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【ヴィンテージ】イニシアチブ考察

ヴィンテージの白単イニシアチブについて。

単色の妨害アグロデッキであり、メインボードの殆どがマナソースとクリーチャーで構成される。
伝統的に白単は盤面で押しきるしかないデッキだが、イニシアチブというアドバンテージ源を利用することで、それまでとは一線を画する強さを手にした。



マナアーティファクト


現在のイニシアチブは再現性を上げるためにマナソースを31枚とした型が一般的であり、その内12枚を占めるマナアーティファクトの扱い方は重要である。

「囮をどう仕掛けるか」。これを最も意識すべきと考える。
イニシアチブの脅威が知れ渡った現在では、白マナを生み出せるアーティファクトには相手のForce of WillやForce of Negationが頻繁に飛んでくる。
囮を仕掛けるというのは、例えば手札にPlainsがあるときは先にMox Pearlをプレイする、マナアーティファクトが手札に複数あるときに重要度が低いものから順にプレイする、他に白マナソースが手札にあるときにChrome Moxを先にプレイする(この場合、着地したら刻印なしでも構わない)などして、相手のカウンター呪文を誘い出すことである。

「Force of Vigorにどう対処するか」も問われる。
此方はカウンター呪文を使えないデッキなのでどうしようもないと言えばそうなのだが、一つの対処法としてChrome Moxを始めにプレイすることが挙げられる。
通常MoxからChrome Moxの順番でプレイすると、Chrome Moxが戦場に出た際の誘発型能力である刻印へのスタックでForce of Vigorをプレイされ、対応してマナを出したとしても計1マナしか出せずに両方とも破壊されてしまうことがある。
逆の順番でプレイすれば、例え破壊されたとしても計2マナは確保できる。
Force of Vigorを警戒してMoxを出しすぎずに手札に取っておくこともあるかもしれないが、Griefで手札からMoxを落とされると以降のターンで行動数が少なくなるので注意したい。

「Mindbreak Trapをどうかわすか」も重要である。Cavern of Soulsのサポートを受けたクリーチャー呪文すら打ち消さずに追放してくるので、同一ターンの3つめにクリーチャー呪文を唱えないプレイを意識したい。

Archon of Emeriaを戦場に展開すると、以降マナアーティファクトをプレイしたターンにはクリーチャー呪文を唱えられなくなってしまう。
Archonをプレイするのはこのデッキの主戦略の一つなので、なるべくその前にマナアーティファクトを並べたい。
その際は前述したように肝心のArchonがMindbreak Trapに引っ掛からない展開を心掛けることが大事である。


クリーチャー


《不屈の解体者/Dauntless Dismantler》

The One Ringの登場以来低調だったイニシアチブデッキ再興の立役者。
常在型能力がとにかく強い。マナ加速手段としてほぼ必ずアーティファクトが使われている環境柄、相手の展開を確実に減速させる。Coveted Jewelをタップインさせることにより、Phyrexian Metamorphによるチェインコンボを止めることができる。Lurrusデッキがよく用いるMishra's Baubleをタップインさせることで減速を強いる。Urza's Sagaから生成される構築物トークンをタップインさせるため、此方のクリーチャーの攻撃が止まりにくくなり、デッキの打点が実質上がる。
また起動型能力は各種Moxや構築物トークン、Manifold Keyなどを容易に破壊できるため、戦場に睨みを効かせられる。
自身のパワーは1しかないため、サイド後はクリーチャーを抜きすぎず、デッキとして打点を維持することが重要。

《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》

定番ヘイトベアー。
先制攻撃が意外と強いが、環境のKarakasの煽りを食らって戦場から退場させられることもしばしば。
勿論此方もKarakasを運用するので、Thaliaを除去から守ったり、疑似警戒としたり、Solitudeの想起コストに充てることもできる。
G2以降で此方が後手の時は相手が先に展開するので、枚数を少し減らすこともある。ミラーマッチではサイドアウト筆頭。
個人的にはメイン3枚でよいと感じている。2マナ域クリーチャーが増えすぎるとデッキ総体でのパワーが下がる。Dauntless Dismantlerは重ね引きしても仕事があるが、Thaliaはそうでないため。とは言え初手に来る確率を考えると2枚以下にはできない。

