メモリアルコミュ感想 -今井加奈-

注意書き
・文字だけ。
・デレステのメモリアルコミュの感想です。
・実況パートと感想パートが交互に入ります。
・読んだその場で書いた感想です。ちょくちょく考察も混じります。
・読む前の知識は『たくさんメモする子』くらいのものです。
・デレステのメモリアルコミュのみです。その他の、成長後の姿等に関する言及はありません。
・コミュ5は、コミュ4のあとで少しだけ触れます。

目次
・コミュ1
・コミュ2
・コミュ3
・コミュ4
・ちょっとした感想

ミュ1

遊園地近くにて
「あれ……おかしいな、こっちであってると思ったんだけど。」
あの、ここはどこでしょう?
「わたし、こっちに出てきたばっかりで、全然知らなくって! すごいんですね、都会って!」」

早速、迷子の描写。いきなりですが、少し深読みします。

迷子……『現状の自分自身についても迷子である』というところでしょうか。
迷子になった場所は遊園地、都会に出てきたばかり、というのもポイントです。都会の遊園地、つまりは新天地の楽しいところです。まだスカウト前ですが、『アイドルの世界』のことを意味するのでしょう。
でも、少し不思議な気がします。「友達といたんですが、はぐれちゃって」という言葉から、『遊園地の中で』迷子になっているように伺えます。
むしろ、『遊園地がどこにあるのか分からない』と迷子になって、プロデューサーに手引きしてもらって『遊園地に辿り着く』という展開の方が、『アイドルの世界に入り込む』ことの表現としては良さそうなのですが、この状況だと『アイドルの世界でも迷子になる』と読めてしまいます。まだスカウト前なのに。

閑話休題

Pが道を教えようとした時に、今井加奈さんが咄嗟に止めます。
「教えるの待ってください! メモ、とりますからっ!

早速出ました重要ワード、メモ

しかし、今井加奈さんの様子がおかしい。
……って、メモ帳がないっ!? ないですっ!
友達に渡したまま……!?

……ん? ない?
軽く読むと、おっちょこちょいだなー、と通り過ぎてしまいそうですが、深読みすると、これ、結構とんでもない状況のように思えます……。
メモ帳、きっと大事なものなのでしょう、現実問題の解決においても、精神的にも、自身を支えるはずの『メモ帳』を『友達に渡した』ことで、よりにもよって『新天地で迷子』になった状況下で、『現在、手元にない』、うむむ……。

そこでPはすかさず、
「名刺に道を書いて教える」
それに喜び、お礼を言って今井加奈さんは立ち去ります。

Pが、彼女を支えるメモ帳の代わりになる、ということでしょうか。
なんというか、少々不安な立ち上がりですね……。

数日後、Pの元に訪れる今井加奈さん。

ああ、そうか、『名刺を渡す』ことそのものが、間接的な『スカウト』になっていたんですね。
ということは、先ほどのPの行為は、『(彼女を支える)メモ帳の代わりになる』『(アイドルの世界のことを仄めかす)遊園地の道案内を務める』『アイドルになる直接的なきっかけを作る』という3重の意味を持っていたことになるのですね。これは見事ですね……。

明るくPに話しかける今井加奈さん。
「もらったメモの裏に、住所が書いてあったので、来ちゃいました!」
「優しくしてもらいましたから、お礼を言おうと思って!」

いい子。でも、親切にしてもらったからって、よく知らない人のところに行くのは危ないですよ。

訪れたはいいが、Pが何者かは理解していない様子です。
「なんのビルなんですか? もらった紙にはプロダクションって……。」

何にも知らない子、天然の気質があるようです。
オーディションとスカウトは、自発的にアイドルになるか、受動的にアイドルになるかの違いを表します。その分類でいえば、今回のコミュはどう見てもスカウトなのですが……何も知らないとはいえ、『能動的にPの元へ行く』ことがアイドルになるきっかけになっているのですよね。少し特殊な状況に思えます。なんというか、深読みのやりがいのある筋書きですね……。

