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君はタイクーンのIDコアに何を思うか。

※当記事は仮面ライダーギーツ最新話までのネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください。


こんにちは。
朱上言です。

突然ですが
仮面ライダーギーツ、めちゃくちゃ面白いですよね。

放送が始まってはや3ヶ月。
1話でのライダー速攻退場の衝撃に始まり、2話以降も多人数体制による手に汗握るゲーム展開に目を奪われ、毎週30分が光の速さで過ぎ去ってしまいます。

その中でも特に僕が気に入っているのは仮面ライダータイクーン=桜井景和周りのストーリーで、
最初はただぼんやりと平和を願うだけの一般人だった景和が、DGPでの戦いを通して飛躍的に成長していく姿がカッコよすぎて完全に心を奪われてしまいました。

2話冒頭と7話の変身シーン、たった数話で別人の顔つきに。

特筆すべきは7〜8話、缶蹴りゲームでの活躍っぷりで、
DGP開幕直後は仮面ライダーギンペン(=平孝人)の死に際しても臆して動けなかったほどの「口だけの平和主義者」だった景和が、複数の死線を乗り越える中で成長し、最終戦においては"強大なラスボス"と"仲間割れ"という大きな壁に直面して尚「みんなを助けるまでは倒れない」と先陣を切り立ち向かってゆく勇姿に魅了された人も多いのではないでしょうか。

直近の迷宮脱出ゲームでもファン歓喜の復活劇を見せ、続く椅子取りゲームにおいては強化フォームの獲得が確約されているという、2号らしい至れり尽くせりの展開が続いているわけですが、

そんな仮面ライダータイクーンと切っても切り離せない話題といえば、無論タイクーンIDコアの販売形態についてでしょう。
今回は、何かと話題を呼びがちなタイクーンのIDコア(※ライダーコアID)について、
僕個人の感想をつらつらと書き連ねていきたいと思います。


・情報解禁と世間の反応


番組開始当初からストーリーテラーとして実質的な主役の立ち位置で活躍していた桜井景和。そんな主要中の主要キャラと紐付く重要アイテムということもあり、タイクーンIDコアの商品化を望む声は無視できないほどあがっていました。

しかし、実際の商品展開は顧客の声の逆をいくものばかりであり、

10月に解禁されたDXニンジャレイズバックルにIDコアが同梱されていないことで不満を買い、

逆に同月末に解禁されたモンスターレイズバックルにはパンクジャックのIDコアが付属していたことで「なぜタイクーンだけ付かないんだ!」と、

2連撃でプチ炎上したことも記憶に新しいかと思います。


そして来たる11/21。
仮面ライダータイクーンの本編登場からゆうに2ヶ月以上が過ぎ、ファンの間で商品化の形態について多くの予想が飛び交う中で解禁されたのは

仮面ライダータイクーンIDコアキャンペーンの開催予告でした。

かねてより「キャンペーンの配布なのでは」と噂されていたタイクーンIDコアでしたが、噂通り配布での立体化となった形に。

よくある配布系のキャンペーンではありますが、その対象が「3ヶ月近くもったいぶった上に」「2号ライダーの変身に必須のアイテム」というダブル役満だったこともあり、公式のリプ欄は完全に大荒れ状態。

需要に応え得る十分な量が用意されていることが開発者ブログにて明言されたり、実際多くのネット通販にて告知後1週間ほどは予約が可能な状態だったりと、
「品薄になるのでは」「転売屋に狩られるのでは」といった目下の心配はクリアされていたわけですが、 
そもそもキャンペーンであること自体が許せないという意見が目立ったほか、対象商品二つがどちらも高額なものであったことも手伝い、
SNS上で肯定的な声を目にすることは極めて少なかったと言えるでしょう。


さて、このようにタイクーンのIDコアに関するバンダイの挙動は常に多くのファンの不満を買っているムーブばかりですから、
僕もその流れに乗じて「アコギな商売をしやがって」「バンダイは金に目が眩んだんだ」「顧客を舐めている」といった感情的な記事を書き同意を集めることもできるわけなんですが……わざわざ見に来ていただいているnoteでそのような単純でありふれたことをしても流石に読み物として価値がないかなと思ったので、
今回はあえて少し引いた目線から「タイクーンIDコア」について考えていこうと思います。


