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この記事は2022-03-14 01:25:41の移載

福井の朝は、やわらかだった。

前に来たのは夏で暑さが厳しかったが、

日差しが柔らかく辺りを照らしていた。

昨晩見た銀世界はキラキラと輝いていて、

せせらぎの音が聴こえる。自然の息遣いが

聴こえることはこうも尊く愛しいものか。



今日は福井にきた2つの目的の内の1つである

持続可能な地域づくりを目指した工芸イベント

と銘打つRENEWへ。楽しみにしていた。


そこへ赴く前に昨日イノシシが取れたらしく、

それを枝肉にするために捌いている現場を

見に行かせてもらうことに。

普段食べているお肉はどれだって生きていて、

その命を我々は頂いているのだと噛み締める

瞬間がまさに捌いている時なのだが、なんと

見るだけじゃなくて皮剥ぎをさせてもらえた。


ニトリル手袋をはめ、冷たい猪肉に触れる。

臓物を取られたイノシシが皮を剥ぐだけで、

段々と肉に近づいていく。

皮を剥ぐというと簡単に思えるだろうが、

「言うは行うより易し」とはまさにこのこと。

皮にできるだけ肉を残さないように、かつ、

皮を破ってしまわないように。塩梅が難しい。



そんなこんなで枝肉に捌き始めたタイミングで

我々は一路河和田へ。河和田は漆器のまち。

漆器は実に細かい分業制で木から椀を削る人、

漆を塗る人、蒔絵を描く人、など複数人が

20にも及ぶ工数を分けあってできていく。

そんな工芸品である漆器などを作る工場を

1つ1つ巡っていくような、周遊型のイベント。


自称・奈良大好きおじさんのやべだが、奈良に

こんな工芸品があっただろうか。

もちろんあるのだろうが、僕の認識としては、

製品より原材料のイメージが強い奈良の産業。

越前の質の高い産業をつぶさに見つめられると

同時に、奈良のこともいろいろも考えた。



そんな時に思い出したのは昔のエピソード。

東京で大きく力をつけて奈良に帰って来い、と

大人に言われたことがあった。

言わんとしていることは理解できるが、

ここで他人の声を唯々諾々と聴いていては、

ぼくの人生は誰の人生だ?と思い、ぼくは

奈良に残ることを決めたのだった。

その選択、今は正解だったと思ってるよ。

過去があるから今があり、今がいいと思うので

過去の自分は正しかった。

しかしながら奈良以外の地域にも興味があり、

奈良の外にも一度出て見たいとは考えている。



とてもぼんやりだがそんな風に思っている中、

まだまだ知らないいろんな地域や魅力に触れ、

自分の知的好奇心がくすぐられた。

そして、ただそれらを見るだけでなく、感想や

そこから得たインスピレーションを共有し、

ぼんやりとしたイメージの輪郭を露にさせる。

そうするためには気が合うだけではなく、

興味関心の指向がある程度揃う必要がある。

そういった意味でもほだかは稀有な奴で、今回

声をかけてくれ、感謝しか覚えない。




周遊型でもあり体験型でもあったRENEW。

サコッシュにシルクスクリーンを施す体験、

漆のスプーンに蒔絵をつける体験をし、

唯一無二の自分土産になった。


それ以外にもお金を落とすべく戦利品は多数。

ほだかに手ぬぐいを布教し、手ぬぐいも購入。

「手ぬぐいは昔でいうところのiPhone」と

よくわからないことを言っていたが、どうやら

布教には成功したらしい。



趣味で花を生けるので花を根元で束ねる花輪や

買おう買おうと思っていたiPhoneケースも、

木工製品で気にいるものがあり購入した。

カニの刻印を入れられたのでついでに入れた。


せっかくお金を使うならチェーン店ではなく、

その1つ1つに想いがこもっていたり、技術が

素晴らしいものだったり、理念に共感できる

ものやことにお金を使いたい。と思うので、

しっかりそうしてきた。自分土産は完璧だ。


夜はヨーロッパ軒でソースカツ丼を食べ、

サウナで「整う」を初めてやってきた。



といった具合で今日は猪肉の皮を剥ぎ、

工芸やいろんな地域や魅力を知り、話し、

お金を落とした一日。


ここで出会って持って帰る物たちがこの記憶を

代わりに持っておいてくれるだろうから、

今日のこの日にはいつだって戻れるだろう。

忘れることなく、青い春はいつもここにある。

それでは今日はここまで。各々の佳い日を!


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