ゼミnote開設の経緯

 藤本、横山両氏はもともと僕の先生である。
 今から15年前、僕は関東学院大学、人間環境学部、人間環境デザイン学科(以下、デザイン学科)の学生で、藤本先生は教授、横山先生は講師として教壇に立たれていた。お二人と直接の面識を持ったのは、確か2年生か3年生で履修した設計演習だった。
 両先生は、それまで出会ってきた「先生」と少し様子が違った。
 まず、使う言葉に具体性がない。ああしなさい、こうしなさいと道案内をしない。やってみたら、とか、例えばこんな具合にさ、とか、考えてみて、といった具合にエスキスを終えてしまう。
 次に、言葉に頼らずスケッチでコミュニケーションする。紙に線を引いて、こんな感じ、と言う。
 そして、学生の意見を否定しない。学生の言葉に対し、そうなんだ、とか、そう思うならこれを参考にしてみたらとか言って背中を押す。そうした両先生の姿勢は、学生に自ら選択させ、言葉を超えたイメージを持って、ただひたすら思考せよというメッセージだったのだと今思う。

 僕はもともと造園とか自然保護に興味があって大学に来た身だったが、先に書いた両先生からの影響もあってすっかり建築設計に興味を持ち、デザイン学科卒業後は別の大学の修士課程に進学した。修了後は地元の設計事務所に5年間勤めた後に独立、今は設計事務所を営んでいる。その間に学部学科は人間共生学部、共生デザイン学科に改変し、僕からは栃木と横浜との物理的距離(150km)もあってか遠い存在になっていた。両先生とも一年に一度会うか会わないか程度の関係になっていた。

 そんなある日、共生デザイン学科の非常勤講師の話を頂き、久しぶりに大学でお二人にお会いした。学生とのゼミの様子を覗いてみると、相変わらず二人は先に書いた態度で学生と向き合っていた。学生はやはり途方に暮れていたが、しばらくそこから離れて実務ばかりに時間を割いていた僕にとっては、久しぶりにホームに帰ってきた感じがして懐かしく、嬉しかった。

 このnoteを立ち上げたのは、せっかく毎週3人が会うのだから何か一緒にやろうよ、という両先生からの誘いがあったからだ。またもや「何かやろうよ」という漠然とした誘いだったが、これも僕に課せられた二人からの課題だと受け取った。まずは、ゼミでの様子や議論の内容をここに留めていけるようにしたい。もちろん両先生にもnoteを書いてもらって、それを見た学生にも思考の道筋を共有してもらいたい。学生にもnoteを書いてもらえたらなお嬉しい。
 学生時代「まず0から1になることが大切だよ」と言ったのは確か横山先生だった。100を目指してたじろぐ前にまずスタートを切りなよ、という前向きなメッセージだが、僕がまたその言葉に背中を押されたことになる。

渡邉貴明/関東学院大学人間共生学部共生デザイン学科非常勤講師

 

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