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町へは出れないが、書を捨てよう<おまけページ②>

7月ですね。

2日前にはもう入ってましたが、なんか月を跨いだ感覚がなかったもので
今言ってみました。

では、前回同様2サイクル目の読破本を振り返ってみます。

今週の8冊

□出口汪『「考える力」を身につける本』
□桜井章一『図解 人生を変えるシンプル思考 77』
□山口亨『ガンダムに学ぶ経営学』
□中野信子『生きるのが楽しくなる脳に効く言葉』
□宮本慎也『洞察力』
□深沢真太郎『「伝わらない」がなくなる 数学的に考える力をつける本』
□メンタリストDaiGo『なぜかまわりに助けられる人の心理術』
□田丸雅智『たった40分で誰でも必ず小説が書ける超ショートショート講座』

前回6冊でキリが悪かったので、今回1冊追加して帳尻合わせしてみました。次回から7冊単位でまとめます。

今回は、いわゆる自己啓発本でも思考法とかメソッドに関する本が多かったですかね。

あと、家の整理をしていて見つけた古参本などもあって、せっかくの読書機会をスルーしていたのかがわかり、とっても恥ずかしいですね。
「あの時読んでおけば、まだましになっていたものを……」と
まるで読んでいたら人生が変わっていたかのように思うこともありますが
読んでいたとてそれなりでしょう。思い上がるな粗忽者。

今回は、出口さんの『「考える力」~』と、深沢さんの『「伝わらない」~』という鍵括弧から始まる系の本がよかったですね。

論理的な文章を作るためには、数学的なアプローチが必要で、つまり、どんな矛盾も見逃さず文と文に強固な関係性を持たせることで、納得のいく文章が生み出される。

賢い人は論理的、ロジカルだと言われますが、ちゃんと理由があるってことなんですね。

また、メンタリストDaiGoさんの本は、ただ有益な情報を並べるだけでなく、対象に合わせて伝える順序や語調を整えることが大切なんだと学びましたね。

はい、というわけで次の本は……

……前回お約束しましたね。

田丸さんのメソッドで書いたショートショート。
ショートというには少し長くなってしまいましたが、いかに載せておきます。本当に時間に余裕がある方はご覧ください、どうぞ。


習作超ショートショート『レイン・ステップ』
作・逢田真吾

とある街の広場に、一台のグランドピアノが置いてありました。

いつからあるのか、誰が置いたのか、そもそもなぜそこにあるのか、
誰にもわかりませんが、屋根のような響板や、脚まで、木目の柄が美しい茶色のグランドピアノは、街の人たちから愛されていました。

ある時は子供たちが思い思いに鍵盤を指ではじき、またある時には
ピアニストを志す若者が流行りの曲を弾きならしたり。
ある年の街のお祭りでは、普段無口で不愛想な職人の親方が、どこで覚えたのか軽快にショパンのポロネーズを弾き、大きな歓声があがりました。

この街は、普段あまり雨が降らない地域にあり、1年に何度かの限られた時期にだけ雨が降ります。その少しの間降る雨を溜めておいて、飲み水や生活、農業などのために使っているのです。

街の人たちは雨が降ると大喜びするのですが、降っている間だけ家の中で音を立てずに過ごすのです。なぜかというと……。

雨が降る季節が訪れ、空から水滴がポツリ、と落ちてきます。その水滴が、広場にあるピアノの鍵盤に当たる、すると、音がポロンと響きました。

今度は、ポツリ、ポツリといくつか落ちてきて、鍵盤に当たる。
するとピアノは、ポロン、ポロロンと、音色を紡ぐ。
そうして、ポツポツポツ……ザーッ、と本格的に降り出すと
ピアノはまるで著名な音楽家が弾きこなすように、美しい旋律を奏でるのです。街の人たちは、その音を聞いて、雨が降ってきたことを静かに喜び、
ピアノが奏でるメロディに耳を傾けるのでした。

楽譜など存在しないので、同じ曲は2度とお目にかかれません。
一度限りのリサイタルを、みんな聞き逃さないように静かに、しかし熱心に聴くのでした。

しかし、少し音楽に詳しい人たち(例えば、ポロネーズを弾いていた職人の親方など)は、首をかしげます。

「どうして、あのピアノはいつもちゃんと音が鳴るのだろう?」

ピアノという楽器はとても繊細で、調律をしないと音が少しずつ変わっていってしまいます。まして、外で雨に打たれ続ければ、壊れて音が出なくなることもあります。

しかし、ピアノは壊れることなく、むしろ雨の時こそいきいきと音を奏で、
そして誰かがいつの間にか調律したかのように、いつも同じ音色を保っているのです。

人々はそんなピアノの不思議が気になりつつも、相変わらずピアノはいい音色を響かせるので、気にせずに過ごしていました。

ある年の初夏、いつもならそろそろ雨が降る頃なのですが、全く降る気配がありません。1週間、2週間経っても、まだ雨は降りません。

溜めていた水はどんどん少なくなり、1杯の水を飲むことすらためらわれる深刻な状況です。日差しも日に日に強くなり、夏真っ盛り。
外に出ると汗をかいて水が欲しくなるので、みんな家にこもってしまいました。

