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エッセイ:推し語り 〜死角から突然殴ってきて沼らせてくる「隠しヒロイン」〜

ちょうど3年ほど前のこと。主にソーシャルゲーム「Fate/GrandOrder」のキャラクターを愛好しているアカウントによる、こちらのツイートが反響を呼んだ。

引用したこのツイートは最近(2024年2月)になって再び話題になり、私のアカウント、それも複数のものでTLに流れてきた。

このツイートを見て私は首がもげそうになるほど頷きまくった。この投稿者がいうところの「完全に死角からアクセル全開で突っ込んできた守備範囲外のキャラ」に泥沼のようにハマった経験に、それも複数心当たりがあったからである。

さて、今回はそのモデルケースを「美少女ゲーム」以外で掲示してから、そんなプレイ体験ができるゲーム作品をオススメしていきたいと思う。

最推し競走馬「スピーディキック」

私には美少女ゲーム以外に幾つかの趣味がある。その中で一番深いハマり方をしているコンテンツが「競馬」である。
元々父親がセミパチプロ程度にギャンブルを楽しむ環境で育っていたためその手のコンテンツにハマる土壌は整っていた。
コロナ禍に流れてきたとあるレースの映像をきっかけに競馬オタクの道にのめり込んでいった私は、受験が終わった2022年3月から地方競馬(南関東公営競馬)を開催する大井競馬場や船橋競馬場へと繰り出すようになっていた。

そこで出会ったのが、「彼女」だった。

当時個人的に応援している馬がいた。
クールフォルテという芦毛(グレー)の牝馬で、ニコニコ動画公式の競走馬所有/育成企画「リアルダービースタリオン」で所有されていた。
中学時代からニコニコ動画という環境のもとで「オタク」という属性が育った私はニコ動に対してある種の帰属意識を抱いており、競馬場現地の土を踏むことがなかったその前年・2021年のデビュー期より徐々に自然と応援するようになっていた。

その姿を一目見ようと、「東京プリンセス賞」というレースの開催がある大井競馬場へと赴いた。

そして私は、今生ずっと忘れることのないであろう「彼女」との邂逅を果たしたのであった。

2023/12/30 第17回東京シンデレラマイル競走
2023/11/3 第13回JBCレディスクラシック競走
2023/10/5 第20回レディスプレリュード競走
以上写真3点及びサムネイルは投稿者撮影

その名は「スピーディキック」。

その出逢いは私にとってあまりに突然だった。

クールフォルテの闘いを見に来ただけのつもりだった私。
そのクールフォルテの背後から忍び寄ると最終コーナーであっさり勝負をつけ、さらには抵抗したもう一頭・レディオスターを根性で競り落とし、最後は漸くといったところで切れ味鋭いラストスパートを魅せた追い込み馬コスモポポラリタを尻目にゴールを先頭で駆け抜けていた「スピーディキック」という流星の如く美しい彼女を、私は気づいた時には既に目で追っていた。

そこから一度は強い相手への敗北を喫した同馬だが、夏を超えた彼女はただならぬ力を観衆に、そして私に魅せた。

その秋は3競走に出走。

結果から書く。
その全てが「圧勝」だった。

シーズン初戦・川崎競馬場で行われる「戸塚記念」では男馬…もとい牡馬を交えた骨のあるメンバーを相手に正攻法で大楽勝。
1ヶ月半後に出走した「ロジータ記念」では先頭を走った馬に早々に勝負をつけ先頭に立つと後は後続を引き剥がす一方。最後は7馬身差という暴力的とも言える凄まじい差を後続につけて勝利。

年末の大井競馬場が舞台となる「東京シンデレラマイル」では古馬…歳上の馬たちとの初対戦となった。
レースではそれまでのレースより後ろのポジションからレースを進める羽目になるも、レース後半・第三コーナーを過ぎてから一気の加速で大迫力の大捲りを決め、直線は独壇場。そのまま押し切って快勝した。

偶然か必然か。
私はこの三戦を全て現地で観戦していた。
そしてその強さの虜になるまで、時間は決して多くは掛からなかった。

気づけば彼女のバックグラウンドにも強く惹かれるようになった。

繁殖牝馬のけい養頭数はわずか3頭。北海道浦河町の小さな牧場で生まれたスピーディキック(牝4歳、浦和・藤原智)が、今週のフェブラリーSへと挑む。
 スピーディキックの生産者である熊谷武さんは、現在72歳。長きにわたって水田農業を続けてきたが、1995年に一念発起して、競走馬の生産も行っていくようになる。

フェブラリーSに臨む地方馬スピーディキックは繁殖牝馬3頭の小さな牧場出身【村本浩平コラム】
中日スポーツ・東京中日スポーツ
https://www.chunichi.co.jp/article/635884

彼女の出身は僅か3頭の繁殖牝馬を抱える、法人格も持たない小牧場の出身であった。
開業こそ29年前と決して大昔の出来事ではないが、牧場主の熊谷武氏は昨年2月の時点で既に72歳という高齢になっている。

