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“非接触”の新しい生活様式で躍進中! 創業3年Yperの置き配サービス「OKIPPA」の新物流インフラとは?

新型コロナウィルスで生活も常識も書き換えられつつあるなか、ニーズを増やしているサービスはいくつもあります。

「置き配」を快適にするサービス「OKIPPA(オキッパ)」もその1つ。

Eコマース(インターネット上で商品やサービスの売買を行う)の市場が拡大するなか、物流業界では配達全体の約20%あるといわれる「再配達による労働負荷」がコロナ以前から社会問題となっていました。そんななか、2017年にYper(イーパー)というスタートアップが長年の課題に挑みます。

それが、手頃な価格の専用バッグを使用することで宅配ボックスが自宅になくても「非対面配送サービス(置き配)」を安心して利用することができるOKIPPAです。

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社会課題とビジネスを両立するソーシャルベンチャーの側面もありながらも、配達の新しいインフラ構築に向けて地道なサービスで広がっていました。

そんななか、コロナによって社会のほうが“非接触”の新しい生活様式に変化人は移動せず物だけが移動する流れが加速したことで、OKIPPAのサービスが注目されています。OKIPPAの専用バッグの販売数は2020年の1月と比べて2〜3倍に増えたとか。

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今回は、OKIPPAを展開するYper株式会社の内山智晴さんにインタビュー。

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元総合商社マンだった内山さんがなぜこのサービスを選んだのか? 儲かりの仕組みは? コロナ時代に起業する人へのアドバイスも。番組チーフディレクターの大松雅和(オーマツ)が迫ります。話を聞くほどにポテンシャルの高そうなサービスです!

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内山 智晴(うちやま ともはる)さん
Yper(イーパー)株式会社 代表取締役 企画営業担当。1985年生まれ。京都大学大学院 地球環境学舎修了。2012年から伊藤忠商事株式会社機械カンパニー航空宇宙部に勤務。前職では航空機の販売及び改修、航空機装備品の国際開発案件に従事。2017年8月にYper株式会社設立。2018年9月より「OKIPPA(オキッパ)」のサービスをスタート。会社名のYper(イーパー)は「Hyper(最高の)」のフランス語読み。

新たなラストワンマイル配送モデルの開発

大松雅和(以下、オーマツ):「OKIPPA(オキッパ)」サービスの内容について教えてください。

内山智晴 Yper株式会社 代表取締役(以下、内山):
置き配バッグとスマートフォンアプリを連動させることで、非対面配送(置き配)で安心して荷物を受け取ることができるサービスです。

置き配とは、「宅急便で受け取る荷物を指定した場所に置いてもらう」という宅配方法です。置き配の荷物を鍵付きの「OKIPPA」バッグに入れてもらうことで、宅配ボックスがなくても盗難の心配が減ります。さらに、アプリが荷物の到着を通知するので、受け取りのために待機するストレスも解消されます。

最近では新型コロナウイルスの感染拡大で、対面での荷物受け取りに不安を抱いたり、リモートワークが増えて在宅はしているものの打ち合わせ中は直接対応は出来ないという声も多く、ご利用いただく方が増えています。

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オーマツ:売上げはどれぐらい伸びましたか?

内山:2020年の1月と比べて、バッグの販売数は2倍〜3倍に増えています。発売以降、累計で約15万個のバッグが売れています。

インフラビジネスの拡大で社会的損失を減らす

オーマツ:ビジネスの利益は、一個3980円(税込)のバッグの販売ですか?

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内山:
バッグの売上げと、置き配サービスをする際に荷主さんや配送会社さんが加入する盗難保険の売上げを見込んでいます。荷物の盗難に備える「置き配保険」を東京海上日動さんと共同で開発しました。配送会社さんにとって、再配達にかかる配送コストよりも、置き配での盗難の備えて保険に加入するほうが結果的に安く済みます。ただ、保険を用意させてもらったものの、今のところOKIPPAを利用した置き配で盗難やいたずらは発生していません。

現状の売上げはそこですが、バッグの開発と販売や保険販売は手段にすぎなくて。そもそも私たちの課題は「再配達をなくす」ことなんです。

OKIPPAのバッグが普及すれば「再配達がない配送サービス」が実現します。再配達がなくなれば人手不足の解消にもなり、配送コストを低く抑えた配送網を作り出せる可能性がありますよね。

今後Eコマース(インターネット上で商品やサービスの売買を行う)の市場はどんどん拡大しています。その市場を足元で支える物流業界では、再配達による社会的損失の問題が大きくなっています。1年間の荷物の取り扱い個数は40億を超え、その約2割が再配達という状況です。

オーマツ:
配達のインフラを新しくつくっているということですね。

内山:
はい、まだサービスの普及フェーズです。なので、大きな利益は出せていません。バッグの販売は普及のためにほぼ原価です。

いまはインフラビジネスの拡大フェーズに持っていこうとしているところ。今年4月には3.5億円の資金調達をしました。今年中に国内の再配達率を1割未満に引き下げる目標で、バッグ量産体制を整え、採用および経営体制の強化をしているところです。