ここでやっと、Pは自己紹介をします。
「アイドルの事務所に、プロデューサーさん……ですか!?」
「さすが都会ですね! すごい人に会えちゃった!」

て、天然炸裂? いや、これは『アイドルの世界』が、自分とは関係のない別世界だと認識している、ということの現れかな。

アイドルプロダクションと知り、はしゃぐ今井加奈さん。
「じゃあ、ここは可愛い子がいっぱいいるのかな?」
「どんな子がアイドルになるんですかっ?」
「やっぱりものすごく可愛い子ですかっ?」

お前じゃい。
「やっぱりものすごく可愛い子ですかっ?」の笑顔が非常に可愛らしい。

どんな子がアイドルになるか、に対する返事は、「素質について教える」とのこと。
「へぇ……平凡な子、ですか……。」
「えへへっ! なら、わたしと同じですねっ! なんてっ!」

素質=平凡な子、のようです。また、自分のことを平凡な子と認識していることも明言されました。「やっぱりものすごく可愛い子ですかっ?」という発言も踏まえると、アイドル=非凡、自分=平凡、と考えているようです。

今井加奈さんの質問が続きます。
「じゃあ、女の子が可愛くなれる秘訣とかも知ってますか?
「わたし、田舎から出てきて、ビックリしちゃったんです! 都会の子は、可愛い子ばっかりで!

これは、筆者の直感なのですが、「女の子が可愛くなれる秘訣とかも知ってますか?」という言葉が、なんだか重要そうです。この子のアイドルとしての物語を支えるような気が……いえ、根拠のない、ただの直感なのですが。
田舎コンプレックスも現れました。田舎にも色々とレベルがあります。これまでの言動的に、人口はそこそこいる、県庁所在地からは少し外れた、でもバリバリのど田舎とはいえない、都道府県レベルでは田舎、県内でも都会ではない、でも市町村レベルで見ると一応街の中で、超ど田舎までは行かない、というレベルでしょうか。
まあそれはともかく、重要なのは都会=可愛い子=アイドルの世界田舎=平凡な子=自分、という構図でしょう。
本編に戻ります。

女の子が可愛くなれる秘訣とかも知ってますか?」という今井加奈さんの質問に対するPの返事は、
アイドルになったら教えてあげる

アイドルになる直接の導入になる、やっぱり、超重要ワードでした。

アイドルになったら、可愛くなる秘訣が教えてもらえるんですか!?

この台詞も面白い。それまで散々、今井加奈さんからはアイドルの世界が別世界かのように、アイドルの世界に対する隔たりが描写されてきたのに、ここでは、アイドルの世界との隔たり<<<<<可愛くなる秘訣、となっている。

そして、今井加奈さんはアイドルになることを快諾します。
アイドルのことも、可愛くなる秘訣も、これから教えてくださいっ!

アイドルの世界との隔たりと(私が勝手に)解釈してきた内容が、この台詞にて、アイドルの世界の無知、として描かれている。

メモは、自分の思考情報の断片記録だ。
知っているはずの情報を忘れないようにする道具だ。
だから、そもそも知らない情報に対しては無力だ。

それにしても、可愛くなる、にこれほど貪欲なのはどういうことでしょうか。これまでの描写的には、『可愛い』の反対は『平凡』となっています。
平凡からの脱却を望んでいる? いえ、そんなに平凡コンプレックスを持っているようにも思えないような……もっとざっくりと『より良い自分になりたい』、あるいは『より良い自分になろうとしていたい』ということでしょうか。

なんとなく、メモリアルコミュのテーマが、『知る』と『可愛くなる』になっていそうな予感がします。これも直感なので、間違ってるかもしれませんが。

コミュ2

レッスンルームにて
「初めてのダンスレッスン……。」
「うまくはできないかもしれないですけど、メモはしっかりとります!