・「ライダーコアID」の役割とは何か

ライダーコアIDの話題を取り扱う以上、まずは仮面ライダーギーツという作品の商品展開におけるその立ち位置について明確にしておく必要があるでしょう。

デザイアドライバーの発売の少し前、TELEMAGA.netに開発者インタビューが掲載されていました。


開発における視点が垣間見える興味深い記事なのですが、その中にライダーコアIDに関するこのような記載があります。

ライダーコアIDは個別に認識はせず、どれをセットしても同じ音が鳴ります。個別認識をしない理由は、物語に合わせて、変身音などベルトの拡張遊びができるのはレイズバックルにしぼって、わかりやすくする為です。
集めるものが、レイズバックルとライダーコアIDの2種類あって、親御さんが「どちらを買えばいいのかわからない」というようになってしまうのは、一番避けたかったんです。そういう意味で、ライダーコアIDは、ギミックの変化はなく名札や名刺のようなものだと考えています。
誰もがカッコいいと思う変身ベルトを目指す! DXデザイアドライバー開発者の思惑! 【仮面ライダーギーツ】


あくまでも収集アイテムはレイズバックルである」ということが記されており、
商品展開の根幹的な部分からはすこし距離を置いて捉えられているようなニュアンスが感じられます。

つまり、巷で良く耳にする「ライダーコアIDは安価でバリエーションも作りやすいんだからガシャポンや食玩で展開すれば良いのに、なんでしないの?」という疑問に対しては
コレクションアイテムに相当する商品が2種同時に存在することによる顧客の混乱を防ぐため、という明確なアンサーが存在するわけです。(それはそれとして『GPやSGで出てくれたら良いのに!』という意見は痛いほど同意できますが。)

そういった前提を踏まえて考える中で、
コレクションアイテムではないものを事をあるごとに付属させているということは、そのタイミングや立ち位置に何らかの目的があるのではないか?という仮説が僕の中で生まれてきました。

そのような視点からここまで展開されてきたライダーコアIDの"役割"について考えてみると、

ギーツのIDコアはデザイアドライバーにデフォルトで付属しており、バッファはホルダーセット版のドライバーかホルダー単品への付属ということで、
初期ラインナップに2種のコアIDを収録することによってコアの付け替えが可能であるというプレイバリューをスタート時点からしっかりと訴求するための展開であることが読み取れます。

ウリである10フォーム変身などの組み合わせの多さをさらに倍掛けで楽しめるギミックでもある。



そしてパンクジャック(モンスターレイズバックル)・ナーゴ(ビートレイズバックル)のIDコアについては、似たような販売形態でIDコア付属の無かったニンジャレイズバックルとは販促の傾向が少し異なっているのがポイントであり、

ニンジャは発売週の7話(ラスボスと缶けり)にてギーツが獲得し使用、
その翌週の8話(切り札ニンジャ)では満を侍してタイクーンが使用と、
2週に渡り初変身を印象的に描いて強く販促されていた上に、翌々週でもまたギーツの手元に戻り使用されるなどしてじっくりと活躍が描かれたのに対して、

モンスターは発売週の9話(Wake up!モンスター)でギーツが使用すると同時に邂逅編が終了。
一週の放送休止を挟んだ上で謀略編開始の10話(新世界のビート)に入ると同時にビートが発売し、
その翌週11話(ジャマトの迷宮)では翌週発売予定のフィーバースロットレイズバックルが印象的に描かれるという過密なスケジュールとなっていました。

まとめてみるとこんな感じ。


また、玩具の性質的にも
バックル自体がシリーズでは屈指の奇抜な外見をしていたり初の音声内蔵バックルで単価が上がるハードルの高さがあったり
作品・玩具シリーズともにアクセントを加えてくれる反面、尖っているが故に総合的に見て玩具としての訴求力に欠く面があるという特性が見えてきます。

そういったスケジュール上反則が手薄になる点や玩具としての総合力の不足を補う方法として、
バックルへのライダーコアIDの付属による商品価値の増設こそがその役割であったのではないか、という考察が可能なわけです。