《白羽山の冒険者/White Plume Adventurer》

地下街の2つめの部屋能力+自身のアンタップ能力で実質5/5警戒となる。そのためクリーチャーの最大サイズが4/4や4/3であるVine系デッキには極めて強い。アンタップ能力は此方のイニシアチブを守ることに繋がり、後述するLoran of the Third Pathのドロー能力を再度使うこともできる。
地下街の最初の部屋能力でPlainsを持ってこれるのも重要。3マナゆえ早期に着地できれば以降の展開が安定する。
相手の展開を妨害するクリーチャーでないので、ヘイトベアーの展開を優先し、これは後でプレイすべき場面は多々ある。Force of Willを使えないデッキなので、「ターンを渡しても即死しないか?」は常に考える必要があり、そのために各種ヘイトベアーがいる。
往年のMasticoreよろしく、アンタップ能力の適切な解決を忘れないようにしたい。Phyrexian Metamorphでこれをコピーした相手側も同様である。カードの上に指を置いておくなど方法は色々ある。
話は逸れるがサイドボードでThe Tabernacle at Pendrell Valeを運用することがこのデッキでも多々あるが、その際に筆者はダイスをライブラリーの上に置いてアップキープ処理を忘れないようにしている。

《第三の道のロラン/Loran of the Third Path》

以前はSpirit of the Labyrinthとのコンボで此方だけドローすることがよくあったが、Spiritが入る枠が殆ど無くなった現在ではそれもまず見なくなった。それでも相手がAtraxa, Grand Unifierで一方的にアドバンテージを取ってきた時には、何とか解決策を引き当てるためにドロー能力を起動することがある。手札の量よりも盤面を重視すべき局面は往々にしてある。
この能力は対戦相手を対象に取るため、相手がThe One Ringでプロテクション(すべて)を得ている状態では使えないことに注意。
Karakasで戻してから再召喚して、戦場に出た際の誘発型能力を使い回すプランも常に意識しておきたい。
このクリーチャーのみ先出しできないリアクションカードなのは注意(※除去枠のSolitudeは除外して考える)。Urza's Sagaに極めて強いためデッキ75枚から外れることはまずないが、メインではなく、サイドボードでの採用もあり。

《選定された平和の番人/Anointed Peacekeeper》

警戒持ちのため、守りながら殴れるイニシアチブに適したカード。
Bazaar of Baghdadに極めて強い。クリーチャー展開と相手のキーカード潰しを同時に行えるため。WastelandもBazaarに強いが、土地プレイ権を使用する、使えるマナ数が減る、先置きは逆にWastelandされる、Noxious Revivalで回収されるなど裏目はある。
手札や盤面以外から指定してもよいため、知識と判断力が問われる。Lorien Revealedを指定してマナ嵌めを強化してもよい。
注意すべきは呪文のコスト増加は相手だけだが、起動型能力のコスト増加はお互いにかかること。
クリーチャータイプがクレリックであるため、Cavern of Soulsでクレリックを指定してWhite Plume Adventurerを展開したあとでプレイできる。逆も然り。このデッキの初手キープ基準の一つに「展開の二の矢を用意できているか?」があるが、そこに貢献できるのは重要なポイント。
G2以降は相手の選択肢が増えて相対的にこのカードが弱くなるため、枚数を減らすことも。その場合、空いた枠にLoranを投入するとマナ域的に収まりが良い。

