2017年ベストMV10選

 ベストMVといっても映像が強烈なもの、曲が突き抜けてるもの、個人的に思い入れ深いもの等々ないまぜとなっています。では10位から。

10. Butchers Harem ft Toecutta "Snuff Porn Holocaust"

 初っ端から閲覧注意R18+。いきなりすみません… オーストラリアのゴア~ホラー趣味Hiphopクルーの問題作。このCGアニメはテラーコアアーティストでゴア映像作家のScreamerClauzによるもの。なんと4K画質。スプラッターも糞便もポルノも全てゴアのためのゴアでしかないゲロゴア地獄絵図をブチ撒けられた。是非全画面で見ましょう、そこまで精細ではないが故にトラッシーでもあるCGの、色んなところがよく動いてるのがわかります。何も考える隙なく、よく作ったなぁと眺めてる内に過ぎていく… ちなみに動画最後に紹介されるアルバムやら何やら買わないと寝てる間に家族全員殺しにくるそうです。


9. TiTAN "Overdrive 2"

 よく作ったなぁと言えばこれ(今度は大丈夫です、ちゃんとしてます)。MVというよりは映像作品か。メガドライブの実機で再生する映像ROM "メガデモ"を作り出すグループ TiTANによる第2作。これも720p50のHD設定で全画面で見ましょう。あまりの限界突破ぶりにぶったまげること請け合い。トラッカー "Deflemask"を用いた重厚なDnBチューンも迫力満点。


8. B Boys "Energy"

 ブルックリンのポストパンクバンドのデビューアルバムより。性急なビートに乗るギターがなんとほぼB単音しか弾かない(途中でトライトーンと増5が登場するもすぐ戻る)。サウンドはミニマルなポストパンクながらバンド名やボーカルの語気などから新しい姿勢のミクスチャーを感じる。


7. ハルコとフランシス "ハモンハモン"

 Original Love~The Collectorsの元ベーシストで、実はそれ以前にPicky Picnicのメンバーでもあったという小里誠のソロユニット Francisが、ポストパンク?バンド シャンプーハッツのギターボーカルで近年は音楽に留まらないソロ活動が活発なアーティスト 田島ハルコを迎えたコラボレーションミニアルバムよりタイトル曲。EBMの骨太なビートに田島氏の怪鳥音ボイスが飛び散る序盤から異様な緊張感を醸すが、ひねた拍節感を交えて流れ込むコーラス部分はニューロマンティック的に妖艶。ショッキングな異物感をスタイリッシュにまとめた映像もイカしてる。


6. Antwood "Don't Go"

 カナダのIDMプロデューサー、Planet Muよりリリースの新作から。ASMRをテーマにした作品だそうで、序盤のショッピングモールで一人全裸でうずくまる寂寥感から聴覚のみならず全感覚が鋭敏になり、そこへ注がれる音と映像にキマりまくる。爆発的な絶頂を迎える中~終盤、最後の所謂「名残惜しいけどここまでね」的なパートと曲タイトルもくせになって一度見ると何度かリピートしてしまう。君も冷蔵室で魚まみれになろう。


5. Sharp Veins "learn boxing miami"

 アラバマ拠点のプロデューサー、UNOよりリリースのEP。グライムがベースにあるものの今日的なフューチャー~ニューエイジ感覚に満ちていて、雨林で朽ち果てたアーケードゲーム筺体ような音とそれをばっちり視覚化したような映像が印象的だった。VHS画質の郊外、レコーダーが記録した事故映像、都市生活の断片、サイケデリックな合成を交えた自然、紛争などシリアスなイメージ…抽象的な不安と恍惚感に何かを警告しているようなそうでもないような。


4. The Newcomer "TIRED EARTH"

 Basic HouseStephen Bishop主宰の先鋭的ビートミュージック、エクスペリメンタル電子音楽カセットレーベルOpal Tapesの、今年新たに始まったデジタル配信部門Beatrice & Annie第一段リリースより。ファクトリーセットそのまま宙に放り投げられたようなシンセ音、奇妙な読経のような声が浮遊する中、PS3とかXBOX風のCGモデリングの人物を雑に踊らせた、漠然と不安な映像がリピート、そしてここでも都市&自然の背景。上記のSharp Veinsとも通じる近年の(Vaporwave以降の)ニューエイジ再興モードを感じられる。こういうバグっぽいCGだとLiarsのBratsを思い出したりするけど(比較するのも違う気もするけど)あれに比べての何も進まなさと、状況的にインスタントな快楽が続いてく空虚さが今日的。どこへ向かうのか、僕らは知らない…


