居場所とクリエイティブ


武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論  第8回  大橋磨州(呑める魚「魚草」代表)

「講義日:7月6日」


今回はアメ横にある、呑める魚屋「魚草」の代表大橋磨州さんから、彼のアメ横・上野愛を感じた。大橋は慶大文学部を卒業、東大大学院に進学して文化人類学研究室に在籍した途中で中退することになった。その後、アメ横の魚屋で修行をした。2013年、独立して呑める魚屋「魚草」を開店した。

本題に入る前に、大橋から上野の雰囲気・特性について説明してくれた。上野は個人事業・外国人・専門店が多い街だ。立地的に東京の玄関口、日本で一番賑わってる商店街・安売りの街だ。想像を超える豊富な品揃えで、店員も店主も専門的な知識を持っている。特に外国人も多いので外国人が運営する屋台も多い街だ。特に年末になると、スニーカーを売ってる店がいきなり魚屋になったり、魚屋なのにカニを売ったりする独特な風景に変わる。

彼がアメ横に愛を持つきっかけは、秋田の祭りの風景とアメ横が似たような感じがあったからだ。人類学の研究のために行った秋田の祭りで街の人々が集まって生き生きする風景が彼の印象に残った。

東京に戻って、年末にアメ横の魚屋でアルバイトをした彼は秋田でみた風景がアメ横にも見えたと語った。まるで彼自身が祭りに参加したような気持ちだった。

一般的に祭りに参加する時は、その地域のコミュニティが中心になって行うため、外部の人が関わりにくい。一方で、アメ横の年末は未経験者も店頭でまるで5年以上働いた人のように、魚に詳しいフリをしながら参加することができる。大橋さんも、当時経験が全くなかったし、他の人も同じく魚に全く知識はなかった。でも、きたばかりの人に居場所を与えられるアメ横に、大橋さんは衝撃を受けた。それで、もっとアメ横に知りたいと思い、その後6年間魚屋で修行することになった。

自分のお店を運営しながら、少しつつ今の「魚草」の姿にお店の変化を重ねた。アメ横は築地にとってコミ箱のように扱う場所で認識される。しかし、大橋さんは市場に価値が付けてない魚を魚師から買った。その理由は、魚の値段が上がらないなど名前のない魚が売れない漁港の問題を解決するからだ。あえて高く購入して美味しくする方法など、価値がある魚だから魚師に取れるようしする。飲食店で修行してアメ横のお店で実際、生産者にも力になるお店をやろうとする。

今の魚草は魚だけ売るお店より美味しい魚を味わいながら、飲みながら店主と店員と楽しく話せる居場所になった。最近は自分のお店をアーティストに、アメ横にある魚草だから表現できる作品を依頼する。アート専門ではなくでも、アート活動をしている人々が作るようにしている。

大橋さんの居場所でもある、アメ横。アメ横はまだ一回しか行ったことがなかったので、もう一度行きたくなった。私自身もアメ横の生き生きしている雰囲気へ圧倒された記憶があるからだ。アメ横が彼の居場所であり、居場所を作ることでまた色んな人が集まって新しい価値が生まれると思った。居場所っていうものも人が集まる、アイデアを出すインフラ的なものではないか。