見出し画像

PayPayフリマで偽物をつかまされた話

PayPayフリマで「ダイワピア39」のジャケットを購入した。

ダイワピア39とは、釣具メーカーのダイワがビームスとコラボしたブランド。2020年のスタートでブランドとしては新しく、ハイブランドといえない価格帯であることからも、偽物なんて存在しないと思い込んでいた。

購入した商品は「GORE-TEX INFINIUM EXPEDITION DOWN JACKET」。定価は83,600円だが、PayPayフリマで未使用品を50,000円で購入した。出品者は9件ほどの販売実績があり、評価もすべて高評価となっていた。購入後、商品はすばやく発送された。

やがて届いたダンボールは謎のみかん箱。まぁ、それはよくある話。包んでいるビニール袋もどこか業務用くさい。それも、今となってはの話。

しかし、ビニールを開いてジャケットを両手で掲げた途端に「違和感」に気づいた。まず、想像より重たい。かつ、マジックテープが安っぽい。あとで本物の写真と比べてみると、まるで別物。本物はテープの色も素材も全体に馴染んでいるのだが、偽物は浮いてみえる仕様になっていた。

マジックテープの縫製にも雑さを感じた。

とはいえ、その時点のぼくは確信には至らない。「どうもダイワらしくない作りだな」と違和感を覚えた程度であった。

それも束の間、タグを見た途端に「偽物である」と確信した。ゴアテックスのタグの刺繍があまりにいびつな点がひとつ。その上にある、ダイワのタグもまた直線が真っ直ぐではなく、ひん曲がっていたのだ。

写真がいがんでいるのではない。タグがいがんでいるのだ。

「こんなに作りが甘いわけがない」と、クローゼットにあった別のダイワのジャケットとタグを見比べてみる。すると「FEEL ALIVE」の2つの単語の間に半角スペースがないし、グレーの文字の色味も違う。

騙されたぼくも、商品自体も詰めが甘い。

洗濯表記のタグも確認してみる。すると、そこはかとなくフォントから中華製の雰囲気がする。よく見ると、余計な全角スペースが存在していたり、型番の字体が太すぎたりと、おかしな点だらけ。

見れば見るほどおかしな点が見えてくる
型番で検索すると違う商品がヒットする

自分が偽物をつくる立場であれば、精巧な偽札がつくれるこの時代に、なぜ、こういうところにこだわらないのか謎である。そんなことが一瞬、頭をよぎったものの秒で現実に回帰する。

「偽物をつかまされた!返品だ!返金だ!」

商品を開封してからここに至るまで体感的には1分。すぐに、出品者に問い合わせる。

先ほど商品を受け取りました。のですが、残念ながら流行している偽物のようです。XXXX様がご存知であったかどうかはわかりませんが、返品させていただきたく思います。よろしいでしょうか?

メールを送ったのちに、PayPayフリマのガイドラインを確認する。「届いた商品が偽物であった場合、まずは当事者同士でメッセージをやり取りして解決してくれ。返信がない場合はサービスセンターに問い合わせしてくれ。場合によっては“商品満足サポート”を発動して1万円ぶんは返金する」要約すると、そんなことが書かれていた。

やばい、と思った。ぼくが購入したのは5万円。たとえ1万円が戻ってきたとしても大赤字である。フリマで大きな買い物をする際はもっと慎重になるべきであった。そんな後悔は後にも役にも立たない。なんとしても出品者に返品&返金させなくては。

しかし、その日は返信が来なかった。翌朝になり、偽物を売りつけるようなヤカラに返信を期待すること自体が間違いだったと気づく。そして、PayPayフリマに問い合わせのメールを送る。

それから数時間後のことである。意外なことに出品者からの返信が届いた。

偽物なんですか??間違いではないでしょうか?私も以前にラクマで本物として購入したものです。説明文にも書いてありますが、写真を判断して…なので、返品はご勘弁ください。宜しくお願い申しあげます。

よろしく、じゃねーよ。と思った。写真で判断もクソもない。タグの型番が正しくない時点で偽物確定であるし、それを「ダイワピア39」の「GORE-TEX INFINIUM EXPEDITION DOWN JACKET」と偽って販売している時点で犯罪である。

しかしながら推測する。おそらくはラクマで購入したことは本当であろう。そして、出品者もまた偽物であることに気づいたからこそ、未使用のままPayPayフリマに出品したのである。まるでババ抜きでジョーカーを押し付け合うように。

ぼくはただちに返信をした。

まずはお互いに不幸な結果であること残念に思います。タグで判断できるのですが、偽物に間違いありません。法的にもこちらに非はなく、商品名と異なる物になりますので返品させていただきたいと思います。XXXX様が故意ではなかったということはわかりますので、このままスムーズに返品と返金の手続きをしてくだされば、こちらとしては事を荒立てる必要はないと考えています。ヘルプに記載されています通りのPayPayフリマのフローに乗っ取り、まずはこちらの口座をお知らせして、返金を確認したのち、返品させていただきたいと思いますがよろしいでしょうか?

これについては、すぐに出品者から返信が来た。

こういったケースが今まで無いので、どうしたら良いかわかりかねます。PayPayが間に入ってくれることはないのでしょうか?

ぼくもすぐに返信をする。

ヘルプに書いてあるフローの通りのご提案ですので、ご確認いただけると安心していただけると思います。返金いただければ、すぐに返品の発送をさせていただきます。それであれば、当事者間で解決ということで、それ以上は何もないと思います。よろしいですね?