まとめると

・ギーツ&バッファ→初期ラインナップ内で「コアIDの換装」を訴求する役割

・ナーゴ&パンクジャック→尖った特性を持つバックルを安定して売るために商品価値を付与する役割

といったところで、
結論としてはライダーコアIDは単純なコレクションアイテムではなく、それぞれに明確な役割が割り振られているということになります。

では、
タイクーンIDコアも同様の性質を持つとすれば、割り振られたその"役割"とは一体何なのでしょうか。


・「対象商品を売るため」のキャンペーン

タイクーンのIDコアの役割とは何か!と仰々しく書きましたが、

読んで頂いている人の中には
「いや、商品を買わせるための販促キャンペーンなんだから『対象商品を売るため』ってことでしょ?」と考えている人もいるかもしれません。

引っ張る意味もないのでサッと答えてしまいますが、それでほぼ正解だと思います。

正解ではあるんですが、
『対象商品を売る』という目的がそのままでは少しぼんやりとしているというか、そこをもう少しだけ深く掘ったところに答えがあると僕は思っています。

先ほども添付していましたが、タイクーンコアのキャンペーン概要を記した画像をもう一度見てみましょう。

注目すべきはその対象商品で、
DXデザイアドライバーDXコマンドツインレイズバックル&レイジングソードを購入することによってタイクーンIDコアが一つもらえる。というキャンペーン内容になっているわけですが、
これらの商品が軒並み定価の高いアイテムであり、
デザイアドライバーが税抜定価7200円、コマンドツインバックルが5900円となっています。

この点がファンの逆鱗に触れ、
「定価の高い商品を買わないと貰えないなんて商法が汚すぎる」「タイクーンIDコアを6000円近くで売り付けられているのと同じ」「ニンジャなんかの安い商品にもつけるべきだ」という意見が飛び交う原因となっていることは火を見るより明らかといったところで、

また、「これなら元々コマンドツインレイズバックルに封入すれば良い」という意見もあり、

言われてみれば確かに、
ただ商品全体の回転をクリスマスに向け強化したいなら細かいアイテムも対象にするべきですし、
コマンドツインバックルを強く売りたいならそもそもセットに入れて売り出せばいいので、

こんな見え見えの炎上リスクを踏み抜いてまでこのタイミング・この対象商品ラインナップでキャンペーンを打つからには、
もっと本質的な目的が他にあるのではないか、と考える方が自然でしょう。

キャンペーン情報の解禁がコマンドツインバックルの実質的な解禁を兼ねていたため、なんとなく結びつけて「コマンドツインの販促キャンペーンなんだな。」と捉えてしまいがちですが、実際はそこに焦点を絞ったキャンペーンではないのではないか、ということです。


・仮面ライダーギーツは我々に何を売りたいのか

話題が二転三転して申し訳ないですが、
仮面ライダーギーツの放映開始前、ひいては玩具展開の開始直前のことをみなさんは覚えていますでしょうか?

基本的には例年通りの展開で、ベルト販売までの流れだけで言えば玩具の販売スケジュールと概ね変わった点は無かったのですが、
ただ一つだけ、直近のライダーとは違ったポイントがありました。

それは圧倒的な販促の熱量です。


従来の小物アイテム配布に加え、画像にあるように「歴代変身ベルトを絡めたクイズキャンペーン」「原寸大のフライヤー配布」「東京駅に大量の広告を掲示」「試遊台の実機やフライヤー、広告などを撮影し拡散するキャンペーン」と、1ヶ月のうちにあの手この手のキャンペーンを打ちまくっていた印象があります。

これらを見るに作り手側が「DXデザイアドライバーをとにかく訴求したい」という販売方針であることは明確であり、

さらには、先ほど引用したTELEMAGA.netの記事内にこのような記載もありました。

また、今回「DXデザイアドライバーをより多くの子どもたちに手に取って欲しい」という意図もあり、そういった意味でも全員の仮面ライダーがデザイアドライバーを使用するという設定になっています。DXデザイアドライバーさえ持っていれば、あとはちょっとずつのお小遣いで拡張できるということです。

