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【GAKUDAI PARK STREET & STORIES】vol.1:M&Trees Flower and Plants

学大小路はエリアを拡張し、装い新たに「GAKUDAI PARK STREET」として生まれ変わります。2024年2月〜秋頃にかけて、学大のカルチャーやローカルを感じられる、個性豊かなショップが続々とオープン予定。この「GAKUDAI PARK STREET & STORIES」では、それぞれのお店と、そこで働く人の思いをお届けしていきます。 

高架下に沿って碑文谷公園へと続く道の途中、まだまだあちこちでリニューアル工事が進められる2月の「GAKUDAI PARK STREET」(旧 学大小路)。その一角に、新たな明かりが灯った。オープン第1号店となる「M&Trees Flower and Plants」は、センス溢れるブーケやアレンジメントが評判のお花屋さんだ。

以前は駒沢通りに店舗を構えており、この2月に高架下に移転した。

お店の中は、シックで落ち着いた雰囲気。深いグリーンの壁紙に、色鮮やかな花がよく映える。

作業をしながら出迎えてくれたのは、店主の三原美樹さん。ハキハキと明るい声の持ち主だ。ちょうど、夕方に受け取りにいらっしゃるお客さんのブーケをつくっているところだったそう。

お仕事の合間に時間をいただき、花屋を始めた経緯や思い、そして学大でのこれからについて、聞かせてもらった。

以前は、別のお花屋さんのスタッフとして、市ヶ谷や学芸大学のショップで働いていたという美樹さん。お客さんに喜んでもらいたいという一心で、情熱を持って懸命に働いてきた。そのなかで、自分でお店をやりたいという思いが芽生えたのだそう。

「花屋として、お客さまの思いを形にするのが私の仕事だと思うんですよね。お店に所属しているとどうしてもいろいろな制約があるので、もっと自由に、もっと丁寧にお客さんに寄り添いたいという思いが強くなったのかもしれません」

そうして2021年7月に、駒沢通りに最初の店舗をオープン。当時から感度のいい若者世代を中心に、まちのお花屋さんとして地域の人に愛されてきた。

以前の職場も含めれば、学芸大学で花屋に携わってもう10年ほど。学大エリアのお客さんの好みの傾向を踏まえて、市場では見た時にはっとするような個性的な花を仕入れているようにしているそう。

「前に働いていた市ヶ谷は大手企業が多くて、どちらかというと保守的なまち。だから赤いバラみたいなクラシックな花がよく売れるんです。でも学大の人は、チューリップでもベーシックな赤ではなく、ちょっと個性的なものを選ぶ人が多い。たとえば、これとかすごく売れるんですよ」

見せてもらったのは、ラズベリー色に、黄色と白が混ざったまあるい形のチューリップ。たしかに、あまり見かけない色合いで個性的だ。

「いろいろな色が混ざっていて複雑で、説明が難しいですよね。でもこれだったら、部屋に1本あるだけでちょっと新しい世界に連れていってくれる感じがしますよね。そういう自分の気持ちが上がるような花を選んで、買っていかれる方が多いような気がします」

気に入ったものがあれば、一輪から購入OK。男性が一輪だけ買っていくことも多いらしく、それも学大エリアならではだと美樹さんは笑う。

ちなみに最近は、球根が大人気なんだそう。「面白いことに、結構かぶるの。みんな球根、球根って」。
実際、取材中にもヒヤシンスの球根を買っていくお客さんがいた。見た目も可愛らしく、小さな花瓶に挿すだけで気軽に水耕栽培できるのも魅力的だ。

接客の際に美樹さんが大切にしているのは、お客さんに寄り添うこと。贈り物のブーケをつくるときは、贈る相手について丁寧にヒアリングしてイメージを膨らませていく。自分の好みを押し付けず、求められるもの、喜んでもらえるものをと心掛けた上で、一歩先を行く提案をしている。

「新しい花との出会いや発見を提供するのは、やっぱり花屋として必要なことだと思うんですよね。だから、ブーケの中には珍しい花や、はっとするような花も入れるようにしています。もちろん、あくまで行き過ぎない範囲でね。あとは季節感も大事にしてるので、その時々の旬の花を入れたりとか」

美樹さんが冒頭でつくっていた“奥さまへの誕生日祝い”用のブーケには、春らしいミモザやちょっと個性的なチューリップ、スイートピーなどが入っていた。明るい雰囲気のなかに柔らかさもあって、とても素敵だ。