早速メモが出てきました。しかし、ダンスレッスン、演技(ビジュアル)や歌と比べて、メモをとるのが一番面倒そうなレッスン内容です。

レッスン前にメモしようとする今井加奈さんをPが制します。
P「メモはしまおう

そんな殺生な。

「はい! メモしますね!」
メモをしまうことをメモしようとします。

コントか?

ここでやっと、「メモをしまおう」という言葉が頭に入ってきたようです。
「メモがないと振り付けもアドバイスも覚えられませんよ〜!」

いきなりメモが封じられる展開に。
ちょっと困るぞ。まだこっちは『今井加奈にとってのメモ』の意味が分かっていないのに。

ダンスレッスンに際してのPの助言は、「体で覚えて」か「心に刻んで」
どちらにせよ、トンチンカンなことを言って混乱する今井加奈さん。
問答無用に「ミュージックスタート」するP。
戸惑いながらもレッスンを終える今井加奈さん。
「でも、メモに頼れなかったから、振り付けとかアドバイスは死ぬ気で覚えましたぁっ!

これまではメモ、外部記録に頼りきりで、肝心の自身をうまく使えていなかった、ということでしょうか。

得心が行った、と喜び、感慨にふける今井加奈さん。
メモに頼らなくても体で覚えられましたし、できたって感動は、心に刻めたと思うんです!」
わたしみたいな取り柄のない子でも、できるんだぁ……!

メモに頼るのは、自分に自信がないことの裏返しのようです。
コミュ1の内容と合わせると、平凡=取り柄のない=自分、のようです。

思い出したかのように、今井加奈さんは提案します。
「あ……でも、やっぱり不安なので、覚えたことをメモしておいてもいいですか?」
これには「いいよ」と答えるP。

冒頭の流れもあり、微笑ましい台詞です。同時に、メモする理由『不安だから』が明示されてもいます。
平凡=取り柄のない自分が不安だから、メモするし、メモに頼る。
しかし、このレッスンでは、メモに頼る前に、まずは自分を使う、ということが教えられました。

メモしたところで、不安になったようです。
「……あの、メモしたことがあっているか不安なので、もう一回練習してみてもいいですか?」

『メモはなし→そんな→メモなしなのも重要かも→でもメモしていい?』
うん、話のオチがつきました。
それはさておき、メモしても『不安』。ずっと不安なのですね。
この伏線がどのように使われるのかが楽しみ。

コミュ3

撮影スタジオにて

明るく挨拶する今井加奈さん。Pを見つけ、助言を求めるようです。
「あのっ、撮影の時に気をつけることがあったら教えてくれませんか?」

これまでのコミュから、取り柄のない自分に自信がない、いつも不安な子、という描写がされていますし、新しい仕事は不安で仕方がないでしょうね。

撮影に関するPの助言は、「カメラを意識しないこと」
当然、メモする今井加奈さん。
「意識しない……意識しない……!」

『意識しない』を意識しすぎて混乱する、という展開ですね。

そのまま撮影に入る今井加奈さん。
カメラマンから「少し硬いかな。リラックスリラックス。」という指示が出ます。
「ふぅ……リラックスして……。あっ、カメラも気にしなくて……。」

『リラックス』を意識しすぎてリラックスできない。
『カメラを気にしない』を意識しすぎてカメラを気にしてしまう。
悪循環というか、これでは逆効果ですね。

すかさずPから「メモしたことは忘れて」と助言が入ります。

コミュ2でもそうでしたが、『メモを捨てる』展開が続きます。
いえ、正確には『メモが逆効果になっている』『メモに振り回されている』展開が続いています。
現状では、メモは不安の結晶というか、不安を紛らわすための道具で、現実に集中できない要因となっていますからね……。

衝撃を受ける今井加奈さん。
「ええっ!? メモしたことを忘れるって……わたし、いったいどうすれば?

