官公省庁の調査:賃金構造基本統計調査

①概要

基幹統計調査
・層化2段抽出法による標本調査
・産業別・企業規模別・地域別・労働者の属性別の「賃金」(6月分の所定内給与額)を知るための調査。最低賃金を決める際の参考資料
2020年調査から調査票が2種類から1種類に。調査項目は減ったが、残った項目については、区分や単位が細かくなった
<廃止された調査項目>
☆「新規学卒者の初任給額
【2019年調査以前】事業所に聞いた新規学卒者の「所定内給与額-通勤手当」の金額
【2020年調査以降】サンプルに選ばれた一般労働者のうち、新規学卒者に該当する人の「所定内給与額」←通勤手当を含む!
☆「労働者の種類(生産労働者/管理・事務・技術労働者)」
☆「通勤手当」「精皆勤手当」「家族手当」
⇒長期比較する際は遡及集計表を参照
・いわゆる「統計不正」で問題になった調査の一つ。2020年8月~2021年7月の労災保険年金給付額(最低/最高限度額)に一部誤り→過少給付されていた人に追加給付

②設立背景

1948年から実施(※当時は「個人別賃金調査」)

③管轄

厚生労働省
(委託先:集計は独立行政法人統計センター)

④調査時期

6月分の賃金について、毎年7月に調査を実施

⑤発表時期

調査年から1年遅れ

⑥調査対象

母集団は(一部地域を除く)日本全国の、日本標準産業分類の大分類計16産業に属する、常用労働者5人以上の事業所および常用労働者10人以上の公営事業所=約150万事業所。また、そこで雇用される労働者=約4,300万人
<対象産業>
①鉱業,採石業,砂利採取業、②建設業、③製造業、④電気・ガス・熱供給・水道業、⑤情報通信業、⑥運輸業,郵便業、⑦卸売業,小売業、⑧金融業,保険業、⑨不動産業,物品賃貸業、⑩学術研究,専門・技術サービス業、⑪宿泊業,飲食サービス業、⑫生活関連サービス業,娯楽業(家事サービス業を除く)、⑬教育,学習支援業、⑭医療,福祉、⑮複合サービス事業、⑯サービス業(他に分類されないもの)(外国公務を除く)
<標本の抽出方法>
都道府県別、産業別、事業所規模別に事業所を層化
→事業所は都道府県別、産業別、事業所規模別に設定された抽出率で無作為抽出=約8万事業所
→100人以上の事業所で雇用する労働者は産業別、事業所規模別に設定された抽出率で、100人未満の事業所で雇用する労働者は事業所規模別に設定された抽出率で無作為抽出=計約170万人

⑦調査項目

<事業所>
名称、所在地、法人番号、主要な生産品の名称、事業の内容、事業所の雇用形態別労働者数、企業全体の常用労働者数
<労働者>
性別、雇用形態(正社員・正職員か否か)、就業形態(一般労働者か短時間労働者か)、最終学歴、新規学卒者に該当するか否か、年齢、勤続年数、役職、職種、経験年数、実労働日数、所定内実労働時間数、超過実労働時間数、きまって支給する現金給与額、超過労働給与額、昨年一年間の賞与、期末手当等特別給与額、在留資格
―――
【重要用語】
常用労働者=一般労働者+短時間労働者
きまって支給する現金給与額=基本給+超過労働給与額+通勤手当等その他各種手当
※所得税・社会保険料等を控除する前の金額(手取り額×)
超過労働給与額=時間外勤務手当(残業代)+深夜勤務手当+休日出勤手当+宿日直手当+交替手当
所定内給与額=決まって支給する現金給与額―超過労働給与額

⑧調査方法

・層化2段抽出法。1段目で事業所、2段目で労働者を抽出
・事業所抽出に使用する標本フレーム(母集団を網羅するリスト)は事業所母集団データベース(ビジネスレジスター)
・労働者は上で選ばれた事業所の労働者名簿・賃金台帳等を使用して抽出
・調査票は郵送で配布。回収は①紙の調査票を郵送、②光ディスクを郵送、③オンラインで回答の3通り
回収率低下を背景に、2020年調査から復元倍率の算出方法を変更。変更前は抽出率の逆数を掛けていたが、変更後は層ごと母集団に占める有効回答数の割合の逆数を掛けて復元

⑨活用

最低賃金、労災保険の給付額算定の基礎資料 ほか

⑩その他メモ

・固定残業制の場合、残業時間・残業代ともにゼロ扱いにし、きまって支給する現金給与額に残業代を含める
・きまって支給する現金給与額、所定内給与額に「通勤手当」が含まれる点を批判する人もいる
最低賃金の対象=所定内給与のうち通勤手当・精皆勤手当・家族手当を除いた金額

⑪参考資料

・厚生労働省"賃金構造基本統計調査" https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
・厚生労働省"賃金構造基本統計調査の復元方法の見直しについて" https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10701000-Daijinkanboutoukeijouhoubu-Kikakuka/0000170868.pdf
・厚生労働省"賃金(賃金引上げ、労働生産性向上)" https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/chingin/index.html