野球の神様⑨

ウォールくんとの対決で3三振のバットくん。

試合が終わったその日の夜、いつもなら家族みんなでゆっくりテレビを見ながら和やかに過ごす時間を、バットくんはひたすら汗と悔し涙が混ざって顔中に滴る中で、無我夢中で狂ったようにバットを振っていた。

ブン!ブン!ブン!

うっっ!うっっ!うっっ!


バットの強いスイング音と涙まじりのバットくんの唸り声が共鳴しながら静寂の路地に響いている。



ふぁーぁー、今日は疲れたのぉ。仕事した仕事したー。


一方神様は、おうちでゆっくりくつろぎタイム。もうまもなく寝床に入るところだ。といっても神様は地に足をつけておらず常に地面から5メートル以上浮いている状態にあるため、横になることはなくその場で身体をゆっくり上下に動かしながらただ目を瞑っているだけという感じではあるのだが。

そんなわけで、神様の一日は終わった。



神様って、ずっと君のことを見てるよとかいうけど、実はそうじゃないんだな。神様もけっこう忙しくなると疲れちゃうから適度にお休みしてるんだ。だから神様が見きれなかった人間の行動もたくさんあるんだよ。だからよく人間が「努力したのに全然打てない」とか「がんばったのに全然報われない」というのはよくあること。神様も完璧な生き物じゃないからさ。

でも、ちょっとでも神様に自分の頑張りに気づいてもらうために、バットくんのように見えない努力をし続けることは大切だ。


バットくんはその日からの1週間も、人知れず努力を続けていたそうな。


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