好き好き大好き超愛してる

好き好き大好き超愛してる

冬の寒い日に体を重ねることもなくただキスをしたあの日のことを思い出そう
耳が弱くて一緒だねって笑った
寒すぎる灰皿もない部屋で煙草を燻らせて目が見えなくなったあなたを新宿駅まで送り届けたあとわたしは酔いが覚めて寂しさのなかでアーバンギャルドをずっと聴いてたよ
ただその寂しさだけが愛の意味だと思ってたし恋の切なさだと思ってた、私は恋愛がわからなかったから
お互いの弱い部分曝け出して楽になった気持ちでいたね
あとであなたが嘘をついたってわかった
優しい嘘だとわかった
私に合わせてくれたんだよね
好き好き大好き超愛してる

LINEの返信を待ってた
LINEの返信をずっと待ってた
LINE返ってきたらちょっと時間置いて既読もつけずにずっと待ってた
1人に慣れてたから平気だったよその時までは
待ってる時わたしはいつも心のどこかで逃げ出したくなったり焦って取り乱しそうになるよ、でも通知が来るとじゅわって頭にラズベリーの果汁が広がってまたあなたに夢中になるんだよ
あなたはひとのこころを掌握できるよね
好き好き大好き超愛してる

週末にまた会おうって言ってくれるのが嬉しかった
私のために死ぬ思いで苦しんで作ってくれた余暇を楽しみにしてたんだ
中央林間の居酒屋でまた飲もうよ
激安なあの店で濃いハイボール飲んで沈んでいようよ
ボトルなんか入れてさ あったかいカジカ汁飲んで
ここは市場直送でマスターが目利きだから海鮮が美味いよねとかなんか言ったりしてさ
べろべろになった帰りに南町田からタクシー乗ってラブホに行こうよ
現代楽園だなんて笑わせるよね
好き好き大好き超愛してる

チョコレート咥えてウイスキーを口移ししようよ
頭の中がおかしくなって全部リンツのパッケージの色みたいに鮮やかでどろどろな夢を見よう
溶けたチョコレートの海でバカンスしよう
リンツのパッケージで出来たパラソルの下で太陽に透けた体に触っていい?
あなたの爛れた肌にそっと口づけするから
ウイスキーでくらりとした頭に
夏の魔物にわざとやられちゃおう
出逢ったのは冬なのに
まるで夏みたいだったよね
いつまでも常夏で陽の沈まない時間でさ
夏の夢を見ているようだったよね
好き好き大好き超愛してる

お互いの恋人がいたことに涙したことも苦しんだことも沢山あったよね
長く付き合ったからこそ相手を苦しめたくなくていろんな嘘をついたよね
でも結局あなたしかいなくて箱根で泣いた日
あなたの流した涙は美しかった
熱燗が冷め切るくらいのしらけきった店内で
あなたの流した涙は温かかった
そのまま2人で婚姻届をネットプリントしにセブンイレブンまで走りに行ったっけ
2人は迷った小鳥のように
打ち寄せる波から逃げて
私はあなたの腕に抱きついて
あなたはいつまでもずっと笑ってくれてた
好き好き大好き超愛してる

また私と一緒にロマンスカーで帰ろうよ
手を繋いでお揃いのダサい指輪して
ロマンスを運んで行った小田原であなたは一度おりて、また私の元へ帰るんだ
町田まで飛んだそのロマンスカー兼ロケットは大気圏通り越して星になって、私たちはその星の上で蜜柑にぎりしめながら踊って歌ってそのまま時を止めて、2人はときめきに死すんだ、ゴーストの恋人たち
好き好き大好き超愛してる

私たち結婚しちゃったね
本当に大丈夫?わたしなんかで、なんて
聞いてみたりもして
思ってもないのにね
ここまで愛した人はいなかったよ
ここまで愛されたこともなかったよ
こんなに優しく愛してもらったこともないよ
こんなに厳しく愛してもらったこともないよ
毎日あなたの幸せが
毎日わたしの幸せで
猫があくびをする間にも
小鳥が囀るこの朝も
あなたのいない時間でも
虫が静まる夜の間も
どんなときも幸せを唄えるよ
死ぬ時も手を繋いで踊って死んでみたいね
死について語ったこともたくさんあるけど
私たちの迎える死はどんなかたちだろうね
あなたは薔薇を浮かべたバスタブで
わたしはそのなかで煙草を燻らして
またチョコレートとヘネシーで溶けるのかな
出逢った時とおんなじく
南国の果てであなたの爛れた肌にキスできるかな

祈ることすらできないくらい

好き好き大好き
超愛してる

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