まだまだメモに頼りきりな状態。

ここでカメラマンからの助言がとびます。
「朝みたいに、いい笑顔見せてよ! ほら、あいさつの時みたいな。」

あー、確かに『自然体で良い感じ』って描写だった。伏線だったかー。

カメラマンの助言を受けて、考える今井加奈さん。
「それはカメラが無かったからで……。あれ、カメラ……?」
「あの、プロデューサーさん。最初に言ってくれた、カメラを意識しないっていうのは……。」

ここでようやく、Pの助言の真意が伝わったようです。
これまではメモした内容が上滑りしていたというか、メモした内容の意味を表面的に捉える傾向があった、ということでしょうか。
確かに、メモといえば、明日昼13時に会議室で打ち合わせ、とか、店の場所とか、そういう表面的な情報を書き込むものでもあります。
一方で、授業や講義内容、スピーチ、そして他者からの助言など、深掘りしないと意味がないメモもあります。
メモした情報の質によって、使い方を変える必要があるのですが、表面的な使い方しかできていなかったのかもしれません。このコミュでメモの活用方法を新しく知るのですね。

「カメラを意識しないっていうのは……。」と助言の真意を尋ねる今井加奈さんに、Pは答えます。
そのままの加奈でいいんだよ

これもまた、大事な言葉です。
コミュ1では『可愛くなる秘訣』を求め、コミュ2では『取り柄のない自分への不安』を出してきた今井加奈さん、自分を変えないと、という意識が印象的ですが、そんな背のびをしなくても、いいんですよ。

言葉を咀嚼して、ようやく助言の意味を消化できたようです。
「そのままのわたし……。そっか……カメラを意識しないって、そういうことだったんだ。」
「プロデューサーさんがそう言ってくれるなら、ありのままのわたしを撮ってもらいますっ。」

今更ながら、ここでいう『カメラ』は、『アイドルとして求められる振る舞い』を意味しているのですね。
うーん、今井加奈さんの物語で出てくるPは、なんだかマトモな人だなぁ。

あらためて、そのままの自分として、挨拶をする今井加奈さんの言葉でコミュが終わります。
「あのっ、わたし、とっても平凡な女の子ですけど……一生懸命頑張りますっ! あらためて、撮影よろしくお願いしますっ!」

宣材写真の撮影はアイドルとしての初仕事ですから、『撮影よろしくお願いします』にも意味があるのでしょう。
さて、まだまだ『平凡』を出してきます。どうなるでしょうか。


コミュ4の前に、少し考察。
コミュ3はコミュ2と同じ展開のように思えます。確かにコミュ2と似ていますが、でも内容は少し違っています。

コミュ2では『とにかく最初にメモすること』を封じることで、『まず自身を活用する』ことを教えています。
そうして最終的に出てきた台詞は「……あの、メモしたことがあっているか不安なので、もう一回練習してみてもいいですか?」でした。
この台詞は、『体得した経験を想起する手段』として書いたメモが、キチンと機能するかどうかを試そうとして、初めて出てくる台詞です。
やる前からメモしようとしていた今井加奈サンにとって、このメモの使い方は、新しい、あるいはこれまで意識していなかった使い方のはずです。
コミュ2では、そのような新しいメモの使い方を学んでいます。

コミュ3では『メモした内容』を意識しないようにすることで、『メモした内容を表面的に解釈すること』を封じ、結果として『メモした内容の真意に気づく』ことができました。
既に書きました通り、ここではメモした内容の質の違い、『メモを解釈すること』について学んでいます。

これまでのコミュでは、メモがうまく機能していない側面ばかりが印象的ですが、だからメモするのはダメ、という話ではない。そうではなく、『これでメモの新しい使い方が分かったね』という話だと思うのです。メモの良い側面も現れてきている、という話だと思うのです。
とはいえ、メモする理由の根本には『自身への不安』があり、メモが負の側面を持つのも確かなことのようですが……。
なんだか、書いていると『メモ』でゲシュタルト崩壊しそうです……。

コミュ4

控え室にて
仕事の段取りを反芻しているところに、Pが現れます。
デビュー後のLIVEに、緊張する今井加奈さん。
「もう1回メモを読んで……振り付けも確かめて……。歌詞も大丈夫かな……忘れてないよね……?」

