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ががおのバカラ 韓国一泊二日で500万円の夢(前編)

『誰か、俺を銃殺してくれ。。』

某月某日。韓国・仁川のパラダイスシティ。

残り50万(≒5.8万円)となってしまったチップを握りしめ、ホテルのロビーのソファにて、ひとりうなだれていた。


今回のカジノ遠征は2日間。
軍資金の50万円はもちろん、借金をしてこしらえた。

成田国際空港は、たくさんの期待やワクワクで溢れている。ビジネス目的の方もいるだろうが、多くが純粋な旅行者であろう。家族で、カップルで、余裕資金で楽しく贅沢な余暇を過ごす。皆、晴れやかな旅立ちなのだ。

そんな中で、愚かなギャンブル依存者が、小柄なスーツケースを引き、まるでビジネス出張であるかのような装いをして、ソロで堂々と闊歩している。

ががおです。こんにちは。

その心の中はぐちゃぐちゃだ。不安、自身に対しての情けなさ、無力感。。そんな不純物が渦巻いているが、同時に(純粋な旅行者とは違うベクトルの)期待とワクワクも持ち合わせているのだから、とにかくややこしい。誰か、私の心を綺麗に掃除して!成田空港の中心で、心のクリーニングを叫びたくなる。

愚か者ここにあり


韓国は近い。自分の中の感覚では、(都内から)鎌倉に大仏を見に行くよりも、精神的な距離は近くなってしまった。思い立ったら、すぐに行けてしまう。各カジノへのルートもバッチリ頭に入っているし、待ち時間の様々な暇つぶし術も身に着けた。

時間つぶしのための本選びも、旅の楽しみである。


順調なフライトで、19時に韓国到着。
一直線にソウル市内のウォーカーヒルに向かう。

カジノに着いて早々、バカラをプレイ。

しかし、20万円を1時間程度であっけなく溶かしてしまった。

茫然。

ウォーカーヒル

50万円の軍資金と、2日間の猶予。
半分ずつ、25万円×2日間でじっくりと勝負をしよう。
初日の25万、焦らず慌てず、まずはゲームの流れをつかむまで、小出しで勝負していこう。

そのような戦略をもって臨んだにも関わらず、バカラのテーブルに着いて初っ端から5連敗。運が悪すぎる。取り戻そうと思ってベット額を上げたのだが、裏目に出て痛恨の6連敗。まさか、到着してたった1時間で20万円を溶かしてしまうとは。。

この後の展開は、手に取るように想像できる。1日目の予算残5万を使い切り、2日目の予算25万にも手を出してしまう。そして、全部なくなる。熱くなって、短時間で破滅する。そんな悪魔の予感がビンビンと漂っていた。

悪い予感がビンビン…

しばらくカジノに通ってみて、分かったことがある。『バカラは数学的な確率では語れない』ということだ。

プレイヤーorバンカー、どちらかが勝つ確率はほぼ1/2である(正確には44~45%程度なのだが、便宜的にいったん1/2とする)。6連敗してしまう確率は、1/64だ。これは、SFC版ドラクエ5でスライムベホマズンやグレイトドラゴンが仲間になる確率と同一である。たった一戦で、彼らを仲間にはできない。

『バカラは数学的な確率では語れない』は、少々の語弊がある。『今日という日のバカラの勝敗は、確率論では語れない』と言うほうが正しいか。

長期で見れば、確率は必ず収束する。1/2ゲームにおいて期待値が0.5±0.005、つまり49.5%~50.5%に収束するには、約65000回以上の試行回数が必要らしい。

バカラの1シュー(シューとは、縦長のトランプケース。300~400枚のトランプを入れ、使い切ると終了=1シューが終わる)をこなすには60ゲーム程度、約90分かかる。65000回以上の試行をするには、1083シュー以上、つまり1625時間≒68日間ぶっ通しでプレイしなければならない。そこまでしてやっと、確率は1/2に収束するのだ。


