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群馬イノベーションアワード2021・トップ座談会(6)(最終回)ニーズ捉え事業創生へ

企業家発掘プロジェクト「群馬イノベーションアワード(GIA)2021」トップ座談会の最終回は、座長の荒井正昭オープンハウス社長ら8人が「Withコロナ・Afterコロナにおける、わが社のイノベーション」をテーマに、ニーズを捉えた取り組みや新規事業について意見を交わした。

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2021年12月2日 上毛新聞掲載

金融の動向を注視 荒井氏

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荒井 正昭 オープンハウス社長
 あらい・まさあき 1965年、旧藪塚本町(現太田市生まれ)。都内の不動産会社勤務を経て、97年に不動産業のオープンハウスを設立。首都圏を中心に事業を拡大し、2013年に東証1部上場。19年に群馬クレインサンダーズの運営会社を子会社化。

荒井 東京を中心に名古屋、福岡など大都市圏で製造から販売まで一貫した不動産業を展開している。昨年2月の新型コロナの感染拡大状況から、誰も不動産を買わないと予測していたが、ステイホームにより5月の連休明けから戸建て住宅が爆発的に売れ出して驚いた。飲食・旅行・ホテル業は大変厳しいが、他の業界は基本的に景気がいいと思う。当社は東日本大震災に対応した経験を生かし、コロナの初期段階から大きな危機をうまく乗り切ったといえる。
 不動産業はアフターコロナより政府の金融政策の影響が圧倒的に大きい。これまで通り顧客目線を第一に、今後の金融情勢も注視したい。

極上味わう環境を 大熊氏

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大熊 章之・オルビス社長
 おおくま・のりゆき 1961年、旧榛名町(現高崎市)生まれ。全国食肉学校卒。81年に食肉加工業の大一ミート入社。2000年に同社社長に就任。鳥一フーズと合併、オルビスに社名変更し、09年から現職。

大熊 オルビスは食肉と青果、総菜製造を3本柱に経営している。群馬、埼玉、都内の飲食店約4千軒と取り引きしているが、コロナ禍で半分以上が休業・倒産に追い込まれ、大打撃を受けている。今はトンネルの先に明るい兆しが見えてきた。
 野菜や肉など生鮮食品の生産は、外部要因の自然に大きく左右されるが、一方で野菜には食べどきの旬があり、肉や魚には季節の定番料理がある。食文化が発展し、消費者の口が肥えた今、季節を踏まえた旬の素材や料理を提供し、極上のうまいものが食べられる環境を整えていく戦略を考え始めている。うまく発信してアフターコロナにつなげたい。

豊かな生活を提案 榎本氏

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榎本 太平 タカラコーポレーション常務
 えのもと・たへい 1981年、東京都生まれ。大学卒業後、システムインテグレーターで法人営業を担当。2011年、タカラコーポレーションに総務部長として入社、現在に至る。

榎本 タカラコーポレーションは太田市を中心に家電や携帯電話を販売している。家電の販売・施工は訪問営業が基本。今後は携帯電話事業と連携し、スマートフォンと家電のネットワーク化による外部操作や状況確認など、安全安心で快適な生活を提案していきたい。
 携帯ショップでは従業員のPCR検査を定期的に行い、安全安心の接客サービスを続けていく。端末操作が苦手で家族や友達とコミュニケーションの取りづらかった高齢者を対象に「スマホの使い方教室」を始めた。お客さまが生活を豊かにできるように取り組んでいく。社内のデジタル化もリアルと使い分けながら、さらに推進したい。

皆で地域を元気に 永井氏

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永井 則吉・永井酒造社長
 ながい・のりよし 1972年、川場村生まれ。95年に永井酒造に入社。専務取締役工場長を経て2013年から現職。世界基準を設定した「awa酒協会」を16年に設立して理事長に就任。

永井 永井酒造は創業135周年の日本酒メーカー。売り上げ減少の危機だったが、家飲み需要に支えられている。昨年立ち上げた尾瀬のミズバショウを復元する環境保護プロジェクトが本格化。有名アーティストとコラボした新商品の売り上げ5%を寄付する活動を継続中。第2弾として来年2月、有名ファッションデザイナーとコラボしたスパークリング清酒を発表する。特別な日の幸せな乾杯酒として世界に発信していく。
 SDGsに取り組む中小企業の社長や多様な分野で活躍する人をスタジオに迎え、インターネットラジオを通じて活動を伝える試みも始めた。皆で地域を盛り上げたい。

