螺旋階段

「よかった、きょうもおれ、ちゃんと生きたまま寝床についた」
心底ホッとして、思わず口に出して言っていた。

おれはいつも螺旋階段をただひたすらに下っている。踊り場すらもなく、どこまでも下方に向かって伸び続ける螺旋状の階段を。おれは必ず階段の先端に居て、足を一歩前に出すとまた新たな段が現れる。逆に言えば、おれが踏み出さない限りは階段は現れないし伸びない。そして、下り続けるのをやめた時が命の終わり時だと、おれは悟っている。

なぜって、1.5段分後方から、大口を開けたヤツが迫ってきているからだ。おれにすぐにでも喰いつけるようにとギザギザの牙を剥き出しにしたクリーチャーは、常に一定の間隔で追ってきているのだ。おれが少しでも足を止めれば0.5段分の距離を縮めてそのままガブリ、だ。

あいつに喰われるのが先か、おれが階段を踏み外すのが先か。


おれはいつまで正気を保ったまま、眠りにつけるだろうか?