見出し画像

アンケートクエスト

Twitterで進行中のアンケート機能を使ったテキストアドベンチャーっぽいお遊びです。皆さんの意見を取り入れ、ほぼ即興で物語をつむいでいます。イラストもフォロワーの皆さんの作品です。随時募集していますので、どうぞお寄せ下さい。


「あちい……」
トラップはそう言うなり、その場に倒れた。
シルバーリーブは記録的な猛暑。今日は郵便配達のアルバイトの日だからね。そりゃ倒れるわ。

画像1

バイトで一日中外を走りまわってたんだもんね。
ごくろうさま!!
わたしは井戸からくんだばかりの冷たーい水をコップに入れた。
それをトラップに持っていこうとした時、
ひょいとコップを取られた。

画像3


そして、その人ったら、わたしの目の前でゴクゴクと水を飲み干してしまった!!
その人とは?

画像2

「オーシ!」
彼はおいしそうに水を飲み干すと、
「ごるあぁ!おれ様の水をよくも!!」
飛びかかってきたトラップと組んずほぐれつ。
こんなに暑いっていうのによくやる。
そこにクレイがやってきた。
「オーシ、珍しいな。うちに来るなんて」
「ふん、なんだなんだ。さぞかし水も滴るいい男なんだろうな?」

トラップはクレイが手に持っていたコップを取り上げ、中の水をオーシの頭からぶっかけてしまった。
「ふっふふふ……」
こ、こわっ!
ガマガエルがアンコたっぷりのお団子食べたみたいな顔。
オーシはブルブルッと勢いよく水を払った。
「見て、驚くなよ!」
オーシが連れてきた客人とは……?

いつから庭に停められていたのか、立派な馬車から綺麗なドレスの女の子が姿をあらわした。
「アンジェリカ王女!!」
「お仲間の皆さん、お久しぶりですわー!」
彼女は真っ先にわたしに抱きついてきた。
なんと、オーシは最近リーザ国とも取引をしてるらしい。
彼女の話は何についてだろう?

画像4

王女の顔がまっ赤になり、近くにいたクレイの背中をバスンバスン何回も叩いた。
「い、いてて……!」
かわいそうなクレイ!

画像12


王女は顔を真っ赤にしたまま言い放った。
「わかりましたわ!そんなに言うなら言います!!」
誰も聞いてない
「私、初恋をしてしまったんですのー!!」
さて、それは?

画像9

「騎士?」
「そういや……イーデンて騎士もいたよなぁ?まさか……!?」
 トラップが言うと、王女は頭をブンブン左右に振った。
「まさか!違いますわ。ルーク様は裏表のない立派な騎士です!」
「そんで?何回目の初恋なんだよ、それ」
 んもう、トラップったらそんな言い方したらアンジェリカ王女がかわいそうじゃないの!
 まぁ、とにかくそのルーク様がいるリーザ国へ行くことになった。
 道中、何があったか。

わたしとルーミィ、シロちゃんは王女の馬車に乗せてもらった。
残る四人はヒポちゃんで、一路リーザ国へ。
途中、森の中の街道で親子が座りこんでいるのを見つけた。
三十歳くらいのお母さんと三歳くらいの男の子だ。
二人とも困り果てたようす。
山賊にやられ、食料やお金を盗られたんだという。

困っている親子を見て、わたしたちがどうしようと相談する間もなく、
「この方達に食料とお金を差し上げて!」
アンジェリカ王女はテキパキと従者に言った。
「では、近くの町まで送りましょう」
クレイはそう言うとヒポちゃんに親子を乗せた。

画像11


「山賊のことは国に戻ってから通報しますわ」
と、アンジェリカ王女。
すごいなぁ!ちょっと会わないうちにすごーくしっかりした王女様になってる。
さて、リーザ国に到着。
リーザ城の客室に通された。

客室に通された後、王女がヒョコッと顔を出した。
「パステル、ルーミィ、お風呂入らない?」
「わーい!うれしい!」
「わーい!うえしー!」
高い天井、白い柱、リーザ国が一望できる広い展望風呂!
きれいなお湯に浸かると、身体の芯まで疲れがとれていく気がした。
「きおちいーおー!」
ルーミィも喜んで、お湯をパシャパシャ。
「きゃー!負けないですわよー!」
王女もパシャパシャ。
楽しそうだなぁ!!

画像6


「ところで、好きな人って……?」
ゆっくりお湯に浸かって聞いてみた。
王女は桜色のほっぺをさらに赤く染めてモジモジ。
美しい騎士さんとはどんな人?

