凱旋門賞2021

今年も凱旋門賞の季節がやってきました。去年はコロナ禍の影響もあり日本馬は未出走でしたが今年はクロノジェネシスとディープボンドの2頭が参戦しますね。さて、先日のフォア賞を以って参戦馬たちの前哨戦も一区切り着きました。個人的な見解にはなりますが欧州競馬をちょろっと振り返りつつ日本馬のチャンスはどんな感じなんだろうかというところを今回書いていこうかなと思います。

まず去年の凱旋門終わってから、エネイブル、ソットサス、ガイヤース、マジカル等欧州の名だたる名馬が続々と引退していきました。私は「これは面子次第で来年こそ凱旋門勝てるのでは……?」とこの時点では密かに思っていたのです……そして今年に入ってから……正確な時期は忘れましたがドバイ終わりくらいにクロノが凱旋門行くのでは、というような声が聞こえてきたように思います。(もしかしたら有馬くらいから言われてたかも?)
ドバイシーマこそ現在世界レーティングトップのミシュリフに敗れましたが展開の綾があってのこと(だと思ってる)ですし、正式に登録した後は宝塚を勝って殴りこみだーとか思っていたのを覚えています。そんな折に主戦を務めていた北村騎手の負傷離脱がありました。
…………この時点でほぼ確定でルメール騎手になるであろうことは大半の人の目からも明らかであり、正直に言えば鞍上強化だなと個人的には思っていました。(個人的な感情で言えば継続コンビが好きなので北村騎手に乗って欲しかったですが)
アーモンドアイが去った後の最強女王クロノジェネシスとノースヒルズの刺客ディープボンド、この時点ではモズベッロもいたチームジャパンで凱旋門もあながち無い話ではないかな、とやはり私は思っていました。6/4までは……

6/4、英オークス。もはや説明不要でしょう。この日英オークスの歴史を塗り替えた馬が現れました。クールモア×エイダン・オブライエンの鉄板コンビが送り出したスノーフォール。2着に16馬身差を着けたというニュースを目にした後、急いで映像を確認してそれはもう驚きました。驚きましたとかいう言葉では全然言い表せないくらいには。
この時点で私は日本馬の凱旋門勝利を諦め、割とスノーフォール応援モードに入ってしまった事をここに懺悔します。……ただの欧州馬、ガリレオのサイアーラインであればまだ違ったでしょうが、まさかのディープ産駒。私は一気にこの馬に心奪われてしまいました、ごめんなさい。

そして欧州戦線はそんなスノーフォールだけでなく、続く英ダービーで勝利したアダイヤー。彼はその後もキングジョージでミシュリフを下して勝利。(ダービー→キングジョージ勝利はガリレオ以来だそうで)
英ダービーは3着に敗れたハリケーンレーンも愛ダービーを勝利後、パリ大賞を6馬身千切り、続くセントレジャーも2馬身以上差を着けG1連勝。
そしてスノーフォールと同じくクールモア×オブライエンのセントマークスバシリカは2020のデューハーストSを勝利し、今年は仏2000ギニー、仏ダービー、エクリプスS、愛チャンピオンSとG1を5連勝。(その内エクリプスSはミシュリフを、愛チャンピオンSは現在凱旋門オッズ1位のタルナワを下しての勝利)

…………という具合に、去年居なくなった強豪とはなんだったのかと言いたくなるような化け物3歳勢が現れてしまったのです。8月前には私は今年の凱旋門、スノーフォールとバシリカを有するクールモアVSアダイヤー、ハリケーンのゴドルフィンになるだろうなという予想をしていました。食い込んで来るならミシュリフかタルナワか……日本は今年も無理そうかー、なんて……
そんな折に迎えた先日のヴェルメイユ賞、英オークス後、愛オークス、ヨークシャーオークスと圧倒的な力で勝ってきたスノーフォールがまさかの敗戦、続くフォア賞では欧州初戦のディープボンドが鮮やかな逃げ切り勝ち。この結果を受けてチョロい私は俄然今年の凱旋門賞が面白くなると思いました。

