野球の神様⑥
試合は最終回。5-0でウォールくんのチームが勝っている。
ツーアウトランナーなし。ピッチャーのウォールくんは完封勝利まであと1人の状況になり、打席にはバットくんが立った。
今日のここまでの打席は2打数2三振。バットくんの表情は相変わらず自信なさげだ。
今日はいいとこなしじゃなぁ。もう結果は決まったようじゃな。
ピッチャーのウォールくん。迷うことなく全力の真っ直ぐをストライクゾーンに3球連続で投げ込んだ。
「ストライク!」「ストライク!」「ストライーク!!バッターアウト!!」
3球ともバットは空を切り、試合は終わった。
肩を落としてうつむき続けるバットくん。苦い野球デビュー戦となった。
残念じゃったのぉ。練習で強くても、試合になると気持ちが弱くなっちゃう子はけっこういるもんじゃのぉ。そういう子にはどうしてもわしは力添えができんのじゃ。申し訳ないのぉ。
神様はちょっと気の毒そうに、でもこれが野球の世界じゃと言わんばかりにバットくんの様子を眺めている。
「よっしゃあーー!完封勝利だ!!」
ウォールくんのほうは喜びを爆発させている!!
「ピッチャーはじめてまだ3ヶ月だけど、俺って才能あるかもね!!」
この試合を見ていたお母さんと思われる人のところに今すぐにうれしさを共有したい気持ちを溢れさせて、全力で駆け寄っていった。
「すごいわねぇ!かっこよかったわ!!お母さんほんとに感動した!最高よ!」
お母さんもさぞかし喜んでいるようだ。
まぁ大切なのはこのあとのそれぞれの行動じゃ。試合の結果がすべてじゃない。このあとウォールくんとバット君がこの結果に対して、どんな行動をとるか、それが大事なんじゃ。
そう神様は言い放って、野球場をさっと後にした。
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