3. Virtual Self "EON BREAK"

 世界的EDMアクトPorter Robinsonによる新プロジェクトがまさかの音ゲーコアだった。冒頭の音からしてIIDXの曲決定音ぽいし、映像も12 HAPPY SKY~15 DJ TROOPERSあたりの汎用ムービーっぽい。最後に出てくる白黒ポーターは確実にDJ YOSHITAKAのオマージュだろう。YouTubeのコメントでも「ポーターがDDRモードになっちゃった」とかたくさん書かれてる。元来BEMANI、特にDDRからの影響を公言してはいたが、ここまでの強烈なレスポンスには驚いた。ただ音色がまんまBEMANIな一方で、ハーフテンポを保っていたり、過密な展開は避けていたり、音ゲーコアのトレンドや必要とされるゲーム性から導かれる様式美のような部分を上手く外していて、似て非なるもの、分岐次第ではありえたかもしれない姿となっているところが面白い。EPも全体的に音ゲー者には物凄く耳馴染みよく素晴らしい。


2. 曇ヶ原 "3472-1"

 昨年メンバーの脱退が相次ぎ一時休止状態にあったプログレッシブ・ハードフォークバンド、曇ヶ原。ヒソミネにショウタさんとあつみさんのデュオを見に行った際に""僕のサークルの後輩の""ヴァイオラ伊藤君からメンバー募集に応募があったときいたのが今年の2月。新メンバーお披露目2回目のライブで一時的にドラムサポートをしていたOsamuさん(SEX VIRGIN KILLER、VWVW、ex-例のK)も正式メンバーとして加わり、宛ら無敵艦隊のような快進撃がなおも続いている2017年。新編成初音源のMVは、沿線感のある風景や団地のヤクラ?などのイメージとBeat Club風の合成映像演奏シーン。全員胡散臭すぎる…悪の四幹部みたいになっている。楽曲自体は前編成時からあったものらしく、1stアルバム収録曲の延長上にある変拍子リフ+怨歌フォークだが、現編成のテンション漲る演奏、歌の線を惹きたてる職人的な巧味をはっきりと提示したテイクとなっている。


1. Roselia "LOUDER"
(※期間限定公開ゆえお早めに)

 最後これだけはベストMVというよりベストトラックのライブ映像という位置づけですがご勘弁を…今年は何の年だったかというと個人的にはRoseliaの年だった。バンドリやガルパについては細かい説明を省くけど、要はガールズバンドを題材にしたメディアミックス作品/スマホ向けリズムゲームで、声優さんが実際に楽器演奏をすることが話題になっている。実演奏をするバンドは2つあって、その内のひとつがRoselia。今年はRoseliaが初お披露目~みるみるうちに大きくなっていくのを見届けていた1年だった。4枚出たシングルは全部買い、7月は有明にライブを観に行って10月はライブビューイングを見た。
 いやそもそも僕としては作品以前に凄く好きな声優の工藤晴香さんが出るというのでチェックしていたら、どうやら彼女を擁する声優バンドが始動するらしいと知ってこれはエライこっちゃと追っかけ始めていた。内容そのものはキャラと設定ありきというか、巨大な広告が動いているのを目の当たりにするような虚無感を覚えたりもするけど、そんな中でもRoseliaはキャスト一同の仲の良さ、見ているこちらまで楽しくなる"ウチら"感に溢れていて、ぐんぐん惹き込まれていった。あとESPと提携してキャラのシグネチャーモデルをバンバン出すっていうエグさもどこか痛快なとこがあって、しかも工藤さんの演じるキャラ 氷川紗夜のモデルがM-IIリバースヘッドの裏通しってかなり渋いスペックで以下略…
 Roseliaの楽曲はElements Gardenの藤永龍太郎氏によるダーク(ゴシック)でエモーショナルなロック路線でどの曲も大変格好良い。シンプルな演奏でありながら十分キラーなものが出来るというグランジ的な衝撃もあった。
 1stシングル『BLACK SHOUT』カップリングのこの曲は今年最も多く聴いたしコピーして何度も弾いた。作中ではボーカル湊友希那の父が過去にやっていたバンドのレパートリーで、それをRoseliaでカバーするにあたって自分が歌ってもいいものかどうか葛藤するというエピソードがあり、そのあたりが歌詞になっている。マスターピースたる隙のない楽曲だと思う。先日公開された7月のライブ映像をどうぞ。来年5月をもっての引退が発表された遠藤ゆりかさん(Ba.)の渾身のステージングも目に焼き付けるべし。

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