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市民の活動芽吹く

<2021年8月29日 上毛新聞より>
「めぶく。」をキャッチフレーズにまちづくりが進む前橋市で、市民による新たな活動が芽吹いている。中心街の馬場川通り沿いには、市民有志の尽力により人気の喫茶店「ブルーボトルコーヒー」の出店が決まった。馬場川通りは公共空間ながら、市民グループが民間資金で歩道を改修する珍しい取り組みが始まっており、メンバーが「どんな通りにするべきか」と将来像を話し合っている。寂れつつあった街に幅広い市民の力が結集し、かつてない可能性が広がっている。

人気の喫茶店誘致 寄付金で歩道改修
 「ブルーボトル」は洗練された店舗デザインが特徴で、「コーヒー界のアップル」といわれている。国内では東京都や神奈川県、京都府など大都市の雰囲気の良い街に出店している。そこに9月下旬、前橋市の店舗が加わる。市民による情熱的な誘致活動の成果だ。
 起業家を養成する2016年度の群馬イノベーションアワード(GIA)で入賞した佐藤拓さんと、共に同市出身の長谷部辰雄さん、干場諒さんの3人が「GIVE」を起業。それぞれ本業を別に持つが、「地元を盛り上げたい」と考え、市街地に開業したデザイン性の高い白井屋ホテルのテナントとしてブルーボトルの誘致を決意。昨年12月に同社の国内責任者を招いて、街の動きや再生への思いを直接伝えると、同社の理念と合致して異例の急展開となった。
 GIVEが事業主として運営パートナーとなる珍しい形態。最高経営責任者の佐藤さんは「用事がなくても皆が集まれる場所にしたい。わくわくが止まらない」と語る。
 ブルーボトルが面する馬場川通りは、同市の企業経営者でつくるまちづくり支援団体「太陽の会」(田中仁会長)が寄付した3億円で、2023年11月までに改修工事が行われる。主体となる前橋デザインコミッション(MDC、天野洋一代表理事)は広く市民に参加を募り、「馬場川通りアーバンデザインプロジェクト準備委員会」を立ち上げた。どんな空間なら市民が誇りに思い、憩うことができるかについて勉強し、企画を練っている。
 MDCの日下田伸企画局長は「工事をして終わりではなく、その後の維持管理やイベント開催時の運営も大事」と、長期の視野に立って人材育成に努めている。

新店次々、街に刺激
 全国の地方都市と同様に、前橋市の中心街も人通りは少ないが、近年は人気店が相次ぎ出店し、店舗前に行列ができる光景が日常的になっている。
 馬場川通りと中央通りの交差点近くに飲食の3店が並ぶ。「グラッサ」は米・ポートランド発の手作りパスタ店。

菓子店「なか又」はふわふわ生地の創作菓子が人気。

和食店「つじ半」はウニやイクラが山盛りの海鮮丼が売り。

食の分野は異なるものの、互いにしのぎを削り、街の魅力を高めている。
 前橋中央通り商店街振興組合の大橋慶人理事長は「3店とも個性的で魅力的。周囲の老舗に新しい客が訪れ、いい刺激が伝わっている」と歓迎している。