官公省庁の調査:小売物価統計調査(動向編/構造編)
①概要
・基幹統計調査
・標本調査。価格調査は有意抽出。家賃調査は無作為抽出
・1952年~、消費者物価指数(CPI)の基礎資料。そのため、基本的に消費者物価指数の基準年(西暦年の末尾が0か5の年)が改定される5年ごとに調査品目を改定。この際、参照するのが世帯の収支を調査する家計調査
※消費と物価、関心は異なるが、家計調査と小売物価統計調査は何かと連動する。家計調査の動向は要チェック
・銘柄は頻繁に変更される
・2013年~、「動向編」と「構造編」の2種類実施。「動向編」は月単位の価格変動を、「構造編」は価格の地域差を明らかにする
・いつ銘柄改正されたのか、単位は何か(調査価格は1袋当たりの値段か、1kg当たりの値段か…)、気を配るべきポイントが多い。調査結果のExcel表にも上記情報が記載されているが、目的のデータを見る前に、付属資料の「基本銘柄の新旧対照表」等で前回調査からの変更箇所を確認しておいた方がいい。過去のデータと比較する際は、各時点のExcelではなく、時系列表をダウンロードしたほうが、間違いが少ない
・調査価格は税込み価格
②設立背景
・1950年6月~現在でいう「動向編」を実施
・物価構造については1967年から5年周期で「全国物価統計調査」を実施してきたが、5年周期では消費・流通構造の変化に追いつけないということで、2013年1月、「小売物価統計調査」に1年周期で実施する「構造編」を新設。これを機に「全国物価統計調査」を中止(最終調査年:2007年)→参考:" 小売物価統計調査の変更及び全国物価統計調査の中止の概要"https://www.stat.go.jp/info/kenkyu/cpi/2011/pdf/2-1.pdf
③管轄
総務省統計局
④調査時期
<動向編>
価格調査:
食料・家事用消耗品などの「A品目」、被服・家電製品などの「B品目」、教養娯楽用品などの「C品目」、ガソリンなどの「S品目」=以上調査員が調査する品目は、毎月12日を含む週の水曜日・木曜日・金曜日から1日を選んで調査。
水道料・PTA会費などの「D品目」=都道府県職員が調査する品目、電気代・通信料などの「E品目」=総務省職員が調査する品目は、毎月12日を含む週の金曜日に調査
※一部、例外あり
家賃調査:
民営家賃は、毎月12日を含む週の水曜日・木曜日・金曜日から1日を選んで調査。公営家賃は、毎月12日を含む週の金曜日に調査
ーーー
<構造編>…価格調査のみ実施
奇数月の12日を含む週の水曜日・木曜日・金曜日から1日を選んで調査
⑤発表時期
<動向編>
東京都区部の主要品目・全国統一価格品目の価格:
調査月の26日を含む週の金曜日
=調査実施日から約2週間後
主要品目の都市別小売価格
(※都道府県庁所在市+人口15万以上の市):
調査月の翌月の19日を含む週の金曜日
=調査実施日から約1か月と1週間後
※3月分公表時には年平均価格も併せて公表
ーーー
<構造編>
調査年の翌年6月までに公表
※消費者物価指数の基準年はさらに3か月遅れて翌年9月頃に公表
⑥調査対象
<動向編>
価格調査:
全国の167市町村(都道府県庁所在地+α)を調査市町村として選定
→さらに576の「価格調査地区」に分割※
→「価格調査地区」内で、調査品目の販売数量が多い/従業者規模等が大きい店舗から順に約2万8,000の店舗・事業所を選定
※小売物価統計調査では、調査品目がA品目、B品目、C品目…と分類されている。A品目=「主として消費者が居住地区近辺で購入する品目で、地区間で価格差がみられる品目」(例:食料、家事用消耗品)の数が最も多く、「価格調査地区」はこのA品目の取集数に合わせて分割されている
家賃調査:
全国の167市町村(都道府県庁所在地+α)を調査市町村として選定
→多段抽出法の一種、確率比例抽出法で、調査市町村内の国勢調査調査区を抽出。これを「家賃調査地区」(計1,233地区)とする
→「家賃調査地区」内で民営借家を賃貸している事業所、約7,000事業所を選定。地区内の全民営借家世帯、約2万8,000世帯の家賃を調査
ーーー