それでも、子供たちは遊びたくてうずうずしてしまい、いつまでも家にはいられません。何人かの子供たちが示し合わせたかのように、こっそりと家を抜け出し広場へ集まってきました。

子供たちのうちの一人が、ピアノに駆け寄っていつものように鍵盤を叩きました。するとピアノは、ゴチン。まるでかたい木と木を叩き合わせたように、くぐもった音がしました。その音を聞いた他の子どもたちは、ビックリしてピアノの周りに集まってきました。最初の子とは別の子も、鍵盤を叩きました。

ゴチーン。いつものように澄んだ響く音がでません。
よく見ると、綺麗な木目柄はシワシワになり、急に年を取ってしまったように朽ちてしまっているのです。

子供たちは、慌てて各々の家に帰り、ピアノについて家族に話しました。
それを聞いた子供たちの親や、あのピアノが好きな親方は広場に集まってピアノを細部まで調べてみました。
それでもよくわからなかったので、学校から先生を連れてきて、さらに細かく調べてもらいました。

先生は、驚いた顔で、みんなにこう話しました。
「とても信じられないのですが、このピアノは、どうやら植物の性質を持っています。ほら、その辺の木を見てください。雨が降らなかったことで、葉が落ちて枯れてしまっているでしょう? このピアノも同じなんです。水分が抜けて、カラカラになっています。それから……」

先生は、ピアノの足の部分を少し掘ってみました。
なんと、ピアノの足からさらに細い枝のような部分が見えて、地面と繋がっていたのです。

「これは根っこです。そもそもこのピアノは、ここに置いてあったのではなく、信じられないことですが、地面から生えていたということになります。このピアノは、ピアノの木だったのです。」

先生がそう言うと、街の人たちは先生よりもびっくりしてお互いに顔を見合わせました。

ピアノは、雨で壊れるどころか、雨が降ることで元気に音を響かせ、みんなに素敵な音楽を届けていたのです。

不意に、親方が言いました。
「先生よぅ、このピアノに水を掛けたら、また元のように音を鳴らせるかい?」
「……わかりません。少しは元気になるかもしれませんが。」
「ならよぅ、オレの家にある水を持ってくるよ。何もしないよりいいじゃねぇか」

親方がそういうと、他の人たちも、自分も、自分も、と声を上げました。
そうして、それぞれの家から、大事な水を少しずつ持ち寄って、ピアノの鍵盤に沿ってかけてあげました。

最初は、ゴチンゴチンとくぐもった音でしたが、少しずつ、ゴロン、コロン、テロン、と音が軽くなり、最後の1滴を垂らしたところで、ようやく、ポロン、といつもよりは劣りますが、澄んだ音がしました。

けれども、その後ピアノの奥からズズズズ、と鈍い音がしたかと思うと、ピアノは根元がポキリと折れ、切り倒されたかのように地面へ投げ出されました。辛うじて角度を保っていた響板が開いて、ピアノの中が見えるような形になりました。

街の人たちは、がっかりしてピアノを見つめていましたが、誰かがピアノの中を見てこう言いました。

「種だ! 種があるぞ!」

みんなが、中を覗くと、確かにピアノの中には、種のようなものがたくさんありました。楕円形の種子に細長い羽根のような毛がついた、まるで音符のような種だったのです。

街の人たちは、喜んでこの種を大事そうに持ち帰りました。
いくつかは、また広場へ植えなおし、またある人は、別の街へ住んでいる知り合いに手紙をつけて送ったりしました。

それから数年後。

街では雨が降ると、前よりも高い音で、たくさんにぎやかな音が響いていました。
そして、他の街でもにぎやかなメロディが聞こえてきたそうです。

おわり

あとがき

って、全然ショートじゃねぇ!

前提もツッコミどころ満載ですが、一応アイデアとしてまとめて多少前後整えたらこんな感じになりました。

いかがでしょうか、楽しんでもらえましたでしょうか。

また脚本メソッド系の本を読んだ際には、試したり試さなかったりします。

次回は、藤沢晃治『頭のいい段取り すぐできるコツ』です。

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