これまでずっと『不安』が提示されてきての、LIVE。どれほど不安なのだろうか……。

Pは「リラックスして」という助言を送ります。
「は、はい、リラックスですね! メモメモ……。」
「それから深呼吸〜。吸って〜吐いて〜リラックス〜……。」

正直、「メモメモ」という言葉が出た段階で、これはまたダメか、と思いました。しかし、その後の台詞、「リラックス〜」のところでちゃんと表情が緩んでいるのを見て、筆者は反省しました。
『リラックス』という言葉に支配されることなく、ちゃんとリラックスできている。コミュ3を受けて、ちゃんと成長できています。すごい。

「……ふぅっ。よしっ。大丈夫です! たぶん……きっと。」
しっかりとリラックスはできましたが、不安は残っている様子です。

アドバイスを実践できたとはいえ、物語にずっと付き纏っていた『不安』が簡単になくなるはずもなく。どうなるか……。

それでも、笑ってPに話しかけます。
「プロデューサーさんに教わって、メモしたこと全部を出し切れるように頑張りますねっ!」

頑張れ……!頑張れっ……!!

……そうだ、このメモ帳、預かってもらってもいいですか?

うわっ、そうくるかっ!!!
コミュ1の、迷子になった原因じゃないですか、これ。
たぶんコミュ1で友達に貸したのって、友達を助けるためで、それを手放したせいで不安になって迷子になって、でも今回はありのままの自分をPに渡して、自分を支える人に預かってもらって、それは自分を見失わないためで……。
物語のきっかけを、正反対の文脈で、うわー。これは楽しい。

それじゃあ……いってきます!

うわー、安心感が全然違う。すごいなぁ。

LIVE会場にて
「加奈のLIVEは大きなミスもなく無事に終わった……」

舞台上で挨拶をする今井加奈さんの場面に移ります。
「改めてご挨拶します。今井加奈です!」
「今日は、わたしのファーストLIVE……じゃなかった。今井加奈ファーストLIVEに来てくださって……。」
「……あれ? 今井加奈デビューLIVEだったかな……?」
「ああっ、メモするのを忘れちゃってたから……!」
ここで客席の女の子に、後ろの看板に書いてあると助言をもらう、という一幕が。

メモは大事ですね〜。ほっこり。
深読みするなら、自分の名乗り方がまだ朧げ、という内容を掘ることになりそうですが、まあここは深読みしなくてもいいでしょう。

控え室に帰ってきて、反省する今井加奈さん。
「うぅ……すみません、プロデューサーさん。歌とダンスはちゃんとできたのに……最後のトークで失敗しちゃって……。」
「まさかLIVEの名前を忘れちゃうなんて……。わたし、ドジですよね? ダメダメアイドルです……。」
Pは「そんなことないよ」と言葉を掛けます。

このPは本当にマトモだなぁ。
このようなトークのミスは、ミスではないのですが、それでも不安な今井加奈さんはそれがミスであると思い込んでしまいます。根本には『不安』がある子ですから、たぶん、見た目以上に凹んでいると思われます。

Pの言葉でも立ち直るには至りませんが、客席からのアンコールを受けて、自分が受け入れられていると知ります。
どうして……?

ここで、どうして、なのですよ。ただでさえ取り柄のない自分が、舞台上で失敗してしまったから、お客さんに受け入れられているとは思っていないのですよ。

きみに会いたいと思うから

うわー。ソロ曲待ったなし。こんなテーマのソロ曲が聴いてみたい。

どうしてですか?
わたしなんて平凡でドジで……アイドルらしくないのに……。

……。

Pは「お客さんに聞いてみよう」と提案します。
「……いいんですか?」と笑顔に戻り、聞き返す今井加奈さん。
Pは、メモ帳を手渡します

うわぁああぁあ。メモ帳だー!
不安の結晶で、不安を解消する道具で、これまでの今井加奈さんで、それが信頼しているPの手から渡されて、うわぁあああ。

「……分かりました! わたし、お客さんたちに聞いてきます! どうして、わたしを呼んでくれたのか、教えてもらったことをしっかりメモしてきます!