<構造編>
動向編の調査市町村167市町村以外の91市全域を「価格調査地区」とし、調査品目の販売数量が多い/従業者規模等が大きい店舗から順に約3,000店舗を選定
※動向編と構造編、合わせて人口の約半分をカバーするよう調査市町村を選定
※いずれも2022年1月現在
⑦調査項目
<動向編>2022年5月調査の「調査品目及び基本銘柄」の「品名」欄をカウントすると、674
<構造編>地域間で価格差があり、かつ、家計消費上重要な57品目58銘柄(2022年1月現在)
・品目=商品・サービスの名前(例:ぶどう)。家計消費上重要な品目(家計調査で、家計の消費支出総額の1万分の1以上を支出している品目)から「調査品目」を選定
・銘柄=商品・サービスの属性(例:デラウェア)。うち品質・性能・特性を一定に規定したものを「基本銘柄」という(基本銘柄≒細かな種類・条件)。「基本銘柄」には、代表性があり、継続的に、全国に出回っていて、調査員に分かりやすい銘柄を選定
・基本銘柄の出回り状況は地域によって異なる。基本銘柄が出回っていない地域では調査したくても調査できないので、代わりの銘柄(市町村銘柄)を設定する→全国で銘柄が統一されていないため、小売物価統計調査では「全国平均価格」を算出しない
・そうした地域差を考慮して、動向編では調査市町村の人口等を基準に、品目を無印、①、②、③、④、⑤の6つに区分している(例:①=人口5万以上の調査市において調査する品目・銘柄)
・動向編ではさらに、品目ごとの購入スタイルの違い、店舗間の価格差等を考慮して、品目をA、B、C、D、E、Sの6つに区分している(例:A品目=主として消費者が居住地区近辺で購入する品目で、地区間で価格差がみられる品目、B品目=主として消費者が各市町村の代表的な商業集積地、大型店舗等で購入する品目で、店舗間で価格差がみられる品目、C品目=地区間又は店舗間での価格差が比較的小さい品目)
・構造編では品目をa、bの2つに区分している(a品目=主として消費者が居住地区近辺で購入する品目で、構造編として調査する品目、b品目=主として消費者が各市町村の代表的な商業集積地、大型店舗等で購入する品目で、構造編として調査する品目)
※品目の区分に関しては総務省統計局"小売物価統計調査(動向編)について(2022年1月現在)"の「4 調査品目」 https://www.stat.go.jp/data/kouri/doukou/1.html#a10と、総務省統計局"9 調査品目は調査市町村の規模等によって異なるのですか?" https://www.stat.go.jp/data/kouri/handbook/1-09.htmlで若干異なる。本記事は前者を参照
⑧調査方法
価格調査(動向編・構造編共通):
調査員が「調査地区」内の店舗に出向き、その店舗の代表者から商品の小売価格・サービス料金等を聞き取り。結果をタブレット端末に入力して総務省統計局に送信。総務省統計局と都道府県の担当者がデータを審査する。前月調査の下限金額~上限金額の範囲外の金額が報告された場合は、調査員に確認し、適宜修正を行う
家賃調査(動向編のみ):
調査員が「家賃調査地区」内の事業所に出向き、事業主から家賃・延べ面積等を聞き取り。結果をタブレット端末に入力して総務省統計局に送信。総務省統計局と都道府県の担当者がデータを審査する
・調査価格は実際に消費者に販売する際の価格(定価×、正札の価格×、短期間の特売価格×)で、税込み価格
・銘柄の基準に合えば、プライベートブランドの価格も調査する
⑨活用
消費者物価指数(CPI)の基礎資料
⑩その他メモ
・注記(銘柄の詳細、銘柄改定時期等)を書く際にミスしやすい
⑪参考資料
・総務省統計局"小売物価統計調査" https://www.stat.go.jp/data/kouri/index.html
・総務省統計局"消費者物価指数に関するQ&A(回答)" https://www.stat.go.jp/data/cpi/4-1.htm
・日経リサーチ"多段抽出" https://www.nikkei-r.co.jp/glossary/id=1642