野球の神様⑩
ウォールくんとの対戦からまもなく1週間が経とうとしている週末金曜日。
バットくんは相変わらず学校が終わった後の夕方、家の前で手に血豆をたくさん作りながら懸命にバットを振り続けていた。
そこに神様が久しぶりにバットくんのもとにやってきた。
おぉー、やっとるなぁ。なんか顔が引き締まって強くなった気がするのぉ。
神様はうれしい気持ちになった。努力を継続している人から放たれる特有の強い匂いを嗅ぎつけてバットくんのもとにやってきたのである。
この努力の匂いというのは、努力をすればするほど強くなっていく性質のもので、この匂いが強ければ強いほど神様はその存在に気づきやすくなる。三日坊主の努力家になかなか幸運が巡ってこないのはそのためである。
わしがまたバットくんのもとに訪れることができたということは、彼にはまだまだ見込みがあるということじゃな。楽しみじゃ。
優しい顔で神様はその夜いつまでもバットくんの努力を見守っていた。
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