「え?普通の冒険者?騎士っていったら、どこかの国の騎士団の団員ってイメージだけど」
「そうなんですの。私もそう思ったんですけど、冒険者の職業にあるんじゃありません?」
「そうかな……でも、直接聞かなかったんですか?」
「だって、まだお話したことないんですものー!」
「えええーーー!?」
「パステルなら冒険者のことに詳しいかもって思ったんですの」

なんと、アンジェリカ王女は城下町を馬車で通った時、美しい騎士を見かけたという。
従者に聞きにいかせたところ、彼は「冒険者で騎士だ」と確かに答えたそうだ。

画像7

「なんだよ、そりゃ」と、トラップ。
「うーん、じゃあ王女の特権をいかせば?」とキットン。

キ「一石二鳥のいいアイデアがあります!道中、親子を襲ったという山賊を捕まえるクエストを発表してはどうです?」
ト「で、冒険者の騎士を募集するわけか」
パ「それって、なんか不自然じゃない?騎士だけだなんて」
ト「ぶぁーっか。王女が出すおふれなんだ。不自然、上等だろ!」
ア「なんですって?もしかして、馬鹿にされてます?私!!」
ト「気のせい、気のせい!」
というわけで、山賊退治の冒険者の騎士募集という世にも奇妙なクエストを募集することとなった。
待ち構えているアンジェリカ王女は、集まった冒険者たちを見て、わたしの腕をギューッとつかんだ。
「え? いるの?」
「いますいます!!」

画像8

漆黒のツンツンヘアー。
背が高く手足も長く、どこかを見たまま立っていた。
黒い細身のアーマーを装備し、長剣は背中に背負っている。
目はびっくりするほど澄んだ緑。神秘的な風貌だった。
クレイに話してもらいたかったけど、どこに行ったか見当たらない。
王女は絶対嫌だそうだ。誰が話しかける?

画像5

うっそぉー!! よりによってわたしが話しかけるってことに。
心臓バクバク。
いやぁ、絶対変な人よね。
コソコソと近寄っては何歩か後ずさるんだもん。
振り返ってみると、王女たちが「がんばって!」って声援送ってくれてる。
勇気をふりしぼって聞いてみた。

「ルークさん、す、すみません!ちょっとお話を聞きたいって人がいまして。来ていただけませんか?」
彼は神秘的な緑の目でわたしを見つめた。
ふわぁー、綺麗な目!!
吸いこまれそう。
彼は表情ひとつ変えず、無言のままついてきてくれた。
誰が最初に話しかけた?

「おいーちゃん、こんちゃー!!」
恥ずかしがり屋のルーミィにしては珍しく、一番最初に出てきてぺこんと頭を下げた。
そのかわいらしいこと!!
だいじょぶかな?と、ルークを見上げる。
なんと!ちょっとだけ微笑んでるじゃないの。
ルークはその場にしゃがむと、
「こんにちは」と、ルーミィに挨拶してくれた。

すっごいいい人なんだ!!
私達はすっかりルークのファンになってしまった。
「あ、あの!こ、こ、これから山賊の討伐に行くクエストがあるんですの!」
突然アンジェリカ王女が大きな声で言った。
あんまり大きな声だったから、自分でびっくりしてる。
かあいいなぁ。

「山賊の討伐はなかなか危険だから、パステルたちは待っててくれ」
いったいどこにいたのかクレイが進み出た。

パ「え?でも、わたしたちも行くよ?」
ク「いや、パステルも行くとなったら、王女も必ず行くって言い出す。ただでさえ危ないのに」
ト「んだんだ。ハンデはごめんだぜ」
口は悪いけど、トラップだってアンジェリカ王女のことを心配してるんだろう。

結局、クレイとトラップが討伐隊に加わることに。
もちろん、ルークも一緒だ。
ク「じゃあ、まだどこにも所属してないんですか?」
ル「ああ、少しレベルを上げてからロンザ騎士団に入隊しようと思ってる」
ク「なるほど!」
ト「おい、集合だってさ」
腕に覚えのありそうな冒険者たちが集まっている。

クレイ、トラップ、ルークは討伐隊の一員として加わることになった。
ア「だいじょうぶかしら……。心配ですわ!」
王女は両手をギュッと握って、唇を噛みしめた。
すると、その思いが伝わったのか、ルークがふとこっちを振り返った。

アンジェリカ王女ったら、わたしの後ろに隠れちゃった。
すると……ルークはわたしのことをすっごく優しい目で見つめ、小さくうなずいた。
まるで、「行ってきます」と言ってるようだ。
ドキドキ!!
ってか、ダメじゃん。
「なに隠れてるんですか!!」
「だ、だってー!!」
「ほら、行っちゃいますよ!」
わたしたちがわたわたやってる間に、討伐隊は出発してしまった。

画像10


【クレイの手記】

山賊の居場所はわかっていた。
リーザ国とロンザ国の国境近い山林で、自然の要塞のようになっているという。
前々から問題になっていたんだそうで、いい機会だから討伐しようということになったそうだ。
ルークは無口だが、いい奴だというのはすぐわかった。
トラップも気に入ったようだった。


山賊たちの立て籠もっているアジトからほど近い場所にキャンプを設営することになった。冒険者の一部はキャンプ気分でたき火をかこんで楽しそうにしている。

ト「ちぇ、俺っちがサクッと斥候いってやるつもりだったのによ」
ク「そうだな。こんなところに設営したらあっちにバレるかもしれないな」
ル「アジトがわかってるなら、今夜中にも奇襲したほうがいい」

こっちの思いとは裏腹に、キャンプ内ではリーザ国の騎士団のリーダーたちがあーでもないこーでもないと作戦を練っていた。
俺の予感が的中。
ルークが提案した「奇襲」を逆にかけられてしまった!!
いきなり大きな太鼓の音、ワアワアと大声が聞こえたかと思うと、テントに弓矢が飛んできた!