《練達の地下探検家/Seasoned Dungeoneer》

デッキの打点を異常に上げるカード。
先に攻撃して探検で土地が公開されるか確認してから、土地を置くべき場面がある。基本的に引き増しできないデッキなので、選択肢を拡げることを常に考えるべき。
2体展開して誘発型能力を同一のクリーチャーを対象としたとき、後に解決されるものは先に付与されたプロテクション(クリーチャー)により立ち消えとなる。イニシアチブを使う側は勿論だが、Phyrexian Metamorphを使う側もこのことは覚えておきたい。
Soldierは探検できないので、ThaliaやLavinia, Azorius Renegade(※青白型の場合)を使う場合は勘違いしないように注意。

《孤独/Solitude》

フェア同士の殴り合いに強いカード。
またOathが使用するShow and Tellへの合わせ技として強い。ETB能力でAtraxaを除去できる。
対OathはAtraxaが戦場に出るのを前提でサイドプランを組み立てるのが重要であると考える。
SolitudeとSwords to Plowsharesの併用はSerra's Emissary対策にもなる。
想起で唱えて墓地に送ることで、Dredgeが用いることがあるBridge from Belowを追放することもできる。

《別館の大長/Chancellor of the Annex》

最序盤が重要な現環境にマッチしたカード。Mox+Lorien Revealedで初手キープした対戦相手を開幕から沈めることも。また地下街の最後の部屋能力の捲りが強くなる。
素出しのためにCavern of Soulsでクリーチャータイプを指定する場合は、AngelよりもPhyrexianがよいと思われる。Phyrexian Censorの匂わせになるため。
参考として、デッキにn枚含まれるカードが初手7枚に少なくとも1枚ある確率は以下の通り。
n=1:12%
n=2:22%
n=3:32%
n=4:40%
丸めた数字ではあるが、投入カード1枚あたりの伸び率で考えれば、3枚でも十分な仕事をする。
Chrome Moxで切るという仕事もあるため4枚投入が一般的だが、適切なサイドボーディングをするためにも覚えておくと便利な指標である。

土地


《平地/Plains》
地下街の最初の部屋能力でサーチする+Wastelandへの耐性を上げるための計2枚体制が一般的である。
環境にWastelandが多いようなら、Emeria's Callを1枚Plainsに差し替えてもよいと考えている。

《魂の洞窟/Cavern of Souls》
環境に溢れるカウンター呪文をかわすために重要なカード。
以前2マナ域に採用されていたSpirit of the Labyrinthはクリーチャータイプがスピリットだったため、デッキとして序盤の展開に難を抱えており、同カードもその後採用されなくなったのだが、Dauntless Dismantlerの加入により問題は解消され、一段高い安定性を手にした。
クレリック指定で展開できるクリーチャーを増やして安定性を上げたいので、個人的に最低2枚はAnointed Peacekeeperを採用すべきと考えている。
クリーチャータイプの指定の仕方により相手に手札の中身や展開プランを晒すことになるので注意。

《不毛の大地/Wasteland》《露天鉱床/Strip Mine》
3マナに達していない段階で軽率に使うとマナが足りなくなることがあるので注意。
此方の展開を重視してマナ溜めすべき局面はある。

《ウルザの物語/Urza's Saga》
初期のイニシアチブで採用されることがあったが、最近は殆ど採用されない。
理由は「白マナ源が足りなくなる」、「Chancellor of the Annex採用型が想定する序盤の展開重視のゲームレンジと合わない」ため。

サイドボード


《無のロッド/Null Rod》
主にJewel対策。初手に欲しいが重ね引きが弱いため、3枚で十分ではと最近考えている。

《封じ込める僧侶/Containment Priest》
主にOathとDredge対策。またこのデッキが苦手とするPortal to Phyrexia対策も兼ねる。此方の墓地から釣られるクリーチャーも追放してくれるため。

《赦免のアルコン/Archon of Absolution》
ミラーマッチ最強カードであり、Bazaarデッキ対策も兼ねる。しかし4マナである。重い(=単体の重さというより、Seasoned Dungeoneerと併せて採用した時のデッキとしての重さ)。
トーナメントの当たり次第ではベンチ要員にしかならないため、構築段階から注意が必要である。

