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群馬イノベーションアワード2021・トップ座談会(2) 新規事業で企業価値向上

座談会の2回目は、座長の腰高博コシダカホールディングス社長ら11人が、「Withコロナ・Afterコロナにおける、わが社のイノベーション」をテーマに、企業の価値向上に向けた新規事業やデジタル化の促進などについて意見を交わした。

2021年11月5日 上毛新聞掲載

業態を変える好機 腰高氏

腰高 博・コシダカホールディングス社長
 こしだか・ひろし 1960年生まれ。前橋市出身。大学を卒業後、家業のラーメン店に入社。90年、カラオケ事業に転進し、95年から現職。温浴事業も手掛ける。海外にも事業展開中。

腰高 主力のカラオケ事業は非常に厳しく、8月期連結決算は過去最大の赤字を計上した。だが先月、通常営業が再開し、新型コロナウイルスの感染拡大前より来店客が増える店舗もあり、良い形で再スタートを切れた。
 コロナ禍で痛切に感じたのは、カラオケ事業以外の収益の必要性。個室で歌い、部屋代・飲食代を稼ぐ既存の仕組みはイノベーションの対象になる。そこで「ワンレック」というサービスを始めた。個室で歌った曲を撮影し、SNSなどで発信できる。アーティストの配信ライブを個室で楽しめるサービスも準備中だ。業態を変革するチャンスと捉えれば、面白い展開ができる。

新商品開発に挑戦 高井氏

高井 雄基・赤城深山ファーム取締役
 たかい・ゆうき 1990年、東京都生まれ。大学中退後、アパレル会社勤務を経て23歳で家業の赤城深山ファームに入る。GIA2014のスタートアップ部門で大賞受賞。二期作でソバ栽培に取り組む。

高井 赤城深山ファームは渋川・赤城町でソバを栽培する農業生産法人で、そば粉や実を販売している。コロナで飲食店の動きが鈍化し、新たな商品開発、他産業とのコラボレーションを模索中だ。消費傾向が変化し、手軽に作れて十分に栄養を摂取できる商品の需要が高まっている。当社はそば粉を使ったパンケーキミックス粉を開発し、今年1月に販売を始めた。小売店や、そば店のカフェタイムのメニューなどとして人気が出ている。
 近年、世界各国でソバよりもうかる作物への転換が進み、値上がりが続いている。こうした中、当社が取り組む二期作農法を広く日本の各所に伝える必要性を感じている。

効率性向上を実感 石田氏

石田 昌嗣・石田屋専務
 いしだ・まさつぐ 1977年、旧鬼石町生まれ。都内の不動産会社勤務を経て、2002年に石田屋入社。パナソニックビルダーズグループに加盟し、群馬県、埼玉県北部で戸建て住宅を建築している。

石田 石田屋は、パナソニック商品を採用した戸建て住宅を建築している。特に太陽光発電と蓄電池をセットしてエネルギーを活用した住宅づくりに力を入れている。間取りや設備だけでなく、再生可能エネルギーやIoTの導入も強化する。
 外出自粛の影響で住宅展示場の来場者が減っている。一方、ホームページからの資料請求が増え、アクセスしやすいよう改良した。結果的に受注数はコロナ前と変わらない。むしろ仕事の効率が上がったと感じる従業員も多い。海外からの建設資材の高騰や納期遅れが続いている。価格・工期などお客さまに迷惑がかからないよう努力を続けていく。

DXで困り事解決 金井氏

金井 修・クライム社長
 かない・おさむ 1961年、沼田市生まれ。群馬富士通勤務を経て、89年にクライムを設立。金融・行政のシステム開発と積極的なM&A(合併・買収)などで事業を拡大してきた。

金井 クライムは取引先に最適なICTソリューションを提供している。現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)ソリューションとして、インフラ点検や物流などに有用なドローンビジネスに力を入れ始めた。
 県内でもICT導入が進んでおり、デジタル個人認証「まえばしID」で市民サービスを行う前橋市の「スーパーシティ構想」など、産学官連携の取り組みが顕著だ。一方、中小企業のDX化は遅れている。課題はあるだろうが、働き方改革や人材不足などを見据えた30年後を想像してほしい。生き残るにはデジタル化が不可欠。当社のDX技術で企業の困り事を解決していきたい。

企業活動を下支え 芝崎氏

芝崎 友哉・群成舎取締役イノベーション事業部長
 しばさき・ともや 1985年、高崎市生まれ。大学卒業後、市川環境エンジニアリングで環境保全に関わる事業開発に従事。大学院で経営学やM&Aを学び、修士課程修了。2019年から現職。

芝崎 群成舎は環境ビジネスを展開している。外出自粛などのコロナ対策は、環境面では良い影響をもたらした。だが、このままでは経済が回らない。収束後は環境悪化が懸念される。炭素税の導入など規制が強化される中、環境ビジネスが企業活動を下支えする必要がある。
 イメージアップを図ろうと、先月、サステナブル(持続可能性)をテーマにした「エコラボカフェ」を高崎市内にオープン。廃材によるインテリアを配置し、食品ロスを活用したメニューなどを提供している。サステナブルを通して新たな人材を呼び込み、経済と環境を両立させて成長できる仕組みづくりに貢献したい。

新規BtoB創出 羽鳥氏

羽鳥 和之・サンデン・リテールシステム関東支社長
 はとり・かずゆき 1967年、前橋市生まれ。大学卒業後の91年に入社し、都内で食品機器営業、本部営業を経験。2019年10月、サンデン・リテールシステムとして独立。20年6月から現職。