ク「どうする?迎え撃つか?」
ト「いや、アジトのほうに行こうぜ!がら空きだろ」
ク「そうだな。それも一理ある」
俺とトラップが話していると、ルークが首を振った。
「いや、いったんは森に潜んで様子を見たほうがいい。敵の数もわからないし、もしアジトにもまだいたら、最悪挟み撃ちになる」
ト「言えてる」
珍しくトラップも素直に認めた。
というわけで、他の冒険者やリーザの騎士達にも言って、森に逃げこむことにした。
しかし、森は奴らのほうが地の利がある。
圧倒的に不利だ。
ル「敵を知らなくては。数やどれくらいの力を持っているかなど」
ト「おし、じゃあ、ちょっくら俺が探ってくるぜ」
トラップはそう言うと、まるで猫のような素早さで来た道を戻っていった。

しばらくして、トラップが信じられないという顔で戻ってきた。
ク「わかったか?」
ト「これ、見ろよ」
彼が見せたのは矢……だったが、先は鋭い矢尻なんかではなく、ぺこぺこした吸盤だった。
ク「なんだ、これ。オモチャか!」
ト「っつうか、山賊ってのがあいつらでさ」
トラップは後ろを指さした。
そこに、小さくてむっくりした影が五、六人……。
俺はロングソードを構えた。
ルークも身がまえる。

トラップは手を振り、首も左右に振った。
木の陰から出てきたのは……ずんぐりむっくりしたクマそっくりのモンスター達だった。
顔はクマそっくりだが、おんぼろのアーマーを着こみ、木のショートソードや弓も持っている。めちゃくちゃかわいいやつらだ。

画像13

ト「やめろって!!」
トラップの手を引っ張ったり、クルクル回ったり、じゃれている。
ク「うそ、そいつらが山賊……なわけ? もしかして」
ト「そうらしい」
そういえば、山賊にかばんと盗られたとは言っていたが、あの親子、相手がどういう山賊だったかは言ってなかったっけ。

ルークはここで別れ、このまま冒険に行くという。


「そうか……それは残念だな。夕飯でもって思ったんだが」
俺がそう言うと、トラップがぐいっと前に出た。
「んだんだ。もう夕方になるしさ。晩飯くらい食おうぜ!」
 夕方?いや、まだまだ日は高いぞ……と思ったが、
ト(このまま別れちゃ、あの姫さんがかわいそうだろ!?)
ク(たしかに。よく気が付いたな)
ト(ふん、おめえが気づかなさすぎなんだっつうの。姫さんから、ちゃんとせしめねぇとなぁ!)
ク(え?何を?)
ト(そりゃあ、礼金っつーやつをな)
やっぱり、そんなことを考えていたのか。
ルークは素直にリーザ国へ戻ってくれることに。

来た道をまっすぐ歩いていると、森のどこかからか、叫び声が聞こえてきた。
「どうした?」
「どこだ?」
討伐隊の全員が騒ぎ始めた。
もちろん、俺たち三人も声のするほうに走っていった。

なんということだ。
木の枝にぶら下がって、叫んでいたのはアンジェリカ王女。
なぜ薄オレンジ色のドレスで木登りなんてしたんだろうか?
でも、その理由はすぐわかった。
木の下に大きな水たまりと見まがうジェリースライムがいたからだ!!
走り寄ろうと思った時、全力でトラップに止められた。
「な、なんだよ!」
「ほれ、見てみそ」
「え?」
見れば……ルークが誰よりも早く走り寄り、ジェリースライムにロングソードで斬りつけ始めたではないか。
「ちょ、ちょっと! 二人とも何してるの? 手伝ってあげなきゃ」
 振り返ると、そこにはパステルが。
「まぁまぁ、黙って見てようぜ」
トラップはパステルの腕もつかんだ。
さすがは騎士。ジェリースライムを倒し、王女に手を差し伸べた。
王女ははずかしがって、木の枝にしがみついたままイヤイヤをしている。
しかし、それも時間の問題で。
腕の力が抜けたのか、木の下に落下。
ルークがしっかりと受け止めた!!
パステルとトラップ、そして俺の三人はハイタッチして喜んだ。
王女はまっ赤になって消えてなくなりそうだ。
ルークはにこやかにお姫様抱っこ(まさしく)したままこっちに歩いてくるのだった。

【パステルの回想】

それからどうなったかって??
なんと、ルークはリーザ国のお抱え騎士になれたんだよね!
アンジェリカ王女の喜ぶこと!!
毎日、エレキテルピジョンが「恋バナ」の書かれた手紙を運んでくる。
末永く幸せでありますように!!

                おしまい



イラスト サピさん、まりもさん、ろなさん、やっぽさん、Snow peachさん、谷子さん、ぺけさん




よかったらMP補充、よろしくおねがいします。無理のない範囲で!! そのMPで次の執筆がんばります。