《剣を鍬に/Swords to Plowshares》
メインはクリーチャーとして運用できるSolitudeを投入し、サイドから追加の除去としてこれを投入するのが一般的。
2~3枚入れることになるが、3枚目の採用はデッキとして受けが強くなるため、特に後手を取ったときに重要。
SolitudeはLaviniaに弱いため、その対策として有効である。

《虚空の力線/Leyline of the Void》
0ターン目から機能する強力な墓地対策であるが、枠の関係で不採用となることが多い。後引きのブラックカウントに旨みがないことも一因。
勿論Tabernacleと併せて採用して墓地対策を厚くするのは有効な策である。

《精神壊しの罠/Mindbreak Trap》
0ターン目アクションとして採用しないほうがよいと考える。
理由はChancellor of the Annexと重ね引きしたときの噛み合わせが悪いため。Chancellorは自身の能力で相手の展開を遅らせるため、呪文3つという条件を達成しにくくなる。
単独で引いたときに仕事がないわけではないが、それでもMishra's Workshop+Mox+The One Ringと動かれると無力。

地下街探索


イニシアチブを得ることで地下街の探索が始まる

「秘密の入り口/Secret Entrance」
探すのは強制なので、相手がイニシアチブを奪った場合はシャッフル強制となる。

「鍛冶場/Forge」
ライフを詰めるのが第一目的なので、多くの場合は左の部屋ルートとなる。
対応で除去を撃たれることには要注意。相手に色マナがなくてもDismemberはあるかもしれない。
地下街探索の誘発にスタックしてContainment Priestを召喚し、部屋能力の対象をPriestとすることができる。特にOathデッキにOko, Thief of Crownsを出された返しの戦法として有効。仮に大鹿にされても1/1カウンター2個は残るため5/5となり、圧をかけることができる。

「失われた井戸/Lost Well」
除去を警戒すべき場面(例:Tundraが立っていてSwords to Plowsharesが飛んできそう)や、更地でドローの質を上げたいときは、右の部屋ルートで。

「罠だ!/Trap!」
キルターンの短縮。
相手のBolas's Citadelの使用回数に制限をかける。
相手ライフ5此方ライフ3で、此方のMana CryptとTrap!がスタックに乗ったときは、先にTrap!を解決させるように積むことで勝利できる。

「闘技場/Arena」
相手がThe One Ringでプロテクション(すべて)を得ているときは、Trap!ではなく此方の部屋を選ぶ。
Goadは盤面のアドバンテージを稼ぎだしてくれるので、ライフを詰めるより有用なときが多々ある。Forgeで強化したクリーチャーに突っ込ませるなど積極的に活用したい。
次の部屋でCatacombsを選ぶと盤面のアドバンテージを積み重ねることになるので、Trap!ルートを選ぶよりも有用だったりする。

「隠し部屋/Stash」「書庫/Archives」
確実にワンアドとなる。
Treasure tokenはSolitudeやChancellor of the Annexの素出しに貢献してくれる。

「地下墓地/Catacombs」
虚空から現れるパワー4威迫は出たら大体勝ちに繋がる。
他のクリーチャーを立たせつつ、Skeletonは殴りに行くという動きができるので、イニシアチブを維持しやすい。


「死せる三者の玉座/Throne of the Dead Three」
地下街最深部の奥義。
ETBや常在型能力持ちのクリーチャーを拾って更に盤面の圧を強めにいける。大体勝ち。
踏破条件を達成したらWhite Plume Adventurerは次からすべてのクリーチャーをアンタップすることを忘れずに。

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2024年3月時点の見解。

修正来歴
[2024/01/08]
・記述の追加(クリーチャー/サイドボード)
・見出しの追加(地下街探索)
[2024/02/28]
・記述の追加(マナアーティファクト/クリーチャー/地下街探索)
[2024/03/01] 
・序文の改訂
・記述の追加(クリーチャー/土地)

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