誘うが、遠くジャック・ドーシー時代に「Twitterのアカウント凍結ポリシーはデタラメだ」という声があがり始めて以来、数多くのソーシャルメディア、日本式に言えばSNS、が登場して、それぞれにコミュニティをつくっている。

マスメディアで食っていこうとおもう人間に共通しているのは、当然ながら「言葉で食べよう」と決意した人間であることで、言葉を重要視する人間は、なかにはヘンテコリンな考えが多くあるとは言っても、基底は、ものを考える人間で、自然、子供のときから学校で叩き込まれた、人種差別はいけない、暴力はダメ、個人の生活を大事にすべきだ、という伝統民主社会の価値観を持っている。
いわば、思い切ってそういう言い方をすれば、リベラル的思考をするべく仕込まれている。

ところが
ところーが

簡単に言って、この「リベラル」の驕慢な態度の悪さに怒って、若い世代を中心に「反リベラル」の空気が醸成されている。

「反リベラル」という言い方をわざわざしたのは、これら若い人たちの意識の側に立つと、自分たちをライトウイングとも、ある場合にはコンサーバティブとすらおもっていないことで、
要するに、日本よりも酷い学歴主義のアメリカで、アイビイリーグを出て、ウォール街に就職して荒稼ぎしたり、HBS(ハーバードビジネススクール)でMBAを取っていきなり優良企業に高給の管理職として地位を得たり、大学で研究職に就いたり、というような人間の
「おまえらはバカだから卯建(うだつ)があがらない。恨むなら自分の無能を恨め」という態度を許せないと感じる若い人が増えた、ということです。
彼らの話を聞いていると、面白いのは「恨み」が具体的であることで、地方大学生がインタビューに応えて、「トランプ時代には家が8万ドルで買えたのに、いまは15万ドルでも買えない」などと言って怒っている。

日本に限らず、アメリカでも、箔がちゃんと付いているマスメディアだけ見ていると、まるでトランプ支持者は、にっちもさっちもいかなくなったビンボ高卒白人や欲ボケジジイの集まりのように印象されるが、実像はおおきく異なっている。

2012年に18歳のCharlie Kirkが非営利団体として結成したTurning Point USAを例に取ると、全米に2500の支部と18〜25歳の30万人の実働メンバーを持っている。

彼らの主張は

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