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群馬イノベーションアワード2021・トップ座談会(3)発想の転換が活路を開く

座談会の3回目は、座長の鳥越淳司・相模屋食料社長ら9人が、「Withコロナ・Afterコロナにおける、わが社のイノベーション」をテーマに語り合い、新たな挑戦に必要な発想の転換、社会の変化を逃さない柔軟な対応力の重要性などについて意見を交わした。

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2021年11月12日付け 上毛新聞

強み生かし新商品 鳥越氏

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鳥越 淳司・相模屋食料社長
 とりごえ・じゅんじ 1973年、京都市生まれ。96年、雪印乳業に入社。2002年に相模屋食料に入社、07年から現職。大豆加工食品を製造販売。革新的な商品を次々と打ち出して、業界トップ企業として成長を続けている。

 鳥越 新しい豆腐の世界を広げること、破綻した豆腐メーカーの救済や再建に取り組んでいる。「やっても無駄」と思われても「やればできる」と証明したい。
 コロナ禍で考え方を転換、「できない」と思っていたことを進めた。具体的にはコロナ前からブームになっていた植物性肉だ。植物性肉の素は大豆で、大豆といえば豆腐。自分たちの主戦場。豆腐から作ったがんもどきに肉粒感を加えた「肉肉しいがんも」を発売した。罪悪感がなく、環境への負荷も少ない「イノセントミート」と名付けた。大手と真正面からやり合うのではなく、強みを生かす。おとうふ屋さんだからこそできた。

小さな挑戦続ける 広瀬氏

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広瀬 一成・アサヒ商会社長
 ひろせ・かずしげ 1976年、高崎市生まれ。航空貨物会社を経て、祖父が創業したアサヒ商会に2009年入社。3代目社長に就任した。文具・OA機器、オフィス家具などを販売している。

 広瀬 アサヒ商会は、文房具専門店のほか、企業向けにオフィス家具などを販売。モノづくりでのイノベーションは起こせないが、売り方や見せ方でイノベーションを起こしていきたいと思う。 コロナ禍で売り上げが落ちる中、何ができるのかを考えた。緊急事態宣言が発出されると、子どものいる社員がテレワークにスイッチ。すぐにスイッチできたオフィスのあり方が商品になると考え、テレワークセミナーを開催。また、実際に働くオフィスを開放し、営業が売りに行くのでなく、お客さまに見に来てもらって販売する売り方に転換。ちょっとしたアイデアを重ね、小さなチャレンジを続けたい。


変わる講師の役割 柴崎氏

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柴崎 大海・うすい副社長
 しばさき・おおみ 1982年、安中市生まれ。大学卒業後、他の学習塾勤務などを経て2011年、うすい学園に入社。PISA型学力を育成する同塾の運営に携わる。12年から教室長、18年から現職。

柴崎 うすいは、本県と埼玉県で学習塾を運営。思考する力や発信する力を身に付け、将来、群馬を担える人材の育成を目標にしている。コロナ禍で授業の形を変え、中学生は対面授業が週2回、オンライン授業を1回としている。
 今後、従来の一斉指導が通用しなくなると思う。個人が自分の能力を発揮するには、情報を使いこなす力、思考して自ら発信する力が必要。塾はそこに入っていかなければならない。ICTをうまく使いたい。講師の役割はティーチングから目標やモチベーションを与えるコーチングに変わる。簡単ではないが、何を目指し、何ができるのか考えていきたい。

業界イメージ変化 岡田氏

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岡田 勇一・オオラ美装社長
 おかだ・ゆういち 1972年、福岡市生まれ。邑楽町育ち。大学卒業後、金融機関勤務を経てオオラ美装入社。ビルメンテナンス業務などを経験した後、営業部長、副社長を歴任。2009年から現職。

 岡田 オオラ美装はお客さまの半数以上が工場。メンテナンスや請負業務をメインとし、建築営繕や人材派遣、訪問看護サービスも展開。8月にはサツマイモを使った自社ブランド『菓処 芋いつも』で菓子やスイーツの製造販売を始めた。 コロナ禍でズームを活用。オンラインで図面や写真などを事前確認したため作業効率が上がった。またメンバーを固定したチームを作り、濃厚接触者が出たときの範囲を限定、他チームでカバーして停滞なく業務を提供、新たな信用につながった。衛生管理が再認識され、私たちの事業の必要性・専門性が増して魅力ある業界に変化する。チャレンジし続けたい。

「地域一体企業」へ 江黒氏

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江黒 太郎・クスリのマルエ社長
 えぐろ・たろう 1976年、旧大胡町生まれ。大学卒業後、米国で経営学修士取得。国内大手製薬会社で営業、海外事業、マーケティングを経験し、2010年にクスリのマルエに入社。16年から現職。

江黒 クスリのマルエは主にドラッグストアと調剤薬局を経営。「地域密着」の先の「地域一体企業」が目標で、店を通して地域に貢献していくことを追求したい。
 コロナ禍でお客さまの購買行動が変わった。1軒で生活に必要なものを網羅したいとのニーズが加速した。今年は店を改装し、スペースがあれば食品を広げている。ローカル消費へのニーズも高まった。それを受け、キッチンカーに出店してもらったり、地域の飲食店の弁当をわれわれの店の軒先で販売してもらった。飲食店とお客さまとの接点づくりをお手伝いできた。弊社の強みは地域とのつながり。そこを磨いていくのが戦略だ。