羽鳥 サンデン・リテールシステムは本年度、SDGs経営を表明、社会課題に対しさまざまな取り組みを推進している。
 コロナ下で非対面非接触ニーズが高まり、自動販売機が注目されている。冷食自販機「ど冷えもん」は店の味を楽しみたい消費者と安定した事業経営を望む店舗双方が満足する新たなビジネスモデル。無電源低温物流機「レボクール」は従来の食品などの冷凍・冷蔵輸送だけでなく、コロナワクチンなど医薬品物流に新たに活用されている。県には非接触式手指消毒機器「て・きれいき」を寄贈、安全な生活環境に貢献した。今後も社会課題の解決を目指し、地域貢献と価値創出に努めていく。

外食の魅力を提供 有馬氏

有馬 流太郎・サントリー酒類市場開発本部広域営業第2部長
 ありま・りゅうたろう 1971年、京都市生まれ。大学卒業後、サントリーに入社。福岡支店や市場開発本部、大阪支店、東京支店を経て、再び市場開発本部で外食ビジネスを担当。

有馬 サントリー酒類でアルコール飲料の販売を担当している。コロナの影響で外食業界は非常に厳しい状況だ。飲食店に育ててもらった企業として何か役に立てればと、指定した店舗に食事代を先払いするサービス「さきめし」や、プレゼントキャンペーンなどを実施した。他社と連携して、外食産業関係者のワクチン接種も支援している。
 コロナで家飲みが加速したが、その反動で「外飲み」を渇望する声もある。消費者が外食に求める価値と、当社の豊富な品ぞろえを生かし、外食でしか味わえないサービスや雰囲気などの感動体験を提供したい。そして商品購入につながる好循環を生み出せるといい。

人材と組織力強化 関 氏

関 智宏・JOETSU社長
 せき・のりひろ 1960年、東京都生まれ。都内の広告会社勤務を経て、2018年6月から現職。目下、グループ会社を挙げて企業の広告・販促領域のDX支援に力を入れている。

 JOETSUにとって新領域となるデジタル広告市場の開拓に注力している。その実現に向けた組織強化と人材育成が最重点課題だ。3年前、デジタル広告で最先端の企業と提携し、デジタル広告会社を設立した。デジタル広告の基盤を一気に整備することができた。新領域を担う人材は、部署間異動、新卒、中間採用などから適任者を配置し、育成を図っている。
 コロナ禍で、DXを通じて新しい事業モデルを構築したいという需要が顕在化している。従来のやり方にとらわれず、最適な解決策を提供できる人材をさらに増強し、顧客企業のニーズに応えていきたい。

柔軟な思考を共有 土屋氏

土屋 慎吾・親広産業グループ Face to取締役
 つちや・しんご 1975年、東京都生まれ。大学卒業後、都内の不動産会社に入社。ゴルフ場再生事業、ミャンマーでの不動産開発、国内新規事業の立ち上げに従事し、今年8月から現職。

土屋 親広産業は1996年に設立し、西毛地域を中心に、他社が目を向けない物件の活用に力を入れてきた。コロナ前から既存のクラウドサービスを組み合わせて活用し、リモートワーク環境を安価に整えてきた。今後は、社内外のコミュニケーションもクラウドを通じて円滑に行えるように取り組みたい。
 コロナ下で人々の働き方の意識が変化している。勤務先は変えず、暮らしやすい地方への移住や、その逆もある。そうした状況も踏まえ、高速のインター周辺、主に軽井沢、富岡、吉井の土地活用に注力している。柔軟な思考が企業を強くする。それをグループ一同共有し、まい進していきたい。

働き方に創造性を 渡辺氏

渡辺 辰吾・ソウワ・ディライト社長
 わたなべ・しんご 1976年、前橋市生まれ。2014年から現職。「デンキのミライにワクワクする」というビジョンを掲げ、人と環境、地域と企業が共生可能な循環型エコシステムを構築。

渡辺 ソウワ・ディライトは、最先端技術の導入に力を入れつつ、人間の原生的な体感を大事にしようと、会社の前に森を作り、そこで自ら1年ほど仕事をしている。それが新たな都市デザインを手掛ける微生物研究チームに注目され、自然由来の微生物との共生について一緒に研究している。未来の働き方に求められるのは、安全性はもちろん、そこでしか生まれない創造性だ。将来の危険因子と向き合うことが、一つのビジネスにつながるのではないか。
 当社は地域の皆さまに支えられ、今年で設立40年を迎えた。さまざまな人や地域とのつながりが企業の財産であり、そこから浮かび上がる課題の解決に取り組んでいきたい。

地域人材育つ好機 中島氏

中島 慎太郎・中央カレッジグループ副代表
 なかじま・しんたろう 1976年、前橋市生まれ。大学卒業後、TACを経て2004年に中央カレッジグループに入職。16年からグループ内の学校法人中央総合学園理事長に就任

中島 中央カレッジグループは専門学校運営や人材育成事業を展開。オンライン授業やデジタル教材導入など、ある意味、コロナが教育のデジタル化を後押しした。進路については地方から大都市への進学が減少、地域にとどまる傾向がある。地域の人材を地域で育て、地元企業に送り出す好循環を生むチャンスだ。オンライン学習などはコロナ後も手段の一つとして活用し、誰一人取り残さない教育を目指したい。
 教育理念として、各業界に合った専門性と豊かな人間性を備えた人材育成を掲げており、育成に必要なリテラシー教育にも力を入れたい。学生の目線に立ち、特性を生かした学びを心掛けたい。