官公省庁の調査:住宅・土地統計調査

①概要

基幹統計調査
・層化2段抽出法による標本調査
5年に1回実施
・「住宅及び世帯に関する基本集計」「住宅の構造等に関する集計」「土地集計」を順次公表。一介の調査員としては「住宅及び世帯に関する基本集計」の使用頻度が高い
国勢調査でも、住宅の種類別/建て方別/所有の関係別の一般世帯数が分かるが、住宅・土地統計調査の方が区分は細かい。また、両調査とも5年ごとの実施だが、調査のタイミングはズレる
・空き家調査の参考資料として利用されることもあるが、読み解きには注意が必要→⑩その他メモ参照

②設立背景

1948年から実施

③管轄

総務省統計局
(委託先:独立行政法人統計センター)

④調査時期

5年ごとに10月1日午前0時現在で実施

⑤発表時期

・調査年の翌年4月末頃に「住宅数概数集計」公表
…速報の割にはかなり細かく分類されたデータ。ただし、概数なので確定値が公表されていたらそちらを参照
―――
(以下、確定値)
・調査年の翌年9月末頃に「住宅及び世帯に関する基本集計」公表
…総住宅数、総世帯数、居住世帯の有無(空き家数、空き家率も)、住宅所有の関係、住宅の規模(室数、畳数、面積、人員数)、建築時期、借家の家賃・間代、高齢者のいる世帯の状況、現住居以外の住宅を所有している世帯
・調査年の翌々年1月末頃に「住宅の構造等に関する集計」公表
…増改築・改修工事、耐震改修工事、バリアフリー化、住環境(保育所や老人デイサービスセンターまでの距離)、所有する空き家
・調査年の翌々年3月末頃に「土地集計」公表
…土地の所有状況

⑥調査対象

・(一部地区を除く)日本全国の建築物およびそこに居住する世帯
・本調査における「住宅」=壁などによって完全に区画された、一つの世帯が独立して家庭生活を営める建築物(出入口、台所、トイレ、1つ以上の居住室あり)
⇒家庭生活を営むのが困難な「廃屋」は対象外

<標本の抽出方法>
換算世帯数、住宅の所有の関係別割合、65歳以上世帯員のいる一般世帯数割合等を考慮して国勢調査区を24層に層化
→人口規模等を考慮して市区町村ごと、都道府県ごとに設定された抽出率(※人口規模で異なる)で調査区を系統抽出=約22万調査区
→住戸を無作為抽出(1調査区約17住戸)。17住戸×220,000調査区=約370万住戸

⑦調査項目

<甲調査票(ショートフォーム)>…世帯が記入
・世帯人員数
・各世帯員の性別、年齢、配偶者の有無、続き柄
・世帯全員の年間の収入
・世帯の家計を主に支える人の従業上の地位、通勤時間、子どもの住んでいる場所、現住所への入居時期、前住所に関する事項(建て方、所有の関係、畳数等)
・居住室の数、畳数(面積)
・持ち家・借家の別
・1か月の家賃/間代/共益費/管理費
・床面積(延べ面積、1階の床面積)
・建築の時期
・台所の型(例:K、DK、LDK)
・高齢者のための設備等(例:手すり、段差の有無)
・省エネルギー設備等
・住宅の建て替え/新築/購入の別
・前回調査からの増改築の有無
・前回調査からの耐震診断の有無
・前回調査からの耐震改修工事の有無
・現住居の敷地の所有地・借地の別、敷地面積、取得方法・取得時期
・現住居以外の住宅の有無、種類
・現住居以外の土地の有無、種類

<乙調査票(ロングフォーム)>…世帯が記入
甲調査票の調査項目に加えて、現住居以外に所有する土地(宅地/農地/山林)について質問

<建物調査票>…調査員が記入
居住世帯のない住宅の種類
・住宅の種類
・建て方
・構造
・腐朽・破損の有無
・建物全体の階数
・敷地に接している道路の幅員
・(長屋・共同住宅の場合)建物内の総住宅数
・(共同住宅の場合)エレベーターの有無、オートロックの別、高齢者対応型住宅の別

―――
住宅の分類例
【建て方】
一戸建…1棟に1つの住宅
長屋建…1棟に2つ以上の住宅。住宅間で廊下・階段などの共用スペースを持たない
共同住宅…1棟に2つ以上の住宅。住宅間で廊下・階段などの共用スペースを持つ
その他
【構造】
木造…木造、防火木造
非木造…鉄筋・鉄骨コンクリート造、鉄骨造、その他
【所有の関係】
持ち家…居住世帯が全部または一部を所有
借家…公営の借家、都市再生機構・公社の借家、民営借家、給与住宅(社宅等)

その他様々な観点から分類。「用語の解説」は必読

⑧調査方法

・層化2段抽出法。1段目で調査区、2段目で住戸を抽出
・世帯に記入してもらう甲・乙調査票と調査員が記入する建物調査票、3種類の調査票を使用
・調査員が調査票を配布・回収。インターネット回答も可能

⑨活用

・「住生活基本計画」の基礎資料
・都市計画(耐震・防災)策定の基礎資料 ほか
・ポスティングの配布先選定用資料など、民間利用も

⑩その他メモ

・空き家問題を考える前に、空き家の定義を確認すること。本調査における「空き家」は以下の4つからなる
①二次的住宅(別荘・その他)
②賃借用の住宅
③売却用の住宅
④その他の住宅←「空き家問題」で特に問題視されるのはココ
※そもそも、本調査は廃屋を調査対象にしないため、本当に危ない空き家が反映されていない可能性が高い
※「世帯所有空き家」=現住居以外に所有する居住世帯のない住宅のうち、④その他の住宅のみの数字。例外的なので要注意
・国土交通省「空家実態調査」は、総務省「住宅・土地統計調査」で「居住世帯のない住宅(上記の①~④)を所有している」と回答した世帯から無作為抽出した世帯を対象に、空き家の利用状況や管理上の課題等を調査
※調査員が外観から「居住世帯のない住宅」と判断した住宅ではなく、世帯が現住居以外に所有している「居住世帯のない住宅」を対象
・このほか各自治体も空き家の実態調査を行っている

⑪参考資料

・国土交通省"令和元年空き家所有者実態調査" https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/R1_akiya_syoyuusya_jittaityousa.html
・総務省行政評価局「空き家対策に関する実態調査 結果報告書」(2019年1月)https://www.soumu.go.jp/main_content/000595230.pdf
・総務省"平成30年住宅・土地統計調査"https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/index.html