SNSを積極活用 丸野氏

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丸野ケンジ KJ Internacional社長
 まるの・けんじ 1989年、ペルー生まれ。桐生市育ち。人材派遣会社勤務を経て2014年に独立。在日外国人と製造業企業をつなぐ会社として事業拡大中。インド出身の高度人材の派遣にも力を入れる。

丸野 KJ Internacionalは人材派遣会社で、ビザの心配がない日系人を中心に製造業に派遣している。得意な外国語を生かし、外国人との接し方に気を付けながら事業展開。今は技能実習生が入国できないため、在日外国人や日系人をターゲットとした派遣需要が高まっている。
 正社員採用をオンラインに完全移行し、内定式もズームにした。派遣社員の採用ターゲットは外国人なので、多くの外国人が利用するフェイスブックなどSNSの活用に力を入れている。広告費は増えたが、効果は上がっている。対面なしで仕事を求める人は今後も増えるため、SNSの使い分けなどを勉強していく。

正しい知識届ける 池田氏

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池田 道成 じぶんカンパニー社長
 いけだ・みちなり 1991年、東京都生まれ。伊勢崎市育ち。大学在学中の2015年、じぶんカンパニーを創業。前橋、高崎でメディカルジム「プライベートジムDROIT」4店舗を展開している。

 池田 じぶんカンパニーはメディカルパーソナルジムを4店運営している。5年前、1人で起業したが今、従業員は15人に増えた。体に関する正しい知識や情報を届けることを大切にしている。
 弊社のジムはプライベートジム。店舗貸し切り型だからなのか、昨年9月ごろから会員数が大幅に増えた。大手ジムから移籍した指導者もおり、需要の高まりを肌で感じている。
 お客さまに正確な情報を届けるため、トレーナーだけでなく、理学療法士や看護師、管理栄養士などの身体の専門家を社員として集め、介入の質を以前よりも高めた。ネットに出回る誤った情報からお客さまを守りたい。

外注ニーズ深掘り 大本氏

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大本 寛 セントラルサービス社長
 おおもと・ひろし 1977年、水戸市生まれ。99年セントラルサービス入社。入社後2年間、請負スタッフとして製造現場に従事。その後、複数の営業所責任者を経て、2015年から現職。

大本 セントラルサービスは本県と神奈川県で人材派遣と業務請負を展開。差別化を図るためコンプライアンス順守を徹底し、製造請負優良適正事業者、優良派遣事業者、職業紹介優良事業者の優良認定を取得した。働く女性を応援しようと3年前、企業主導型の保育園を本社に開設した。
 コロナ禍で請負化やデジタル化を推進。企業が外に出したいニーズを深掘りし、コールセンターや給与計算など、かゆいところに手を届かせることを目指した。社内では給与計算ソフトや名刺管理ソフトを導入、効率化や情報共有を図った。方針を定め全社員で向かうことを意識して進んでいきたい。

後継者育成にも力 齋藤氏

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齋藤 胡依・ダイコー社長
 さいとう・こい 1970年、中国生まれ。2006年に十割そば専門店「竹林」を開店し、08年にダイコーを設立。そば店経営や業務用食材の仕入れ、販売業務、そば粉の製粉業を展開。昨年4月から「日本そば文化学院」理事長。

 齋藤 ダイコーは十割そば専門店の経営と、業務用食品卸やそば粉製造を手掛けている。後継者育成を目指して一般社団法人日本そば文化学院も開設した。
 他に三つのイノベーションに取り組んだ。一つは2年続けて全国高校生そば打ち大会を開催したこと。コロナ禍で止めてしまうのではなく、どうすればできるのかを考えることが大切だと思った。
 また、テレワークなど生活スタイルが変わり、自宅で食事をする機会が増えたことなどから、テークアウト・デリバリー事業に参入。「屋台蔵鳥弁当」を展開するほか、そば文化を広めるため「そばソムリエ協会」も設立した。

【12月5日(日)にファイナルステージ】

「群馬イノベーションアワード(GIA)2021」(上毛新聞社主催、田中仁財団共催)のファイナルステージが12月5日、前橋市のヤマダグリーンドーム前橋で公開で開かれる。2次審査を通過した18組がプレゼンテーションする。
 18組の内訳は、起業・第二創業を目指す「ビジネスプラン部門」の高校生の部が6組、大学生・専門学校生の部と一般の部のそれぞれ3組。創業5年未満の起業家を対象とした「スタートアップ部門」、創業5年以上の事業者がエントリーする「イノベーション部門」もそれぞれ3組。
 ファイナルステージは午後1時開幕。公開審査のほか、デザインコンサルティングを国内外で展開するロフトワーク(東京都)の林千晶会長=写真=が特別講演する。林会長は、花王を経て、2000年にロフトワークを起業。Webデザイン、ビジネスデザイン、コミュニティデザイン、空間デザインなど、手掛けるプロジェクトは年間200件を超える。グッドデザイン賞審査委員、森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す「株式会社飛騨の森でクマは踊る」取締役会長なども務めている。
 また、オープニングでのライブコーディングパフォーマンス、インターバルコンテンツでは高校生らのパフォーマンスを予定している。
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