さて、長々前置きを書きましたがここからが本番です。まずはスノーフォールの敗戦から読み解いていきましょう。
これは既にフランキーのコメントも出ていますが、ひとえにペースメーカーのラジョコンダのミスが原因でしょう。1000m通過が68秒という欧州ペースを差し引いても超スローペース、スノーフォール自身も34.16という上がり最速の脚は使っているものの勝ったティオナも道中番手でありながら34.32の上がりで単純に位置取りの差が出たレースでした。恐らくスノーフォールはかなりステイヤー気質なのではと思います。2歳時の1400、1600での成績を見れば割と察せられた部分ではあるのですが、超スローからの3ハロンスプリント戦では部が悪いのでしょう。消耗戦、それも英オークスのような道悪こそ彼女の力を最大限に発揮する舞台なのだと思います。(5ハロン高速戦もハマりそうで、個人的にはちょっとアーモンドアイを思い出したり……)
戦前私は使い詰めになるヴェルメイユ賞は使わない方が良いのではと思っていたのですが、本番前に修正点が見つかったのは逆に良かった……のかなと思ったり思わなかったり。とはいえ、こんな化け物どうすんのよ状態から倒し方は分かったというところまで来たのは他陣営にとっても朗報ではあるかと思います。……懸念点があるとすれば、その超スローを差し引いてもいつもの馬なりで上がってくる感じがなかったのは気がかりではあります。ロンシャンが合わないか、あるいはもしかしたら目に見えない疲れもあった……のかも?(パドック見る限りは毛艶も良く疲れは無さそうでしたが)

次にフォア賞のディープボンドを振り返ります。戦前、私は条件次第で逃げるのではと思っていましたが見事に的中。あのメンツの中でブルームに出負けしなければそうなるだろうなという感じでした。
スタート後先手を取ってからこれまた1000m通過が66.85のかなりのスローペースに落とし込みます。勝負をかけたのはフォルスストレートからで、ラップからもわかる通り4ハロン戦を余力十分の状態で仕掛け、全て11秒台でまとめて上がりは33.85を出す非常に良い勝ち方でした。戦前の作戦では逃げ指示ではなかったとのことですが、クリスチャンの判断が光りましたね。去年の凱旋門勝利ジョッキーに加えて日本馬の騎乗経験も活きた結果だと思います。

さて、同日行われた両レースですが、フォア賞のタイムが2:31:82、ヴェルメイユ賞が2:31:99でした。もちろんこの結果だけでディープボンド勝てるじゃんとはなりませんが、初ロンシャンの馬場を苦にせず良い内容で勝ったという事実は確かにあるのに加え、スノーフォールの弱点も判明したのはチームジャパンにとってかなりのプラス材料でしょう。スタミナお化けのディープボンドとしても消耗戦になるならその方が歓迎でしょうし、クロノジェネシスもまた然り。両馬とも道悪適正があるのも今の時期は心強いですね。
ただそれでもやはり気がかりなのはクロノが本当にロンシャンに対応出来るか、というところです。前哨戦無しのぶっつけ本番で(失格にはなりましたが)入着まで漕ぎ着けたのはディープインパクトだけ、というのが欧州遠征の難しさを物語っていると思います。更に今回は現地入りが10日前というかなりの強行軍なのも気がかりです……どういう根拠なのでしょうか。
他の問題としては斤量差も無視できません。ボンドが59.5、クロノが58、いずれも日本では背負った事のない斤量であると同時にスノーフォールが54.5、アダイヤー、ハリケーンレーン、セントマークスバシリカが56.5というのがやはり不利として否めない面があります。
それらを加味した個人的な現時点での順位付けは

スノーフォール
アダイヤー、セントマークスバシリカ、タルナワ
ハリケーンレーン、ディープボンド、クロノジェネシス、ミシュリフ
ブルーム、ラヴ、ティオナ

という感じかなーと思っています。ただミシュリフは出走しないらしいのと、ラヴは馬場次第、バシリカも……恐らく出てこないっぽいので日本馬としては楽に……なると良いんですが。
個人的な想いとして欧州3歳4強の対決も見てみたいのでバシリカくんがスノーフォール敗戦を受けて出てきてくれないかなーとも思っているんですが、陣営的には12fは長いとの判断らしいですね(近走見る限りいけそうな気はするんですが)英チャンピオンSか、あるいはこのまま引退か……ソットサスと食い合いそうだから今引退させてもと思わないでもないですが、クールモア的にはガリレオ後継の看板が早いところ欲しいのかもしれませんね。

本番はオブライエン陣営がペースメーカーでスノーフォールの得意ペースで進める展開になるでしょう。あとは本番騎乗するであろうムーア騎手がどの位置に付けるかが鍵になると思います。ディープボンドはスノーフォールより絶対前、できれば単騎番手くらいで、クロノはスノーフォールの横か一つ前くらいで進められたら勝ちの目はあるのかなという印象です。もちろんスノーフォールだけでなく他の有力各馬も警戒する必要はありますが、スノーフォールを打ち倒す競馬であれば少なくとも上位入選は可能なのでは、などと……いえ、あんまり大きい事言うと逆の可能性引きそうなのでこの辺にしておきます……
ともかく、まずは無事に走り切って欲しいですね。クロノは戻ってきて体調次第では有馬が引退レースになると思うので、大変なスケジュールでしょうが怪我なく帰ってきてほしいです。決戦まで残り2週間、全馬の健闘を祈ります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?