カジノでよく見かけるシュー。これに6デッキ(約300枚)のトランプが入る。


逆を言えば、そこまで時間をかけないと確率は1/2に収束しない。今日という日だけを見て勝つか負けるか、それは決して1/2ではないのだ。

「カジノは絶対胴元が勝つ」「期待値が1.00を超えないのだがら、絶対に負ける」「長期で見れば損をする」… そんなことは、とうに分かり切っている。そうではなく、今日という日に勝つか負けるか、ただそれだけなのだ。私としても、ギャンブルで生計を立てたいわけでも何でもない。今までが負け越しでも構わない。ただ、今日だけでいいから、ドカンと勝たせてほしい。。 せめて今日だけは。。そんな享楽的な淡い期待を胸に、賭場へと赴くのである。


20万を早々に擦ってしまい、時刻は23時。飛行機疲れも相まって眠いし、ここで資金を投入しても悪い結果にしかならない。ホテルの部屋に戻って休むことにした。

そして、翌日。気分を変えるために、別のカジノへ移ることにした。仁川のパラダイスシティへ向かう。

電車移動です ソウル駅で乗り換え 旧舎は東京駅に似てる

次の日が仕事なのでこの日に帰国しなければいけないが、帰りの飛行機はまだとっていない。何時に帰るかどうかの判断は、カジノの勝敗によって左右されるからだ。種銭が全てなくなって早々に帰らなければならない場合もあれば、ツキがのってきて帰りたくない場合もある。

ソウル発便で一番遅いのは、ピーチ航空の22:35発。これなら羽田に0:55に到着し、タクシーで帰れる。ここがデッドラインだ。深夜の都内へのタクシー代は15000円程度かかるが、そんなものはカジノで勝てればカスみたいなコストだ。ギャン中お得意の、どうしようもない皮算用である。


ソウル市内のウォーカーヒルから1時間半。

仁川のパラダイスシティにやってきた。
ここからが本当に勝負だぜ!

お決まりのペガサスとツーショット


軍資金は30万円。もちろん、余すところなく全額を韓国ウォンに換金。
255万を手にする。
5万はお土産用の資金にとっておいて、250万からのスタートだ。

時刻は朝10時。最終便まで10時間以上の猶予がある。今度こそ、しっかりと戦略を練らなければいけない。

どのテーブルに着くか。バカラはテーブル選びこそ最重要と考える人も多い。

私は、テーブル選びは3通りあると考えている。
①罫線に規則性がある
②罫線が不規則(大きな偏りがある)
③スタート前(もしくは直後)で出目の癖が全くない

私の好きな戦略は、まず①のテーブルに着いて規則性に乗っかって手堅く資金を増やし(2~3倍)、②のテーブルに移って偏りに乗っかる、である。

解説します。
①のテーブルの出目は、こんな感じ。
P P B B P B B P P B B P B P P B P ….
※P=プレイヤー B=バンカー

Pが出れば、Bが出る。3連以上はせず、せいぜい2連まで。非常に規則的に、PとBが交互に出る。コインでいう、裏が出たら次は表が出て、ひたすらテレコの繰り返しというやつだ。こういうテーブルにおいては、逆張りで賭けていく。

まずは①でプレイし、少額ベットで感覚をつかみながら資金を増やしていくことを目指す。今日は勝てるかな、いけるかな。。 勝ちの兆候を、ゆっくりと探っていくのだ。

資金が倍以上になれば、②のテーブルを探して、移動する。

解説します。
②のテーブルの出目は、こんな感じ。
P P B B B B P B B P B B B P P B B B B B B B B  …

明らかにBが多く出ているし、現在進行形でBの8目ツラ(バンカーが8連勝中)が発生している。Bに偏っているのだ。

次にくるのは、PかBか。こういう場合、数学的な確率論ではこのように考える。「1/2ゲームで9連勝する確率は、1/512。非常に低いので、次にBはない。ここはPに賭けよう!」