あわわわわ。ここに来て、メモの新しい使い方ですよっ。ありのままの自分を見せる道具であり、大事な大事な内容を書き留める道具ですよ。ひええ。

「ありがとうございます、プロデューサーさん! いってきます!」
「みなさーん! アンコールありがとうございます!」
「まず、わたしからみなさんに質問させてください! どうして、アンコールしてくれたんですかーっ!?」
舞台上の今井加奈さんのこの質問で、コミュ4が終わります。

はぁー。圧巻。

コミュ1では、メモリアルコミュのテーマが、『知る』と『可愛くなる』になっていそうな予感がします、なーんて言いましたが、いやいや、私も未熟者でした。いや、それほど的外れとも思っていないのですが(自己弁護)。

テーマが『知る』なのは、部分的に正しかったと思います。ただ『知る内容』が、『メモの使い方』という、全く予想だにしなかったことだっただけで。
『メモに頼らず、まずは自分で動くこと』
『メモした内容の真意を、キチンと考えること』
という教えを得て成長するのがコミュ2とコミュ3で、きっちりと成長したコミュ4にて、『メモ』が『自分の成長の証』になって『ありのままの自分を見せるもの』に変わって、『決して忘れてはいけない、大切なことを書き留めるもの』になるんですよ。

『可愛くなる』がテーマだ、というも、平凡な自分へのコンプレックスを反映したもの、取り柄のない自分への『不安』、という意味では部分一致ですが、ちょっと正解から遠かったかな。
テーマは、『不安との付き合い方』といったところでしょうか。
たぶん、今井加奈さんは、そもそもに不安で仕方のない方で、不安が全く解消されることはないのだと思います。そんな彼女が、メモという強力な武器を使って、どうしようもない不安を軽んじることなく扱う方法を探っていく物語だったのでしょう。

これがメモリアルコミュで、ということは、他のコミュとかのアイドルになった後のお話は、これらを経た姿ということで、すごい子だなぁ。

さて、当然、コミュ5も読みました。
特筆すべき内容は『メモは計画の象徴』で予定外の事態や無計画な行動には弱いこと、でも、メモが役に立たない『あたふた』も楽しくて価値があること、メモしたい内容を『忘れる』ことも『新しい楽しい』を探すには良いこと、総じて、『メモのない状況にも価値がある』ということでしょうね。
でもまあ、コミュ5は、こんな記事を読むよりも、自分の目で見る方が、価値が高いでしょう。

ちょっとした感想

正直、ここまで面白いとは思っていませんでした。
『メモ』というテーマを、これほど上手に料理してくるとは。
コミュごとにきっちりと成長しているのもポイントが高いです。

『不安』というテーマに対する解答として、よくあるのは『不安の原因の解消』、『不安からの脱却』などです。そういう物語には、ドラマが作りやすく、大きなカタルシスも得られやすい、王道の良さがあります。
しかし、今井加奈さんの物語では、ついぞ『不安』の根本的な原因が明かされず。強いて言えば『取り柄のない自分』が不安の原因ですが、なんというか、彼女の『不安』は、随分と漠然としていて、漠然とした不安は解消も脱却も難しい。だから、『不安とうまく付き合っていく』という物語になっています。不安の対処としての『メモ』を、うまく活用できるようになる物語ですね。
こういう物語で、見事にカタルシスを感じさせてくれて、うん、楽しかった。

でも、これってメモリアルコミュだから、アイドルカードたちは、この背景を抱えて、それでもなお楽しそうな姿だったり、さらなる問題を受け、それで成長したりする姿なんですよね……。しかも、今回のメモリアルコミュは文脈を重視した物語になっていたから、アイドルカードたちではもっと自由な文脈で書けるわけで、むむむ。この後の物語が楽しみです。

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