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【底堅い米国経済】5月27日週振り返り 6月3日週シナリオ

今週も先週同様、特に大きな動きはなく相場として小休憩でした。ただFRBが重視しているPCEやGDP、月末と材料はちらほらありましたのでそれらを振り返るとともに、翌週は材料が盛り沢山なのでその見通しについて執筆していけたらなと思います。



米国動向


Ⅰ.米指標


消費者信頼感指数 5/28

結果:102.0 予測:96.0 前回:97.5

消費者信頼感指数

消費者信頼感指数とは、5000世帯を対象に、景気や雇用情勢などについて消費者に調査した結果であり、消費者の視点から米国経済の状況を確認できる。同指標はミシガン大学消費者信頼感指数とともに、経済活動全体に重要な役割を果たす個人消費に関する重要指標となっている。測定値が高いほど、経済に対し消費者の楽観的見方が高いことを示す。

investing.com

今回、予測値前回値ともに上振れたこともあり金利上昇要因となりました。最近は消費に対してやや懸念もありましたが、消費者の視点からはそこまで悲観的ではなく、その懸念をやや払しょくさせるような数値でした。ただしまだきかっけにしか過ぎないので、今後の消費関連のデータに注目です。




ベージュブック 5/29

ベージュブックとは、アメリカの12の地区のFederal Reserve Bankが挙げた報告書になります。内容は、物価や労働市場、消費支出、製造業など各セクターごとの経済状況をまとめたものです。下記リンクが報告書になります。

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/BeigeBook_20240529.pdf

ざっくりまとめると、どの地区も基本的に物価は緩やかに上昇しており、雇用は12地区のうち8地区でわずかなペースで増加しています。最近の消費支出の下振れは、その物価上昇が要因となり、消費者の支出を抑制されているとの見方が多いです。

全体的にインフレ低下に関する情報はなく、むしろ緩やかなペースで上昇基調にあるということです。今後も引き続きインフレデータに注目が集まります。




GDP・物価指数deflator 5/30

第一四半期の改定値が発表されました。実質GDPは下振れ、物価指数は横ばいという結果になりました。

deflatorから、経済全体の物価の変動はさほど変わってはいないということが分かります。GDP下振れの要因は、個人消費がやや下回ったものの堅調さはありますので気にする必要はないのかなと思います。

GDP
deflator

翌日に個人消費支出PCEを控えていたこともあり、相場への影響度は限定的でした。



個人消費支出PCE 5/31

<総合PCE>
前年比:結果2.7% 予測2.7% 前回2.7%
前月比:結果0.3% 予測0.3% 前回0.3%
<コアPCE>
前年比:結果2.8% 予測2.8% 前回2.8%
前月比:結果0.2% 予測0.3% 前回0.3%

結論からいうと、今回のPCEはインパクトはなく、ほぼ市場予測通りでした。ただコアPCE前月比で0.1%の下振れが確認できたため、相場の流れとしては金利安方向に傾いたのかなといった印象です。市場の利下げ期待1.2回(やや2回寄りに)となり、市場はポジティブな反応でした。

ただ今回のPCEで「利下げに向けて何か大きな手掛かりが見えたか?」と言われるとそうではないと思います。今はタイミング的にも重要指標が少し下振れたりするだけで金利安の方向に動きやすいタイミングです。

まとめると、今回のPCEでは利下げ回数が1回⇒2回に完全になるほどのインパクトやタイミングではなかったでしょう。まだまだFRBは利下げに慎重な姿勢を示しています。単月のデータ<積み重ねのデータが重要になってくるので、引き続き今後のデータに注目です。



Ⅱ.米金利

週前半は消費者信頼感指数やベージュブックなどの影響により一時4.63%まで金利が上昇しましたがこれ以上の金利高は材料に欠け、週後半にはGDP/deflator、PCEによって下落し4.50%付近で落ち着き引けています。