しかし、実際は違う。こういう状況では熟練のバカラプレイヤーは皆ほとんど、Bに張る。ツラを追っていくのだ。ここが摩訶不思議なポイントで、机上の確率論を無視して、なぜかツラは続く。

私自身は、ウォーカーヒルで最大24目ツラが発生しているのを実際に見かけたことがある。

こうしたツラ発生中のテーブルを見つけ、そこに勝ち分を全額ベットする。①で250万→500万にできたら、勝った分の余剰の250万をツラ追いベット、という具合に。

よし、今回もこの戦略で行こう。最低100万円は勝つぞ。

ゲン担ぎとして、カジノ内のレストランでカツカレー(無料)を食す。

普通に超おいしい

うっしゃ!バカラやるぞい!

平場をうろうろ。戦略通り、まずは①のテーブルを探す。

孤独なギャンブラーの徘徊

見つけた。いい感じの規則性でテレコに出ているテーブル。
ここでまずは勝ちの目を探っていくぞ。

軍資金250(≒29万円)。
ミニマムベットが5万のため、まずは手堅く5万から張っていこう。

1戦目勝ち。2戦目負け。3戦目勝ち。4戦目負け。5戦目勝ち。6戦目勝ち。7戦目負け。8戦目負け….

テレコで逆張りし続け、勝率はほぼ50%。資金は増えも減りもしない。
ひたすら単調な時間が続く。

こんな張り方を続けていても、全く意味はない。
勝つためには、ベット額を上げなければならない。
様子見は終わりだ。

ベット額を倍にする。10万の賭けだ。

負け。。くそぉ、もう一回10万だ!

負け。。 なんでだよ!3連敗はないだろう!20万賭け!

負け。。えっ??

どうしてベット額を上げたら負けだすの。。。?
おかしいおかしいおかしい!!操作されてる!
今までの時間、返してよ!!

この時点で既に、冷静ではいられなかった。
イライラはMAX。誰でもいいからブン〇りたい。目に入る人間の全てが敵。
金属バットでオフィスのPCとかをめちゃくちゃにぶっ壊したい。

気が付いたら、次の手で残200万のうちの150万を張ってしまっていた。

勝負だ。4連敗はないだろう。

プレイヤーに150万(≒17.5万円)を張った。

カードが配られる。

プレイヤーに配られたカードを、自らの手でしぼる。出目は6と10で、プレイヤーは6だ。悪くない数字。バンカーが7・8・9でなければ、負けることはない。6ならタイ、5以下なら勝ちだ。

バンカーオープン。

出目は4と4、ナチュラル8の完成。

あ。。。

『あああああぁぁあーーーー』

ひときわ大きい雄たけびを、瞬間的に上げてしまった。

負けた。。

250万が、残50万(≒5.8万円)になってしまった。。

なんでだよ!と怒りをぶつける相手は、その場のどこにもいない。

後悔、後悔、後悔の嵐。

覆水盆に返らず。。 時計の針は戻せない。。

昨日カジノに来たこと、ギャンブルに手を出したこと、SNSを始めて調子こいてギャン中投稿をしていたこと、馬鹿みたいに動画投稿もしていたこと、FXに手を出したこと、お金を借りたこと、会社を辞めたこと、彼女と別れたこと、大学をさぼり始めてきちんと単位を取らなかったこと。。

過去を遡りに遡って、人生すべてを後悔する負のタイムトラベルに突入。。

カジノを一旦出て、ホテルのロビーのソファでうなだれる。

誰か、このどうしようもないギャン中を、今すぐに銃殺してくれ。。

……..

とりあえず、残50万ある。

これで美味しいものを食べようとか、そんな生ぬるい発想は毛頭ない。

やるしかない。。

原資回復ゲーか。。

なんでこうなっちゃったんだろう。。

意気消沈クズ。

しかし、ここから驚異の逆転劇を展開することになるとは、このときはまだ知る由もなかった。

後編に続く。








 

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