楽天さんと連携してバッグのプレゼントキャンペーンと配送の実証実験もしています。

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内山:
日本の戸建2500万世帯で宅配ボックスを導入しているのは、1%しかなくて。宅配ボックスは安くないですし、マンションやアパートでは場所を取りますからね。

ただ、置き配を前提にするとユーザーも受取りの煩雑さや手間が減りますよね。すると、そのサイト会員のEC化率(=ECでの購買頻度)が上がるとの仮説があります。

楽天さんの場合なら、会員数はすでに4,000万人もいらっしゃいます。新規の会員数を増やすための市場開拓に加えて、既存の会員さん個々の購入頻度を増やしてもらいヘビーユーザーになってもらう。そのためのサービスをしたほうが収益は伸ばしやすい。

つまり、EC化率を上げるために、受け取り環境を変えようともしているわけです。

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EC化率とシェアリングエコノミー

オーマツ:大手ECショップとの連携とは興味深いですね。ほかにどのような展開を考えていますか?

内山:
5月には不動産業界向けのサービスを開始しました(OKIPPA for 不動産)。住宅情報サイトや誌面に、マンションなどの賃貸物件で「OKIPPA有」という情報を掲載できるようにするものです。「簡易宅配ボックスあり物件」として出せるのは、管理会社さんにとって物件を選んでもらう大きなアドバンテージになります。

オートロックマンションへの導入も、今年の秋頃から都内でスタート予定です。スマホを介してドアの施錠・解錠が簡単にできるスマートロックの会社と提携し、配送員がユーザーの在宅を確認せずにマンションエントランスを通り、部屋の前のOKIPPAに預入ができるようになります。

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タワーマンションなど戸数の多い集合住宅の場合、エントランスにある宅配ボックスに重たい荷物を入れておくと、さらに自分で部屋まで運ぶ手間があります。それが解消されます。スマートロックは、既存のマンションにも施工が可能。今後さらにニーズが出てきそうです。

オーマツ:
人々の細かい「不都合」や「便利」を解消することで積み上がっていくようなサービスですよね。

内山:
そうです、地道な(笑)。社会課題ってそういうものです。いまは、どのエリアでどんなユーザーがOKIPPAを使っているかという、データの活用も準備しています。先にインフラを構築するで様々なサービスが展開しやすくて。

例えば、家事代行サービスは「予約時間は3時間~」など最低稼働時間が決まっていますよね。これはスタッフが移動するコストがかかるため、1時間では赤字になってしまうから。ネットスーパーも同じ理由で最低購入料金を設定していたり、それでも赤字のところが多い。

配送するエリアの密度が高くなれば、短い時間で何軒も配送できます。収益性が上がってサービスの最低利用価格を下げられます。

何世帯以上の組合員で群をつくり生鮮食品の販売トラックでやってくる、生協さんの共同購入の仕組みと一緒ですね。密度の濃いコミュニティができて、エリアごとにまとめて配達ができる。シェアリングエコノミーとして収益化やすくなります。

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オーマツ:
なぜ、配送サービスをビジネスに選んだのですか?

内山:
前職でフランスに半年間滞在した時期があリました。その時に、日本の宅配インフラが世界的にもすごくレベル高いということを実感しました。にもかかわらず、再配達という社会的な課題があることに疑問で。スタートアップとしてその問題を解きたいと思ったんです。

国内でわずか1%しかない宅配ボックス市場を広げることが、この問題解決の1つのソリューションになります。今後労働人口が少なくなっていくなかで、世界中にある物流インフラ業界の広がりになると考えました。

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オーマツ:
学生時代には、海外のNGOや国際機関でのインターンに参加していたとか?

内山:
はい、学生時代から海外でのインフラ開発に興味がありました。ただ、インターンを経験して、経済成長なしには語れないとビジネスで開発に携わりたいと総合商社へ入りました。

入社して2年後の2014年にUber、Airbnbが日本に上陸し、「インフラ」とはダムなどのハードだけではなく、ソフトとの組合せでもできる。僕のなかのインフラの定義が変わったのは大きかったです。

ユーザー視点が分かれば業界の大物も動く

オーマツ:
起業してからサービスを軌道に乗せるまでのお話を教えてください。

内山:
Yper(イーパー)は2017年の8月に創業しました。はじめは集合型の宅配ロッカーを開発するつもりでした。自動販売機のような箱をあちこちに置けるようにしようと考えたのですが、それだとマネタイズが難しく方向転換。創業から2ヶ月でピボットしました。

オーマツ:
事業の方向転換をすぐに切り替えられるものですか?

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 創業から2ヶ月でピボットそのワケは?
☑ 生協の宅配の習慣文化が日本には根づいている
☑ 起業して一番大変なことは? 
☑ 配送業者でアルバイト。現場視点を反映
☑ 三方よしではなく、四方よし
☑ 社会課題をビジネスにつなげる時に必要な視点は
☑ 起業を考える人へのアドバイス「戦わない」

編集/コルクラボギルド(平山ゆりの、文・高橋 亜樹子、デザイン・ペー)

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