官公省庁の調査:通信利用動向調査

①概要

・一般統計調査
・消費者目線の「世帯調査」と企業目線の「企業調査」からなる。いずれも無作為抽出法による標本調査
性別・年齢別・地域別(世帯)/産業別・規模別(企業)の利用状況を比較できる点、利用頻度・利用場所などの利用スタイル、利用理由・利用目的など利用の背景まで深掘りできる点が強み
・通信の利用状況は、契約数等、通信事業者の実績からも推し量れる。通信事業者には総務省への届出/登録、報告義務があるので、こうしたデータが比較的充実している(例:「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データ」「通信量からみた我が国の音声通信利用状況」)。多少時間をかけても目的に合ったデータを選ぶことが大切
・「政府統計の総合窓口 e-Stat」ではCSV形式でデータを公表している→加工する際はExcel形式で保存
報告書(PDF)は一部設問を除き、無回答を除いてグラフを作成e-Stat(CSV)は基本的に無回答を含むので、両者で構成比が若干異なる。数値を引用する前に、nの数字、無回答欄の有無を確認するといい

②設立背景

1990年~
総務省「情報通信統計データベース」だと平成12年(2000年)調査まで、総務省統計局「政府統計の総合窓口e-Stat」だと平成8年(1996年)調査までさかのぼれる

③管轄

総務省
(民間委託先:令和3年調査は輿論科学協会)

④調査時期

・毎年実施
・8月中旬~下旬に調査票配布
→8月31日現在で記入※
→9月下旬に調査票回収
※企業調査の経理情報のみ、調査年の前年度1年間、あるいは調査時点に近い決算日までの1年間について記入

⑤発表時期

調査年の翌年5月頃に公表(調査月から約9か月遅れ
※8月31日時点の状況を聞く設問もあれば、前年8月31日~当年8月31日の1年間について聞く設問もある。それぞれタイムラグに注意

⑥調査対象

<世帯調査>
・調査実施年4月1日現在で満20歳以上の世帯主がいる世帯、約5,300万世帯=母集団。世帯構成員は満6歳未満の構成員、同居していない構成員を除く
・全国を都道府県・都市規模で層化し、調査地点約220地点を抽出。ここから住民基本台帳を使って約4万0,600世帯を抽出=標本
・令和3年調査の有効回収率は44.0%←報告義務のない一般統計調査の中でも低い方
・回収率が都道府県、世帯主・世帯構成員の年齢で偏っているため、母集団推定する際に比重調整を行う

<企業調査>
・日本標準産業分類の①建設業、②製造業、③情報通信業、④運輸業・郵便業、⑤卸売業・小売業、⑥金融業・保険業、⑦不動産業・物品賃貸業、⑧サービス業・その他(「公務」「分類不能の産業」は除く)に属し、常用雇用者が100人以上の企業、約4万6,000企業=母集団
・最新の「事業所母集団データベース(ビジネスレジスター)」を利用。常用雇用者規模で層化の上、業種別に約6,000企業を系統抽出=標本
・令和3年調査の有効回収率は46.8%
・回収率が産業・従業者規模で偏っているため、母集団推定する際に比重調整を行う

※有効回収率(%)=有効回答数÷(発送数-無効数)×100
※報告書内、「n=●」は各設問の比重調整前の集計数

⑦調査項目

<世帯調査>
世帯全体
・情報通信機器の保有状況
・インターネットの接続状況
・固定電話の利用状況
・テレビを利用したインターネット上のサービスの利用状況
・新4K8K衛星放送の視聴環境
・世帯の構成
※情報通信機器:固定電話、FAX、テレビ、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、ウェアラブル端末、インターネットに接続できるゲーム機、インターネットに接続できる携帯型音楽プレイヤー、インターネットに接続できる家電、ラジオ(ワイドFM対応/非対応)
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世帯構成員
・過去1年間のインターネットの利用状況
…利用の有無、使用する機器、利用頻度、利用場所
・インターネットの利用目的、用途
・インターネットを利用していて感じる不安
・セキュリティ対策の実施状況
・個人のICTスキル
・モバイルサービスの利用状況
…端末の保有状況、携帯事業者の種類、端末の分割支払金、通信料金
・テレワークの実施状況
※料金は消費税抜き

<企業調査>
・インターネットの接続状況
・インターネットによる情報発信(ホームページ)
・クラウドコンピューティングの利用状況
…利用の有無、利用しているサービスの種類、利用理由、効果、利用しない理由
・テレワークの導入状況
…導入の有無、導入形態、過去1年間にテレワークしたことがある従業員の割合、導入目的、効果、導入しない理由、テレワーク普及に必要な要素
・情報通信ネットワークのセキュリティ対策
…過去1年間に受けた被害、対策の種類
・ICT人材の育成・確保
・データの収集・利活用
…導入の有無、利用目的、構成機器、効果、接続している回線の種類、導入しない理由
・個人データの利活用状況
…活用の有無、活用場面、課題
・企業の概要

※令和3年調査の調査項目

⑧調査方法

・世帯調査は層化2段抽出法、企業調査は層化1段抽出法で、調査世帯および調査企業を抽出(詳細は⑥調査対象参照)
・調査票を郵送配布、回収は郵送またはオンライン
・オンライン回答する場合、世帯はWebサイトからダウンロードした電子調査票に記入、電子メールで送付。企業は政府統計共同利用システム内で回答

⑨活用

情報通信行政のための基礎資料

⑩その他メモ

・世帯調査では、期限内に調査票を返送すると500円相当の薄謝(QUOカード、図書カード等)がもらえる
・回収率向上のため、平成28~30年調査は詳細版・簡易版2種類の調査票で調査

⑪参考資料

・総務省統計委員会担当室"調査票の回収率・有効回答率の状況について"(2018年12月13日)https://www.soumu.go.jp/main_content/000589501.pdf
・総務省"通信量からみた我が国の音声通信利用状況(年度)" https://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/eidsystem/market01_05_01.html
・総務省"電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和3年度第3四半期(12月末))"(2022年3月18日) https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban04_02000205.html
・総務省総合通信基盤局"電気通信事業法について"(2018年10月) https://www.soumu.go.jp/main_content/000580688.pdf
・総務省統計委員会担当室"統計棚卸しの概要について"(2018年11月14日) https://www.soumu.go.jp/main_content/000585022.pdf
・総務省"通信利用動向調査 報道発表資料"「情報通信統計データベース」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05a.html
・総務省統計局"通信利用動向調査"「政府統計の総合窓口 e-Stat」https://www.e-stat.go.jp/surveyplan/p00200356001
・日経リサーチ"母集団" https://www.nikkei-r.co.jp/glossary/id=1662