野球の神様⑧

さて、バットくんとの対決からちょうど1週間たった日曜日。

ウォールくんは再び試合のマウンドに立った。

「また今日もいっちょ完璧な試合にしてやるからな、任せてろ」

試合前チームメートに自信満々に伝えていた。

相当今日の試合にも自信があるようだ。いや、過信が。


プレイボール後の初球、

「カキーーン!」


いきなり左中間を真っ二つに割る弾丸ライナーの打球で、ノーアウトランナー二塁。


「あははっ、まぁこういう時もあるさ。次抑えてやるからな」


しかし、


「カキーン!」「カキーン!」「カキーン!」

その後も三連続で長打を浴びて試合開始わずか3分で、3点を失う。

「えっ、、?」


ふっふっふっ


神様は悪戯な顔でニコニコ笑っている。

「カキーン!」

4-0。


「嘘だ。そんなわけないよ。」


「フォアボール」「フォアボール」「フォアボール」


とうとうウォールくんはストライクが入らなくなってしまい、押し出しの失点をも許す。


「全然投げれない。ストライクが入らない。入れたら打たれちゃうかも。。。怖い、、、」

「ボール!フォアボール!!」

四連続のフォアボール

しびれを切らした監督はピッチャー交代を告げた。



神様は見ています。君の日頃からの努力や行動を。神様は野球に対して勘違いしている人や過信をしている人をみると、意図的に失敗させるようにその人を導きます。そしてその苦しみや悔しさを乗り越えてもっと野球を好きになって強くなってほしいと願います。神様はウォールくんにひどい仕打ちをしていたように見えましたが、実は彼を心から成長させたいという気持ちからわざとそういうことをしていたのですね。

ちなみにウォールくんに先週完封勝利というプレゼントを渡したのも、別に彼に喜びをプレゼントしたかったわけじゃなくて、成長をプレゼントしたかったからなんですよ。ただ、間違えないでください。完封勝利それ自体が本当のプレゼントじゃないということを。実は、今日の初回ノックアウトも合わせての神様からのプレゼントなのです。

どういうことかというと、ウォールくんは先週大きな喜びを感じたことによってかなり気持ちが高まりました。だからその分今日は相当な自信があったはずです。しかし今日は完膚なきまでに相手チームにやられました。

先週完封していて今日の試合にも相当な自信があった分、今日は通常の悔しさよりも倍以上の悔しさがあったはずです。

つまり神様は感情の振れ幅をあえて大きくするために、わざと大きな成功と大きな失敗をウォール君のもとに引き起こしていたのですね。大きな成長のためには、落ち込むバネの深さが深ければ深いほど高く伸び上がりますからね。

というわけで先週の勝利も今日の敗北も神様からのプレゼント。

ウォールくんはこのプレゼントをどうやって受け取りどうやってそれを次の成長に生かすのか。今後のウォールくんの成長に期待だ。

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