花というとギフト需要が多いイメージだが、コロナ禍以降は自分のために買う人も増えているという。花選びに悩んでいる人には、「今どんな気分ですか?」と美樹さんは聞く。

「疲れていたり落ち込んでいたりするときに、お花を買いたくなるっていう方も多いんですよね。そういうときは、まずはその気持ちに寄り添います。そこから、お客さまの表情を見ながらいくつか提案をしてみて、最終的にはご自身に選んでいただきます。『これがいいですよ』と、私が一方的に決めることはしません」

たしかに、お花屋さんに行くと、色とりどりの花たちに圧倒されて、何を選んだらいいのかわからなくなってしまうことがある。そのなかで、選択肢をいくつか出してもらえたら選びやすいし、何よりそのときの自分の気分に合った花を提案してもらえるのはワクワクする。

こういうのは、心を癒す一種のセラピーにもなりそうだな、とぼんやり思っていたら、実際に「フラワーセラピー」というものがあるらしい。私も体験させてもらったところ、自分の本音や奥底の感情がするっと引き出されて驚いた。(おまけに、たくさん励ましてもらって涙腺崩壊……)興味がある人がいれば、お花を買いに行ったときに美樹さんに聞いてみてほしい。

「GAKUDAI PARK STREET」で新たなスタートを切った「M&Trees Flower and Plants」。学大歴の長い美樹さんに、このまちの好きなところを聞いてみた。

「学大のまちは、本当に人がいいんですよ。フレンドリーだけどベタベタはしない、ほどよい距離感というか。若い人からおじいちゃんおばあちゃんまで多様な人がいるけれど、みんな学大が好きだし、寛容であたたかいまちだなと思います」

駒沢通りから高架下に移転を決めた理由についても、こう話す。

「もともと学大がすごく好きだから、この『GAKUDAI PARK STREET』も再開発の一環と聞いて、最初は移転のお誘いを断ったんですよ。でもこの高架下プロジェクトに関わる方々に、学大のまちの未来を一緒につくりたいと言われたことに心が動いて、このまちにもっと深く携わりたいと思うようになったんです」

新しくオープンした店舗は、3つのお店が集まった複合ショップになっている。アロマオイルやアフリカ布の雑貨を扱う「Lien」と、佐賀県でプリザーブドフラワーやアーティフィシャルフラワーの教室を営む「FELICE FLOWERS」(林愉香)の商品も、常時店内に並んでいる。いずれも美樹さんともともと親交があり、花や植物への思いが共通する方たちだ。

長年アロマに携わり、自然セラピスト協会の代表でもある大塚久子さんのブランド「AROMA LIEN」。好みや、日々の悩みに合わせておすすめのアロマエッセンシャルオイルを教えてくれる。
アフリカ伝統の民族布「パーニュ」をつかった雑貨や洋服も販売。久子さんが布の仕入れからデザインまでおこなっている。
「FELICE FLOWERS」のフラワーバルーン(学大初!)は、お祝いにもおすすめ。

クリスマスリースやしめ縄づくりといったお花のワークショップのほか、アロマに関するワークショップも定期的におこなう予定だそう。ちなみに、店内でのポップアップも積極的に開催している。

「移転後初めてのポップアップでは、リネン専門店の『LINEN & DECOR』さんからリネンのプロダクトを、学大在住のフードコーディネーターの松島由恵さんからはお弁当を出していただきました。そうやって、花と食、みたいに別のものを掛け合わせていろいろ楽しめたらなと。もちろん花を買いにきてもらえたら嬉しいけれど、『ここに来たら楽しいことがある!』と思ってもらえるお店にしていきたいですね」

せっかく高架下に移転してきたからには、学大在住の方々と一緒にやりたいという気持ちが根底にあるという美樹さん。学大のまちとともに、地域密着型のお店としてやっていきます、と力強く語ってくれた。

取材を終えたあと、気づいたら少し元気になっていた。美しいお花やアロマの癒し効果ももちろんあるだろうけれど、きっと美樹さんの人柄のおかげだと思う。明るくてパワフルで、愛のある人。一度会ったらきっとファンになる。

大切な人に、そして大切な自分に、花を贈りたくなったときはぜひ「M&Trees Flower and Plants」に足を運んでみてほしい。

M&Trees Flower and Plants
東京都目黒区鷹番3-4-25
TEL: 03-5724-3273
MAIL:mandtrees721@gmail.com
営業時間:10:00〜19:00
定休日:木曜日(たまに水曜日)
Instagram:@m_andtrees.flowerandplants

取材・文 むらやまあき
写真   長島萌桃


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