需要の変化つかむ 平形氏

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平形 敦史・西建社長
 ひらかた・あつし 1975年、渋川市生まれ。大手物流会社、建築設計事務所を経て2003年入社、17年から現職。19年に県商工会議所青年部連合会長を務める。前橋商業高硬式野球部出身。

平形 西建は木製家具の製造販売、店舗内装、外構工事などを展開している。内装の改修や家具の入れ替えなどのプチリフォームに加え、バーベキュースペースを作るリガーデン、ガレージの充実といった外回りの依頼も舞い込み、需要の微妙な変化を感じている。
 リモートやオンライン会議の急増で、当社が製造するワークブースをオフィスビルの一角に置く新たな受注が生まれた。密を避けて豪華なキャンプができるグランピング施設の工事を請け負ったこともある。現在、売り上げの落ち込みはないが、先行きに不安も感じる。社会環境の変化を的確につかみ、技術を磨いてニーズに応え続けたい。

数年先見た変革を 広田氏

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広田 金次郎 広田住宅センター社長
 ひろた・きんじろう 1977年、高崎市生まれ。大学卒業後、91年、23歳で広田住宅センター入社。賃貸仲介、売買仲介業務を経て2016年から同センターおよびグループ会社の代表に就任。

広田 広田住宅センターは高崎市で不動産業を経営し、私が2代目になる。48周年を機に創業地に本社を新築、移転した。60インチの大型ディスプレイを設置し、デジタル画面で取引内容などを説明できて、将来的には遠隔での交渉もできるICTに対応した最新設備を導入した。街の不動産業も数年先を見通した変革が必要。来年は前橋に支店を出して顧客の開拓や事業展開を考えていく。
 課題もある。ステイホームで隣人の生活音に関する苦情が急増。24時間対応のコールセンターを設けているが、要望に即応する態勢をさらに強化した。今後は警察ОBなど、プロの力を借りたサービス向上に努めたい。

恩返しの活動継続 斎藤氏

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斎藤 郁雄 富士スバル会長兼CEO
 さいとう・いくお 1967年、前橋市生まれ。大学院卒業後、外資系証券会社勤務を経て富士オート入社。2003年にグループ会社のユーロブレッツア代表取締役社長、15年から現職。

斎藤 富士スバルグループは国産・輸入車の販売を手掛けている。ステイホームでも製造・販売ともに順調だったが、半導体不足で車両が供給できない事態に陥っている。国産車は減産する一方、海外では電装品を減らして極力生産を行っており、電装品を好む日本や韓国との文化の違いを感じた。
 現在は来店から契約までの時間が減少しているので、リモートで内装などを見られる商談に取り組んでいるが、今後はよりスピーディーに対応する営業スタイルに変革していく。また、損害保険会社とタイアップして高齢者を対象にしたドライブサポートセミナーを初開催した。お客さまへの恩返しの活動を続けたい。

楽しい食住を追求 増田氏

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増田 晋一・増田煉瓦社長
 ますだ・しんいち 1960年、前橋市生まれ。大学卒業後、東京三洋電機・三洋電機で技術職を経て94年入社。98年5代目就任。前橋をピッツァのまちに、煉瓦のまちづくりと併せて群馬・前橋の魅力を全国に発信中。

増田 増田煉瓦は1917年に前橋市で煉瓦製造業を始めた。今はピザ窯に特化。素材輸入から設計・施工・維持管理まで行い、大手の販売網を使ってホテルやレストラン、道の駅などに納入している。新たにパン窯、薪(まき)グリルも開発した。
 一次産業から三次産業まで多くの人が関わり、前橋から全国に発信できる、新しい食の仕組みづくりに取り組み、たどり着いたのが煉瓦窯だ。同じ食材でも薪とガスでは味わいが全く変わる。こだわりの味を求める職人が増えて窯の需要も伸び、軽量窯や生地の開発でキッチンカーのピザ販売も増えた。煉瓦窯を使っていかに楽しく食べてもらうかを追求したい。