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これがニューバランス沼なのか。

ニューバランスとの出会いは仕事であった。広告会社で働いていたぼくは「N企業」のキャンペーンを担当することになり、同じ「N」を足がかりにしてNBとのコラボモデルを制作した。コラボのアイデア自体はぼくの発案ではなかったが、その末端に携わる者として「MRL996TB」をサンプル支給してもらえることになったのだ。

当時は、NBのシューズを「N」が主張しすぎでカッコ悪いと思っていた。とはいえ、仕事の証としていただいた一足は誇らしいもので、足を向けて寝られない。アーカイブとして取っておこうとタンスで眠らせていたのだが、そのうちに会社を辞めて、いつもの靴を履き潰してしまったところで「そういえばNBのスニーカーがあったな……ええい、履いてしまえ!」と履きおろすことにした。

はじめての履き心地は感動的だった。なんだ、この足運びの軽さは! 重そうな見た目に反して靴自体がめちゃ軽い。いや、軽いだけなら他にもあるが、地面に吸い付きそうなホールド感をあわせ持つのがNBの凄みではないか。

これまで履いてきたのはコンバースやバンズ、たまにアディダス。靴に無頓着で、ひとつの靴を履きつぶすまで毎日のように履き続けていたが、NBは一歩目からして異次元。なおかつ、履いてみてわかったのが合わせやすさ。MRL996TBは主張の強い青色なのだが、どんな服でも自然と足元におさまるデザインを実感した。

こうして、996の虜になったものの、靴に対する向き合い方は変わらない。コンビニに行くときも、デートに向かうときも、山登りをするときも。ひたすらMRL996TBを履き続ける。足かけ3年ぐらいだろうか。ついに靴底がベラっと剥がれてしまった。ぼくにとって、新しい靴を買うのはこのタイミング。

MRL996DK

次も996を選ぶことに迷いはなかった。そして、ビジネスにも使える黒を探した結果、「MRL996DK」を15,000円で購入。同じ996でも少し変り種。履き口がスリッポンのようになっていて脱ぎやすく履きやすい。ホールド感もアップして、ますますNBから足抜けできなくなった。

このときにはもうNB沼にはまっていたのかもしれない。もっとお金を出せば、もっと履き心地のよい靴があるのではないか? そうして追い求めた結果、1400シリーズの存在を知る。

誰が言い出したのか「スニーカー界のロールスロイス」というコピーに加えて、ラルフ・ローレンに「雲の上を歩いているようだ」と言わしめた1300シリーズ。その後継機となる1400は、品質を追求しすぎたことが足かせとなり一度は商品化を断念。結果的に1500が先にリリースされたという伝説の名作。それも日本の技術によって発売が可能になったという、その物語に強く惹かれるものがあった。

そのとき、奇しくも日本での「M1400JGY」の再販が決定。しかし、996と違って35,200円の高級スニーカー。さすがに手も足も出ない。そこで、中古で旧式のM1400JGYを9,800円で落札した。しかし、NB熱は冷めやらず、その翌日もヤフオクに足繁く通ってしまい、新品に近い「M1400WA」を発見。立て続けに21,000円で落札してしまった。足るを知らない悪足がきである。

M1400WA

足並みをそろえて届いた2足の1400。事前に1400の物語をインストールしていたからか、996と履き比べてみると明らかに差を感じる。ふわふわで、ふかふかなのだ。デザインは996に近いため、どんな服にもよく馴染む。NB Greyの絶妙な色味を足し算するとなおさらだ。

あまりに気に入ったのだろう。このときから、ぼくはスニーカーをメンテナンスするようになる。靴は1日おきに履き分けて、雨の日や、そうでなくても2週間に1度は中敷きを出して、スウェードの汚れをブラシで払ってタオルで拭いては防水スプレーをする。そうして、常に足元をきれいにしておくという快感を覚えた。

誰が見ているわけではなくても、自分自身が気持ちがいい。ピカピカのスニーカーを履いて踏みしめる地面こそが心地いいのである。NBと出会わなければ、こんな気持ちを知ることはなかったはずだ。

M992GR

話がそれで終わっていれば美しいのだが、足を引っ張るような続きがある。

この時点で3足のNBを所持。足固めは充分なはずなのに、ジョブズも履いていたという流行りの「M992GR」の抽選に応募。ハズレたことで足下に火がついて、プレ値がついた39,000円でフリマ購入。完全に予算から足が出ている。おまけにフェイクが多い品番なので、真贋の見分け方を丹念に調べたりしているうちに、NBの知識が深まってしまった。

そうなると、992と993の違いはいかなるものかと気になってくる。我慢できなくなって、海外限定の「MR993TB」を29,800円で買い付けた。そこまでしたにも関わらず、992と993はその高額さと愛おしさで一度も外で履けていない。これでは足手まといではないか。

MR993TB

さらに、NBの最先端のテクノロジーを履いてみたいと思っていた矢先に「M990 JS5 Vegan Friendly」が13,000円で売りに出されているのを発見。これは安すぎると足下を見て購入したものの、デザインが好みではなかったので25,000円で売却。もはやせどりに足を踏み入れているではないか。

M990 JS5 Vegan Friendly

992と993の検証が不十分ではあるが、ぼくがいちばん好きな履き心地はM1400JGYだ。失いたくない気持ちがあふれて、まだ履き潰していないのに2足目のM1400JGYを15,000円で落札。足が早いわけでもないNBのスニーカーを6足も所持してしまっている。このままでは足の踏み場もない事態になって、足をすくわれそうだ。

わかっていても、抜け出せないのが沼。今、気になっているのは、原点回帰の996。それもUSA産のM996。ぼくが履いてきたアジア産の996とは別物の履き心地がするという。さらに、友人がいつも履いているイングランド産の576も気になる。来年には最新の990v6も発売されるという。

そんなことにワクワクしながら、きょうもフリマサイトをパトロール。v3やv4も気になるなぁとハンティングする日々。ああ、NB沼から抜け出して、足を洗える日はいつになることやら。

M1400JGY
M1500RRW
ML2002RD
M990GL3

にしても、同じような色味ばかりだな



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