官公省庁の調査:経済センサス(基礎調査/活動調査)
①概要
・「経済センサス」は基幹統計調査なので、
①回答拒否・虚偽報告禁止
②かたり調査(紛らわしい調査で個人情報を聞き出す詐欺行為)禁止
③(規模が大きいので)調査事務の一部を地方公共団体に委託可能
・ census=国勢調査から分かる通り、全数調査。産業構造を明らかにするだけでなく、他の統計調査の母集団情報(ビジネスレジスター等)を整理する目的がある
・基礎調査と活動調査の2種類ある。一介の研究員としてよく使うのは活動調査
・5年に1回実施。経済センサス(活動調査)がない年は総務省・経済産業省「経済構造実態調査」が実施されているのでこちらを代用
※経済構造実態調査は全数調査ではないが、売上高ベースで約8割をカバー。こちらも基幹統計
② 設立背景
課題①:各省庁が実施する産業統計調査の調査時期や周期がバラバラで、結果を統合できない=国全体の産業構造が分からない
課題②:成長著しいサービス分野の統計が不足
・以上を踏まえて、あらゆる産業について、同一時期に、網羅的に調査を実施すべく、経済関連の大規模統計調査を統廃合、簡素化・合理化
・基礎調査は2009年7月~、活動調査は2012年2月~
※統計調査の統廃合については様々な意見がある。この点、個人的に検討していきたい
③ 管轄
総務省・経済産業省
(民間委託先:三菱総合研究所、独立行政法人統計センター、サーベイリサーチセンター、日経リサーチ)
④ 調査時期
<基礎調査>
2009年、2014年、2019年…と5年周期で実施。「令和元年経済センサス(基礎調査)」の甲調査は令和元年6月1日~令和2年3月31日(10か月間)に実施。乙調査は活動調査実施年を除き、毎年6月1日現在で実施
<活動調査>
2012年、2016年、2021年…と5年周期で実施。「令和3年経済センサス(活動調査)」の期日は令和3年6月1日(売上額等は令和2年の1年間の値)
⑤ 発表時期
<基礎調査>
「●年経済センサス(基礎調査)」→●年の翌年6月末ごろに速報公表、11~12月ごろから確報公表
<活動調査>
「●年経済センサス(活動調査)」→●年の翌年5月末ごろに速報公表、年末あたりから確報公表
⑥ 調査対象
※基礎調査・活動調査共通
<甲調査>
日本標準産業分類の産業に属する事業所のうち、「国・地方公共団体の事業所」「農業、林業に属する事業所で個人の経営に係るもの」「漁業に属する事業所で個人の経営に係るもの」「生活関連サービス業、娯楽業のうち、その他の生活関連サービス業(家事サービス業に限る)に属する事業所」「サービス業(他に分類されないもの)のうち、外国公務に属する事業所」を除く、全国の全事業所
<乙調査>
国・地方公共団体の事業所
⑦ 調査項目
<基礎調査(甲調査)>
既存事業所の場合:名称、所在地、活動状態
新規事業所の場合:名称、電話番号、所在地、活動状態、従業者数、主な事業の内容、業態、消費税の税込み記入・税抜き記入の別、事業所の年間総売上金額、開設時期、経営組織、法人番号、単独事業所・本所・支所の別、本所・本社・本店の名称、本所・本社・本店の電話番号、本所・本社・本店の所在地、組織全体の主な事業の内容、組織全体の年間総売上金額、資本金等の額
<基礎調査(乙調査)>
既存事業所の場合:名称、所在地、活動状態
新規事業所の場合:名称、電話番号、所在地、活動状態、職員数、主な事業の内容、事業の委託先の名称・電話番号・所在地
<活動調査(甲調査)>
名称、電話番号、所在地、経営組織、従業者数、主な事業の内容、資本金等の額、外国資本比率、売上金額、費用総額、費用項目、事業別売上金額など
<活動調査(乙調査)>
名称、所在地、職員数、主な事業の内容
※活動調査の結果は「産業横断」「鉱業等」「製造業」「卸売業,小売業」「サービスB」「医療,福祉」「建設業,サービスA」「学校教育」のカテゴリーごとに公表されている。日本標準産業分類を見て、自分が知りたい産業がどこに属するのか確認しておくといい
※「利用上の注意」は必読
⑧ 調査方法
<基礎調査(甲調査)>
市区町村が推薦、都道府県知事が任命した調査員が、担当地域の事業所を訪問。外観等から名称・所在地・活動状態を確認し、タブレット端末に入力。新しく見つけた事業所には調査票を配布。回答はオンラインまたは郵送
<基礎調査(乙調査)>
総務省が国の事業所に、都道府県が都道府県の事業所に、市町村が市町村の事業所に、それぞれ電子メールで調査票を配布。回答はオンライン
<活動調査(甲調査)>
調査員調査:都道府県知事が任命した調査員が事業所に調査票を配布。オンライン回答可
直轄調査:国・都道府県・市が民間事業者等を介して、支社・支店を有する企業(本社)に支社・支店分を含めた調査票を一括で郵送。オンライン回答可
<活動調査(乙調査)>
総務省が国の事業所に、都道府県が都道府県の事業所に、市町村が市町村の事業所に、それぞれ電子メールで調査票を配布。回答はオンライン
最終的に総務省統計局に提出された調査票は、独立行政法人統計センターで集計
※統計調査員は市区町村がHP等で募集(登録制)。非常勤公務員扱いで守秘義務がある。任命期間約2カ月、実働日数15日前後?報酬は調査の種類や担当件数によって異なるものの6万円程度
⑨ 活用
・ ビジネスレジスターの基本情報
・「国民経済計算(GDP統計)」において、個人企業の設備投資、経済活動別就業者数の推計に利用
・地方消費税の清算(国→都道府県→市町村)に利用
・政策策定の基礎資料
⑩ その他メモ
・日本経済新聞"経済センサス「調査負担軽減を」 河野氏、確定申告の活用検討"(2021年8月20日21:30)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA19CM20Z10C21A8000000/
・総務省統計局"地域メッシュ統計"https://www.stat.go.jp/data/mesh/index.html
⑪ 参考資料
・上田聖「経済構造実態調査の見直し~「経済センサス‐活動調査」を延長する統計の充実~」『統計 Today』(2021年) No. 175 https://www.stat.go.jp/info/today/index.html
・大阪市"【学生の方へ】公務員の体験ができる!大阪市登録調査員を募集しています!"(2022年1月31日)https://www.city.osaka.lg.jp/toshikeikaku/page/0000459273.html
・経済産業省"経済センサス-活動調査" https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/census/index.html
・静岡市"統計調査員のお仕事をしてみませんか?"(2022年4月1日) https://www.city.shizuoka.lg.jp/000_001673.html
・総務省統計局"経済センサス"https://www.stat.go.jp/data/e-census/index.html
・総務省"統計調査員の仕事などについて" https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/2-7-1.html
・総務省"統計法について" https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/1-1n.htm
・日経リサーチ"基幹統計"https://www.nikkei-r.co.jp/glossary/id=1619
・本巣市"統計調査員の募集"(2022年3月29日)https://www.city.motosu.lg.jp/0000000163.html