血統面のバックグラウンドもまた魅力を感じてしまう。
父タイセイレジェンドは「JBCスプリント」というダート短距離の大レースを制した馬であったが、種牡馬としてはあまり期待がかけられていなかったのかスピーディキックが誕生した2019年に誕生した産駒は僅か8頭のみ。
母デザートフラワーも、競走馬現役時代は地方競馬(笠松競馬場)にて12勝を挙げたものの、最高でB級クラスに留まり特別大きなレースを勝利することはなかった。
スピーディキックは、あの稀代のスターホース・オグリキャップと同じく「雑草血統」という言葉のよく似合う馬なのだ。

そして今現在も、私は彼女の虜になっている。
出走するレースは全て現地で観戦するよう努めており、2022年に初めて出会った東京プリンセス賞以降出走した全てのレースを現地で観戦した(2024年3月現在)。
出会いから2年近く経とうとしている現在も、スピーディキックは確実に私のどこかを狂わせている。

で、結局お前は何が言いたいんだ

長々と語ってしまって申し訳ないが、言いたいことは
「別の娘に浅い惹かれ方していたところを、その視界の外から胸ぐらを猛烈な勢いで掴まれて強引にキスをされるような、そんな惚れ方をするヒロインって美少女ゲームとかでもよくあるよね…」
というその一点のみである。

比較的ギャルゲー歴の浅い私だが、そのようなハマり方をしてしまったヒロインの記憶はなかなかに多く、しかもその環境故に悩むこともある。
今回、そのようなプレイ体験ができるゲームを紹介しつつ、その悩みを共有したいと思う。

存在がネタバレ系隠しヒロインにどハマりしちゃったギャルゲーマーわたしはどうすりゃいいですか?

それが私の悩みだ。

隠しヒロインと一口に言っても色々いる…とはいっても、元々はときメモシリーズ・エンターブレイン発恋愛SLGなどのゲームで存在した「特定条件を達成すると初めて姿を現す/攻略可能となるヒロイン」を指す概念だろうか。
一方恋愛ADVゲーム(及びその流れを汲む多少ズレたジャンルのゲーム)の発達した現在、その「隠しヒロイン」という用語は原義に留まらず、少々多義的な使い方をされていると感じている。一方、上で述べた「特定条件を…」という定義を満たしていても隠しヒロインと呼ばれることが少ないヒロインも多いと感じている。
こればかりはゲーム公式サイドの宣伝の態度にもよるだろうか…

その中で「存在がネタバレ系隠しヒロイン」を定義するなら「特にシナリオゲーと呼称/揶揄されることのあるゲーム作品において、素性自体がそのゲームのシナリオの根幹の部分のネタバレになっており、ゲーム内外において素性もしくは存在自体が公式サイドに乗ってゲーム内外で秘匿されている攻略可能ヒロイン」といったあたりだろうか。
しょうもない議論を長々と弄してしまったが、とにかく、私はこの手のヒロインにひたすら弱い。

だが、悩みはそこ単体ではない。
個人的に辛いのは、その手のヒロインは存在が秘匿されるという都合上ハマったところでグッズがあまり出ないという点だ。

この手の隠しヒロインは時に、ゲーム上でそれは派手な登場をし、我々プレイヤーを短時間で虜にしてしまうことが多い。
ただでさえ魅力的過ぎるキャラクターを出しておきながら、そんな我々を計算尽くで惚れさせるような仕組みをゲーム上に作っておいて、都合があるとはいえグッズをなかなか作らないゲーム公式サイドが、私は、心底、許せないのである。

都合はわかってるつもりでも、この行き場のない怒りと悲しみはどうすればいいのだろう。

そのヒロインにまつわる二次創作を漁るか自給自足する手はあるかもしれない。
だが人気作品でなければ世に出回る創作物の量は高が知れている。ならば自給自足すれば…という話だが、「クリエイティブなスキルがなく、そもそもキャラへの解像度が低いかも知れない私が作ったとて…!!」という卑屈さが働き、その段階に至れないのが情けない私の常である。

そこで私がとった方法が、「SNSで作品の魅力を発信し、ヒロインの良さを共有できる『同志』を増やす足掛かりを創る」というものだった。

書いていて思ったが、なんと回りくどい方法だろうか!ジュラル星人じゃないんだぞ!
書いていて自分の卑屈さに良い加減イライラしてきてしまった。まぁとにかく、これから私がそのような隠しヒロインにハマった2作品を紹介する。もしそれをきっかけに私と志を同じくしてくれれば、それ以上に嬉しいことはない。