途中でまた違うベルトが出てきたら、「あれ? どのベルトで遊ぶのがいいの?」と子どもが迷ってしまうことになる懸念があります。「DXデザイアドライバー」だけ買ってもらったら、あとは500円のアイテムを買い足していって、長い間楽しんでもらいたいという意図です。
誰もがカッコいいと思う変身ベルトを目指す! DXデザイアドライバー開発者の思惑! 【仮面ライダーギーツ】


令和3作品に連なる専売特許であった、複数ベルトを伴う商品展開を一度切り捨て、
全ライダーのベルトをデザイアドライバーに一本化すると宣言するほどの激推し具合。

その温度感は販促だけでなく玩具そのものの展開にも現れており、
現状存在する全てのDXなりきり玩具が絶対にベルトに関与できるように作られているという、物理的にも徹底されたメインベルト至上主義となっています。

すなわち、仮面ライダーギーツの商品展開において何よりも優先されているのは、より多くの人に「DXデザイアドライバー」を手に取ってもらうことであると読み取ることができるのです。


・タイクーンIDコアに課せられた使命

以上のことを踏まえた上で、タイクーンIDコアの最も重要な役割はクリスマス商戦〜お年玉商戦のタイミングで強烈に「デザイアドライバーを販促する」ことであると僕は考えています。

・クリスマスのタイミングで対象層の子供(親子)が最も玩具を手に取りやすいタイミングであること。

・十代前半〜後半の「若いオタク」も臨時収入が入りやすく、懐が潤う時期であること。

・投げ売りを狙って足踏みしているオタクの尻を叩けること。

と、あらゆる方面の「まだデザイアドライバーを手にとっていない人」に対する強い訴求を行える構えになっており、
またデザイアドライバーを持っている人は単価の高いコマンドツインバックルへと誘導できるため、販売戦略的として見た時にものすごく完成されているなと感じます。

近年、セイバー・リバイスと
コロナの影響に始まる世情とのミスマッチで、売上自体は決して低くはないにしろ玉数に反して伸び悩むライダーが続き、
仮面ライダーがこれまで行ってきた販売戦略のメソッドがそのままでは通用しないというケースも増えてきたように感じます。

今回のデザイアドライバーの販売戦略、ひいてはそれに連なるタイクーンIDコアキャンペーンが「なにか現状打破の策を打たねばならない。」という危機感や向上心の上で投与されたカンフル剤だったのであれば、
その是非は「金に目が眩んだ愚策だ」と吐き捨てられてしまうようものなのでしょうか。


・君はタイクーンIDコアに何を思うか

ここからは本当に僕の個人的な気持ちというか、なんの根拠もない話になってしまうのですが、

今回のキャンペーン、
解禁後にインターネットで予約すればほぼ確実に手に入れられましたし、店舗によってはまだまだ残っているところもあるので、需要の高いアイテムの配布キャンペーンながら入手難度の面ではほぼほぼクリアされていて、
逆に言えば、損をするのは主に
デザイアドライバーをすでに持っていてコマンドツインバックルを絶対に買いたくない人
または
デザイアドライバーもコマンドツインバックルも絶対に買いたくないけどタイクーンのIDコアだけは欲しい
という人達くらいなので、

「普通にニンジャバックルにコアIDを付属させて販売し、コマンド等を買いたくない人たちが満足する商品展開」と、
今回の「キャンペーンを行い、コマンドを買いたくない人たちからは反感を買うが強い販促効果を得られる商品展開」では
どちらの方が売上で上をいくかと言われると……というのが全ての答えなような気もしていまして、

どうしても、SNS上では一見批判意見に溢れているので「満場一致のクソ采配、バンダイ死ね」みたいな風潮が漂っているような気がしてしまいすが、
キャンペーンは利益重視の汚い売り方に見えてなんとなく嫌なような気がする」というフワッとした感想を一度横に置いて理路整然と考えていくと、その実このキャンペーンで本当に損をした人ってそこまでいないのでは……?みたいなことをどうしても考えてしまいます。


この記事を読んだあなたはどうだったでしょうか。

今回のキャンペーンに何を思い、
どういった行動をして、
今どのような視点でこの記事を読んでいたでしょうか。

同意する意見でも、反対する意見でも、
コメントやSNSでの引用で思いの丈を書いていただけると嬉しいです。

読んでいだき、ありがとうございました。











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