米10年債金利

現在の市場の利下げ期待(1.2回)や織り込み水準考えると4.40-4.60%(中央値4.50%)付近が安定していると考えております。ただ今後インパクトある重要材料が出てくれば、利下げ回数見通しも増減し、それに伴って米金利も上下します。今週は比較的安定していましたが、翌週はISM、雇用統計控えていますので指標値次第では大きく上下する可能性もあるでしょう。

あとは、6月QT緩和スタートとそれに伴う米国債需給の関係から、米金利に変化があるのかは注目したいポイントです。それらに関する内容も含めて少し先になりますが、6月FOMCにも要注目です。



Ⅲ.米国株

今週前半は、米金利上昇から株がやや売られ気味でしたが、PCEきっかけでリスクオンムードとなり、特にダウはここ最近調整が入っていた分の買い戻しも併せて、金曜日1.51%の出来高と5月で一番良い結果となっています。NASDAQやS&P500もしっかり買いが入っております。

ダウ
NASDAQ
S&P500

現状は利下げへの期待感による株高はある程度織り込み水準に達し、業績がどこまで伴うかが重要となっています(金融相場→業績相場)。ここ最近はダウはほかの2指数と比べて下落率が高いですが、私は特に気にしておりません。半導体やAIなどの大型テック企業の方が今後の期待感もあるので、NASDAQなどは下げ渋り、ダウに利確による調整が入っているとも捉えれます。月末やアノマリーも関係しているかもしれません。

今週の消費者信頼感指数や個人消費支出PCEなど、消費関連はまだまだ底堅いのが確認出来ましたし、インフレ高止まりとはいえ株価が下落する材料にはならないと思っています。よって今後株式市場にとってポジティブな材料が出れば、ダウはまた高値まで戻していくと考えています。早ければ翌週のISMや雇用統計がきっかけとなりそうです。


為替


Ⅰ.ドル円

5月27日週ドル円レンジ 156.370-157.730(終値157.240)

ドル円レンジ 156.370-157.730(終値157.240)ピンク色枠

今週のドル円は、週足値幅130pipsとほぼ値幅が出ておらず、注目のPCEもほぼ予測通りだったこともあって動きも限定的でした。月末相場でもありましたので30日31日は実需的な円買いがやや出ておりましたが、それも良い押し目となり指標でドル安になるなど、落ちたら拾われる相場展開となっております。

ドル円に関してはあまり記載することがないですが、31日には為替介入の実績が9兆7885億円だったことが公表されました。4月29日と5月2日に円高に振れた局面がありましたがその時に介入があったと見られています。どちらも約5円程度の円買い介入であり、今後介入時には「5円」というのが意識されてくるのは間違いないと思います。

あとは今のドル円の価格帯を見ると、5月2日に行った為替介入実施のレート手前で推移しています。翌週は米指標も多く、現在の円安に加えてドル高が合わされば再び160円を目指す展開となるわけですが、為替介入の警戒感がより強まります。”158円”と”160円”は節目のラインとなってくるでしょう。

一方で米指標が下振れすればドル安に触れるのでドル円も低下します。しかし、ドル安トレンドにはまだ早いですし、円安も加わり底堅さはありますので米金利の織り込み具合や値幅、水平線などから押し目を拾えたら美味しいですね。一応前回の雇用統計やCPIは同じ波形でしたので共有しておきます。



Ⅱ.ユーロドル

5月27日週は月末実需ユーロ買いや米金利高の織り込みなどから下げ渋りやや上昇となりました。しかし上値も重く、週足高値である1.09950付近で何度も抑えつけられています。

この価格帯はデイトレレベルとしてはアリでしたが、スイングレベルだともう一段回上まで待っていました。ただスイングのタイミングは狙ってても取れるようなものではなく、なかなか来ない時が多いのでひたすら待ちです。どちらかというとデイトレで入ったポジションがサプライズで方向性が出るほうが多いでしょう。

5月27日週 ユーロドル推移

少し話が脱線しました。

6月3日週はECB理事会米雇用統計など重要材料が控えております。ECBは果たして利下げが出来るのか?どれだけの委員が利下げに賛成しているのか?今後の金融政策見通しは?この辺りが注目されるでしょう。まだ利下げを完全には織り込んでいない為、実際に利下げとなるとややサプライズ感もあってかなりユーロ安に触れると思います(逆も然り)。あとはラガルド総裁の発言が重要ですね。

