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【取説】UAD Teletronix® LA-2A

【取説】について
プラグインを使っていると「え?そんなとこにボタンあったっけ」のような、ある日突然の発見をしたりなんてことありませんか。さすがにそれは頻繁にないにしても、ツマミやメーターも使い始めた頃の感覚のまま、なんとなく使ってることはあるのではないでしょうか。

そのような「なんとなく使い」からの脱却を試みるために、公式マニュアルや第三者レビューなどを参考にしながら、主に自分用の勉強・覚書としてプラグインの取説を書いていこうと思います。

光学式(OPT)コンプの定番モデルです。UADプラグインとしてエミュレートされているのは3タイプですが、後発のTubeCompressorを合わせると4タイプが存在することになります。この記事では主に、オーソドックスなGray,Silverと、さらにその前身モデルのLA-2の3タイプに言及します。なお、TubeCompressorにも概ね当てはまる内容になっています。

▪️操作マニュアル
まず全てのタイプに共通することとして、コンプレッサーの動作を決めるattack,release,ratioのツマミがありません。これらは固定値となっており、COMPモードのときのRATIOは3:1です。AttackTimeは平均10msec, ReleaseTimeは60msecと言及されているサイトも見かけますが、公式情報では見つけられませんでした。ただ、そんなところだとは思います。「平均」と曖昧な表現なのは、入力ソースの周波数によって効果に揺らぎが見られるためで、これは公式マニュアルにも言及されていました。

PEAK REDUCTIONは要するにTHRESHOLDでコンプレッションの閾値を決めます。時計回りに回していくと、より強くコンプレッションの効果を得られます。なおPEAK REDUCTIONを最小値(目盛り0)に設定した場合でも、圧縮はかかりませんが回路を通ることによる色付けが付加されます。GAINは、コンプレッションにより聴覚的に下がった音量レベルを持ち上げます。いずれのツマミも0〜100の目盛りがありますが、これは何か単位を表すものではないそうです。
続いてVUメーターについて。LA-2のみ中央のメーター下部なスイッチがありますが、基本的な操作は共通しています。ツマミをGAIN REDUCTIONに設定すると、ゲインリダクションレベルをdBで表示。+10または+4に設定すると、出力レベルをdBで表示します。例えば+4の場合は、目盛り0の位置が+4dBとなります。
POWERスイッチは、プラグインのON/OFFを切り替えます。OFFにするとプラグインの効果は得られませんので、「コンプレッションさせずに色付けだけに使う」場合であっても、ONにしておく必要があります。
SilverとGrayについているCOMP/LIMの切り替えスイッチは「オリジナルの実機と同様に」効果がないそうです。(公式マニュアルより)
MIXは、DRY/WETのブレンド比率を調整します。このツマミはオリジナル実機には非搭載とのことです。プラグインならではですね。
HFは、デフォルト位置(時計回り5時)から反時計回りに回していくにつれて低域を逃がしていくので、結果的に中高域に対してコンプレッションの効果が大きくなります。この機能の背景には、当時のFM放送では15kHzの帯域でブーストがかかるそうで、LA-2Aはその帯域をコントロールできるよう設計されたとのことです。(同マニュアルより)
なお、この項目の説明にはEmphasis side-chain filterと表現されており、ちょっと字面だけだと効果がわかりづらいです。おそらくHFはHi-Pass flterの略ではないかと思いますが、公式マニュアル始め、どこにも言及が見当たりませんでした。(前述の通り、HPFの効果で低音をコンプレッションから逃す効果、という意味合いだと思われます)

Teletronix® LA-2A Leveler Collection

LA-2 Compressor
LA-2A Silver Compressor
LA-2A Gray Compressor

LA-2,Silver,Grayの3タイプの違いについてですが、公式マニュアルによると、LA-2は「ボーカルなどのレガートな特徴をもつパートに有効」といったことが書いてあり、おそらくattackが最遅設定です。Silverは「3タイプの中でattack timeが最速で、ドラムやパーカッションのようなトランジェントが目立つパートに有効」と。最後にGrayは「程良いattack timeで、平均的な特徴を持つ」といった具合で、なかなか抽象的な説明に終始しています。プラグインに限らず音楽機材にありがちな「とにかく触って確かめて、あとはお好みで。」という一種のおおらかさを感じます。

つまり、La-2 < Gray < Silver の順番でattackが早くなります。releaseへの言及はありませんが、マニュアルの書かれ方からすると、レガートに合うLa-2がもっとも遅く、トランジェントを掴むSilverは比較的早めの設定だと思われます。

余談ですが、公式マニュアルの最後にはLA-2A実機開発の背景がそれなりに長文で触れられており、どうやらミサイル開発で研究された光学センサーの技術が転用されているそうです。インターネットの技術も元は軍事用って言いますもんね。

Teletronix® LA-2A Tube Compressor

LA-2A Tube Compressor

こちらは2023年に突然UADから無料配布された後発モデルです。見た目はSilverに似ていますが、よく見るとMIXHFがありません。それ以外には特に違いはなさそうなので、単にSilverのlite版という位置付けかと思います。

そのような位置付けであれば、無料配布は今後もあると思います。これから購入を考えている方は、Gray,Silver,LA-2の3モデルセットがおすすめです。iZotopeがよくやる「lite版を無料配布して、アップグレードに誘導」みたいなことをUADもそのうちやるのかもしれませんね。

▪️活用シーン

ダイナミクスのあまり大きくないVoなどのパートに対して、常にコンプレッションが薄くかかるくらいで使用するのが良さそうです。
まずはGrayから試して、もっと緩くかけたければLA-2、強めにかけたければSilverをセレクトするようなイメージでしょうか。慣れてくれば入力ソースによって選んでいけばよいと思います。
1176のようなFETコンプを試した後にLA-2Aをかけると、ごくごく僅かな変化ということになりますので、あくまで「水面を整える」ようなイメージで私は使っています。波形の尖っているところを、緩く丸く削ってくれる優れものです。

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