【メモ】詩 けっしん 工藤直子

あけがた せみが しずしず あらわれ
「おまちどうさま」と殻を脱ぎはじめた

眠さもわすれ 見つめると
「この殻はなあ
生れ変るための『じかん』の家さ」

よいしょっと羽を抜け出し せみ 私をみて「あんたも生まれ変わりたいのかい?」

・・・ どきっ・・・

殻をかぶっているのを見破られたか
しかし どうやったら生まれ変われる?

「決心するんだよ いっしょうけんめい」

一人で行かなくちゃならない道があるのだ
 いま歌わなきゃ いつ歌う?
  歌いきったら死にます

と 飛び立ったせみを
空は しっかり抱きよせ
見えないところで涙をながした

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