PayPayフリマのヘルプには、まさにこのような返品&返金手順が書かれている。しかし、PayPayフリマのガイドラインには「話を進めるため、“○○とするには、どういう条件だと合意できるか”といった交渉を繰り返すことをご検討ください。」と記載されている。ぼくはその点については納得できない。言葉遣いはていねいにする必要があるが、ぼくが出品者に譲歩する点など、一点たりともないのである。

そして、返信が来る。

少し 考えさせてください。

これが、ヤカラからの最後の言葉であった。それから、数日を挟みながら何度か連絡を試みたが、出品者は無視を決め込んだようだった。そして、10日が経った。

その間に、いろんなことを考えた。

一時期、ヤフオクで次から次へとこのジャケットが1円オークションで出品されていた時期があった。いずれも5万円以上で落札されていたと思うが、それらはぜんぶ偽物であったのだろう。

弁護士に相談して徹底抗戦する場合はどうなるのだろう。調べてみると、このような流れが予想される。

Step1:まずは消費者センターに相談。しかし話を聞いてくれるだけ。
Step2:弁護士に相談をしつつ「偽物である」という鑑定書を入手。
Step3:警察を通してヤフーに問い合わせ&出品者情報を得る。
Step4:弁護士と出品者情報を元に訴訟→返金。

ここまでしても詐欺罪を問うのは難しい。「出品者自身も偽物だとは知らなかった」という主張を覆すのが難しいからだ。それでも、商標権侵害で訴えることはできる。しかし、勝訴して得られるのは返金まで。ぼくの場合は5万円。弁護士費用は30万程度かかると思われるので赤字となる。なんでやねん。

それにしても、返信が来ないのは出品者だけではない。PayPayフリマからもなかなか返信が来ないのだ。最初の問い合わせから2日後。「先日、問い合わせをしたのですがどうなってますか?」とプッシュして、さらに2日ほど経って、ようやくひとつの返信が来た。ここからのメッセージはすべて要約であることをご承知おきいただきたい。

「基本的には当事者で解決してください。どうしても難しい場合はあらためてご連絡ください。」

「ふむ、まぁそう来るわな」と思った。そもそもPayPayフリマは悪くない。悪はあくまで出品者である。だからこそ、PayPayフリマの言う通り、無視を決め込まれたと感じながらも、しつこくならない程度に出品者に連絡を試みてみたわけである。しかし、やはり返信がない。

あらためて、PayPayフリマに問う。「出品者と連絡が取れないのだが、ひとまず出品者への払い込みを止められないのか」と。当然、ぼくは出品者に対して「受け取り評価」をしていない。受け取り評価をしなければ出品者に入金されないが、それでも時間が経つと自動的に払い込まれるシステムになっているからだ。

またしてもPayPayフリマからの返信が遅い。しかし、PayPayフリマが悪いわけではないので、おとなしく待つ。すると、2日後にようやく返信が来た。

「自動的に払い込まれるのは止められない。しかし、状況を鑑みて“お見舞い申請”を許可する。」

「お見舞い申請」とは何か。これは1万円が限度の「商品満足サポート」とは異なるもので、特別なメールフォームから商品の写真とともに申請し、審査を通過すれば、「お見舞い」として上限30万円までの返金が受けられるらしい。

知らなかった。エヴァでいうザ・ビースト。裏コードである。

商品の写真といっても全体を写した1枚しか添付できないことから、写真で審査するわけではなさそうだ。どういう審査基準なのかはわからないが、およそ1週間後に、専門業者に商品を発送してほしいという旨の返信が来た。言われるがままに業者に発送すると、わずか2日後に全額返金が決定。さらに4日後には、ぼくの口座に5万円が振り込まれていた。

PayPayフリマさん、つまり、ヤフーさん、ありがとう。心はヤキモキさせられたものの、手厚い保証のおかげで金銭的な被害はゼロですみました。メルカリやラクマに比べて、PayPayフリマの偽物対応は甘いと言われているが、実際はそんなことはなかった。返信は遅いものの、ちゃんと対応してくれた。

というオチになるのだが、出品者は今も、のうのうとアカウントを保持している。やましい気持ちからかユーザー名は変更したようだが、なかなか図太いヤカラだ。

メルカリやラクマも含めて、ぼくのように偽物をつかまされる人は増えるだろう。そんな被害者のために、ぼくが体験した一部始終を書き記しておこうと思ったわけだが、ぼくの購入者としての反省はあらためて言うまでもない。

ひとつ言えることは、ぼくは二度とダイワピア39を買わない。いや、怖くて買えない。もちろん新品で買えばよいのだが、そんな財力はない。ダイワピア39からすれば、フリマで服を買われてもなんのメリットもないわけで、ぼくのような消費者は顧客としての価値がない。よって、ダイワピア39のようなブランド側が偽物撲滅に積極的になる必要性に迫られることもないであろう。よって、この世界から偽物が撲滅される日は遠いだろう。

縫製の甘さは素人にはわかりづらい

ただ、PayPayフリマにはひとつ借りができた。PayPayフリマで商品を売ることで、手数料を通して還元したいところだが、PayPayフリマって、出品してもぜんぜん売れないんだよなぁ。手数料は最安値なのだから、全員、メルカリから乗り換えるべきなのだが、先行者利益とはかくも強大なものなのかと知らしめられる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?