そして米指標にも影響を受けます。一番はやはり雇用統計でしょう。雇用統計下振れで米金利安となると、リスクオンのパワーも相まってユロドルの上昇が強くなると思います。しかし前回の記事でもお伝えしましたが、中長期的な目線は変わらず下目線なのでタイミング見て戻り売りを狙っていきたいです。ただこれは金利安の織り込みが弱いとユロドルは下げ渋るので、金利の織り込み強弱やテクニカルポイントを見ながらのタイミングになります。これはスイング的な目線であり、狙っている位置は先週もお伝えした1.095-1.10付近です。

一方で金利高となると、ユーロドル安になりECB利下げも重なると一気に方向性が出るイメージです。また最安値を目指してじりじり下げていくことでしょう。そうなると、株が金利高を織り込んでリスクオンになってもユロドル高になる相関は弱いかと思いますので、押し目買いよりも戻り売りを狙う方が相関的には良いかと思います。



6月3日週シナリオ


まず、今週のイベントを確認します。
太文字は要注目です。

5月3日(月) 23:00 ISM製造業景気指数
5月4日(火) 23:00 JOLTS
5月5日(水) 17:00 欧州圏PMI
       21:15 米ADP
       22:45 米PMI
       23:00 ISMサービス業景気指数
5月6日(木) 21:15 ECB金融政策発表
5月7日(金) 21:30 米雇用統計


先々週や先週と比べて材料が出揃ってくるのでボラも出やすくなるかと思います。その中で最も注目されるのは雇用統計になりますが、ISMも注目ですし、その他の指標でも乖離があれば値幅は出るでしょう。

少しこれまでの流れを確認すると、前回の雇用統計/CPIで下振れし市場の利下げ期待が1⇒2回に増え金利もそれに伴って低下しました。ただ単発のデータなのでこれだけで判断し難いため、金利安は織り込まれ低下も限定的でした。そしてその金利安折り込みに加えて、米指標でのインフレや消費など底堅さが見受けられ、利下げ期待が後退し米金利高となりました。しかしその金利高も織り込み水準まで達しており、現在は安定した水準で推移しているといった状況です。

米10年国債


現在のFEDWATCHを見ても年内利下げ見通しが1-2回をうろうろしているため、それに伴って金利も変動しているといった状況です。市場としては年内1回はするだろうが、2回出来るかは不透明といったところでしょうか。

FEDWATCH

今回ISMや雇用統計の悪化が見られれば、利下げ期待が増加し金利も低下すると思いますが、利下げ期待が3回になることはなく、2回寄りになるくらいだろうと私は考えています。現在の10年国債でいうと、大体利下げ2回分織り込んだ水準で推移しているので、それよりやや下回ったとしても4.30%付近は堅いラインと見ています。

着目したいのは6月FOMCドットチャートやパウエル発言です。ここで年内の金利見通しについてどう考えているのかのヒントが得れます。つまり今年の見通しがやや見えてくるので、年内単位で見れば6月3日週雇用統計やISM、6月10日週CPIは小材料でしょう。仮にかなり下振れたとしても6月利下げはないと思います。ただそれほど好材料が出てくると利下げ時期や見通しが変わる可能性もありますので、その点など踏まえると6月FOMCはかなり重要になってきます。

よって雇用統計やISMが下振れた場合、このタイミングで金利安一直線は想定しづらいため、金利安の織り込みの強弱を見ながらその反発を狙っていく立ち回りをしていこうと考えています。具体的には米10年国債金利4.30%に合わせてドル円買いやユーロドルの売りです。その日にするか、翌日まで様子を見るかは織り込みの強弱に寄るので、臨機応変に対応します。


今週はブラックアウト期間になるため
FRBメンバーの要人発言はございません。

最後までご覧いただきありがとうございました。
良い週末をお過ごしください!


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