【第１回】イラスト添削講座

皆さんこんにちわ。閲覧頂きありがとうございます。
今回から今まで添削のご依頼を頂いたイラストを講座として公開していきたいと思います。

初めに自己紹介として、自分はゲーム業界で４年半程デザイナー及びアートディレクターをしていました。（現在は休養中）
関わったタイトルは名前は出せませんが、ソーシャルゲームが多く一応いずれも１００万～１０００万ダウンロード数の有名タイトルが多いです。
手がけたイラストの枚数は７００枚以上～といったところでしょうか。ラフを含めると１０００枚以上あると思います。

その中でもアートディレクターとして、または個人的な依頼でイラストの添削を請け負う事が年々多くなりましたのでいくつかノウハウとして公開することにしました。

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第一回として「今あるイラストを寄り引き立たせる方法」を１枚のイラストを例として解説していきたいと思います。
※一例ですので全てのイラストに当てはまるとは限りません。

まず今回解説するのはこちらのイラスト↓。

ゆみなり様からのご依頼で「同人誌の表紙及びポスターにしたい」とのことでした。
今回のご依頼は「元のイラストを最大限魅力的に活かせる加工」を中心とした添削で「全体的に色塗りと構図設定、仕上げの加工がとても苦手です。」とのこと。人物のラフからのデッサン指導もご希望されていましたが、残念ながらご依頼から納期までの日数が短かったので、今回はご自身で完成まで持っていったイラストにもう少し手を入れる形での指導になりました。

Lessons１　イラストの主役は「誰か」？

頂いたイラストについてゆみなり様から
「同人誌の表紙やポスター、ノベルティになる予定です。そのため「パッと見た感じの一枚絵としての見た目の良さ(まとまりやバランスに違和感がない、見た人が不快にならない、使い捨てのノベルティとしてならもらってやってもいい程度の画力と完成度)」と「人物自体の魅力(顔の良さや人体のバランスがおかしくないこと、パッと見て違和感がないこと)」を目指して描きました。」とのコメントを頂きました。

なるほど、ゆみなり様のイラストを見てみると確かにパッと見まとまりやバランスに違和感が無いように思えます。…が、どこか勿体なく感じます。一体なぜでしょうか？
頂いたイラストを整理してみることにしました。

添削時、画像に書き込んだので一見分かりづらくなっていますが情報を整理すると大まかに言えば「４つ」の要素に分けられます。

＜１＞ひとつは「光源が３箇所にある？状態」
＜２＞「全体的に青みが強く、同系色のキャラクターに目が行かない」
＜３＞「背景の電柱の線画が太く、キャラの線画が細いことと影色が薄いのでキャラがどこにいるのか分かりづらい」
＜４＞「人間の視線は左上から右下へと向かっていくようになっているのに対し、構図自体及び白っぽい空のせいでキャラが一番最後に視界に入ってしまう」

という状態です。
つまり、「せっかくのキャラクターが主役なのに存在感が薄く勿体無い」状態なのです。ではここからどうしたら良いのでしょうか？

Lessons２　キャラクターを際立たせてあげよう

何が足りないのかの情報を整理したら次はいよいよオーバーペインティングによる添削です。実際にどのようにしたのかこちらの画像をご覧ください。

おわかり頂けたでしょうか？最初に頂いたイラストに比べてキャラクターの存在感が増し、情景がより鮮やかにはっきりしたのではないでしょうか。

←Before　After→で並べてみました。並べてみるとより違いがはっきりできるかと思います。それでは一体どこを添削したのでしょうか？

【ポイント１】光源をしっかり設定した

まず気になったのは光源です。「光源（太陽）が３箇所＜正面＞＜逆光１（キャラの左後ろ）＞＜逆光２（キャラの右後ろ）＞に見えてしまう」といった点が気になりました。
その中で最も電柱の影が強いように見受けられましたのでそちらに合わせて＜逆光＞という形に調整することにしました。

【ポイント２】キャラと自転車の立体感を出す

ポイント１でキャラの影も逆光気味に調整しました。合わせて今度は自転車に注目します。自転車の立体感がなくのっぺりとした印象になってしまっています。光源を設定した方向から光が来るはずなので、自転車の立体感を出すために影と金属の照り返しを描き込みました。カゴも同様にどこが手前でどこが奥なのかを意識しながら１本１本光の照り返しを描き込みます。

【ポイント３】キャラの光源の照り返しも描きこむ

キャラの照り返しも同様に描き込みます。海からの照り返しの青みがかった光、太陽からの夕日色の照り返しがキャラのどこに当たるのかを考えながら描き込みましょう。この辺の解説は反射光、などで検索するとわかりやすい解説が出てきますので割愛します。

【ポイント４】全体的に青みがかっている色味バランスを調整した

全体的に青みが強く、全てに置いて同じトーンに見えてしまうためキャラと背景が同化している現象が起こっているようでした。
そのため、差分化を図るために空をやや紫っぽく・海をやや暗い青っぽく・キャラを夕日のオレンジっぽくと、色味をそれぞれ微妙に変える方向で調整する形に落ち着きました。

【まとめ】

まとめとして、
＜１＞光源を設定し直して
＜２＞キャラに逆光の影を足し立体感を出す
＜３＞自転車のカゴの照り返し
＜４＞自転車の金属の照り返し
＜５＞キャラの立体感を足すために夕日からの照り返しと海からの照り返しを書き足し
＜６＞空の色味の調整

を調整致しました。

【全体的な総評】
・何を一番ハッキリ伝えたいのかを明確に決めて、構図を調整しましょう。
上記の画像ですと、①→②→③の順番に目が行くようにした方が良いです。

・キャラがメインになるはずのイラストで背景の方が目立ってしまっていたのでそちらをもっと目立たせるようにした方がいいでしょう。

・背景の線画はもっと細くした方が良いと思います。

・光源をしっかりと設定して陰影をつけましょう。

といったところでしょうか。

ワンポイントとして付け足すならこれくらい背景をバッサリ切ってしまっても構図的に収まりが良いと思います。女性向けの同人誌なら右上に細身のタイポグラフィーなんかのタイトルが来るとおしゃれっぽくなるんじゃないでしょうか。

今回の添削はここまで！
同じイラストでもこのようにほんの少し意識するところが違うだけでだいぶ印象が変わってくるものが多いです。構図を切り取った提案をしたように、技術面というよりも少しの工夫と知識で良く見えるようになる方法は沢山あります。

それでは次回もまた別の添削したイラストを解説していきたいと思います！

ではでは。

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