1.CHAOS;CHILD

ご存知の方も多いであろう「STEINS;GATE」などの傑作を擁する全年齢SFサスペンスADVシリーズ「科学アドベンチャーシリーズ」の第4作である。

全体的な作品の特徴として、ストーリーを読み進めるごとに自分にとっての「常識」「当然」の悉くが覆っていく衝撃のプレイ体験が挙げられる。最初に攻略する共通ルート、その後攻略が可能となるヒロイン4人の個別ルート。そして最後に攻略可能となるトゥルー編。その全てで、脳天に風穴を開けるような「仕掛け」が多数用意されている。

そして私のハマった「隠しヒロイン」も、この衝撃的な仕組みの中に組み込まれている。

特に2作目以降、最初から全年齢作品として出発することによる他の美少女ゲームとは毛色の異なった豪華な声優陣による迫真の演技の数々も魅力としてよく挙げられる科学アドベンチャーシリーズだが、特にこの作品は主人公を松岡禎丞、メインヒロインを上坂すみれという今をときめくトップ声優が演じた点で特筆される。

その他のヒロインも担当声優に留まらない魅力的な属性を多く備えている。
学校では怒らせると怖いが家では甘いお姉ちゃんと化す同い年の義姉、金髪ツインテ生意気後輩、巨乳眼鏡廃人ゲーマー、幼児体型のメガネ女子中学生…
王道をなぞり過ぎて、少なくとも趣味のプアな私であればハマらない要素がない…というぐらいに魅力的なヒロインが揃っている。

しかし、そんなヒロイン達に一時期目もくれない時期があった程に、私がハマった隠しヒロインは私の趣味、そして性癖をも破壊してしまった。

プレイも終盤に差し掛かろうとしている、最後のヒロイン個別ルートでようやくその本当の姿を現すという、その登場自体も衝撃だった。
しかし、このシリーズは基本的に個別ルートが短いためヒロインの魅力を描く部分はファンディスク任せになる時がある。
FDをプレイして、私の趣味は一時期完膚なきまでに、隠しヒロインの「彼女」一色に染まってしまった。
…そして、後日談小説「Children's Revive」を読んで、彼女というヒロインの本当の魅力にも触れられた気がした。

何がともあれ、魅力的なヒロインがこのゲームには潜む。
興味を持ったなら、是非プレイしてみて欲しい。
なお、ネタバレを避ける際はWikipediaはもちろんのこと先に述べたFDや後日談小説に関する情報も触れないようにすること。

2.メモリーズオフ -Innocent Fille-

1999年より続いた恋愛アドベンチャーゲーム「メモリーズオフ」シリーズの最終作として制作された作品。

時にシリアスな話題やサスペンス/ミステリー的な要素を交えることで、より熱い恋を演出することがシリーズの特徴ではあった。しかし、今作のサスペンス性はシリーズでもずば抜けて強くなっている。
正統派に近い青春ラブストーリーを描く「ライトサイド・ルート」が最初に攻略可能だが、そのルートで一度グッドエンドを迎えた後に攻略可能となる「ヘヴィサイド・ルート」では主人公の幼馴染である三つ子の三城兄妹(莉一・柚莉・琴莉)を巻き込んで主人公の秘められた過去に迫るストーリーが展開され、多くの伏線を張っては回収しながら二転三転してゆく衝撃のストーリー展開が描かれる。

そしてその中でも条件を満たすと攻略可能となる「真相編」と呼ばれるルートに突入した途端、「隠しヒロイン」はその姿を現す。
ここで条件を満たしていなかった場合はルートに突入できず必ずバッドエンドを迎えることになっており、主要登場人物が死亡するショッキングな展開になる。

私はそのバッドエンドを先に見ていただけに、よりその隠しヒロインの登場が衝撃的だった。
登場の仕方だけ話すが…正直ハイセンスだ。そのシーンのスチルをもとにしたグッズも出ている。
そしてそこからの彼女だが…詳しいことは話せないが…ゲームの佳境と言える部分にようやく登場し残り少ないシナリオでもきっちりこちらを惚れさせるほど、そのヒロインは魅力的だった。

ファンディスクでもアフターシナリオが収録されたことでその存在は多少オープンになっているものの、とてつもなく重大なネタバレであることには変わりない。
もしこれからゲームをプレイするのであれば、FDに関する情報を調べるのはクリアまで可能な限り避けて欲しい。

(そして個人的なお願いだが…メモオフシリーズの1〜5作目をプレイしてから、このゲームに触れてくれたら嬉しい。このゲームはシリーズの文脈を大いに汲んでおり、その方が楽しめるのではないかと思う)

おわりに

前置きのような部分を長々と書き連ね、それでいて本筋にあたるところで大事なことを何も話せないため、クソ記事になってしまった感が否めない。
そんな中でも私のこの趣味を理解して、私が挙げた作品に興味を持っていただけたのであれば、私にとってそれ以上の幸せは無い。

P.S.この類の隠しヒロインがいる作品を他にも探しています。宜しければこの記事のコメント欄でネタバレを避けながら紹介して頂ければ幸いです。

(文責:ウオハゲ)

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