官公省庁の調査:毎月勤労統計調査

①概要

基幹統計調査
無作為抽出法による標本調査
・賃金・労働時間・雇用の増減(変化)に着目
 ⇔賃金構造基本統計調査は属性間の差(構造)に着目
事業所単位
 ⇔労働力調査は世帯・個人単位
実数指数を公表。指数は①基準年(西暦年の末尾が0か5の年)改定時、②ベンチマーク(ウェイトに使用する母集団労働者数)更新時※、③標本交替時に過去に遡って改訂。おおむね1990年まで遡れる
→長期比較したい場合、長期時系列表を参照
※雇用指数のみ
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・2018年末以降、2004年1月分~2019年5月分の約15年半、表向きには「従業員数500人以上の事業所は全数調査」と言いながら、東京都の一部産業では標本調査を実施していた等の「統計不正」が発覚。標本調査に必要な復元処理もなく、長らく歪んだデータを元に政策決定、給付金の計算がなされていた
→2012年以降については復元に必要なデータが残っていたので再集計値を公表
→2004年~2011年については復元に必要なデータが残っていなかったので推計値を公表
→統計不正が原因で雇用保険・労災保険等を過少給付されていた約2,000万人を対象に追加給付

②設立背景

・1923年から「職工賃銀毎月調査」「鉱夫賃銀毎月調査」実施
・1944年から「毎月勤労統計調査」実施

③管轄

厚生労働省
(全国調査は厚生労働省で、地方調査は各都道府県で集計)

④調査時期

・全国調査・地方調査は毎月実施
・毎月末現在で記入→調査月の翌月10日までに提出
・特別調査は毎年7月末現在で実施

⑤発表時期

<全国調査>
・月報は調査月の翌々月上旬速報公表
・月報は調査月の翌々月下旬確報公表
・夏季賞与の結果は9月分速報公表時に公表
・年末賞与の結果は2月分速報公表時に公表

<地方調査>
・月報は調査月の翌々月末までに公表

<特別調査>
・年内公表

⑥調査対象

<対象産業>
・日本標準産業分類の大分類「鉱業,採石業,砂利採取業」、「建設業」、「製造業」、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「情報通信業」、「運輸業,郵便業」、「卸売業,小売業」、「金融業,保険業」、「不動産業,物品賃貸業」、「学術研究,専門・技術サービス業」、「宿泊業,飲食サービス業」、「生活関連サービス業,娯楽業」(※その他の生活関連サービス業のうち家事サービス業を除く)、「教育,学習支援業」、「医療,福祉」、「複合サービス事業」、「サービス業(他に分類されないもの)」(※外国公務を除く)
「農業,林業」「漁業」「公務(他に分類されるものを除く)」「分類不能の産業」を除く産業

<全国調査・地方調査>
・以上産業に属する、常用労働者数5人以上の民営/公営事業所
第一種事業所(常用労働者数30人以上の事業所)については、事業所母集団データベースを使用し、都道府県別・産業別・事業所規模別に層化無作為抽出法で約1万5,200事業所を抽出。ただし、常用労働者数500人以上の事業所は全数調査
第二種事業所(常用労働者数5~29人の事業所)については、経済センサスの調査区に基づき約7万の調査区を設定。都道府県別・層別に合計1,800調査区を抽出=一段目。抽出された調査区から産業別に合計約1万8,000事業所を無作為抽出=二段目
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全国調査×第一種事業所:約1万5,200事業所
全国調査×第二種事業所:約1万8,000事業所
→合計約3万3,200事業所
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地方調査×第一種事業所:約2万5,500事業所
地方調査×第二種事業所:約1万8,000事業所
→合計約4万3,500事業所

<特別調査>
・以上産業に属する、常用労働者数1~4人の事業所
・経済センサスの調査区に基づき調査区を設定、抽出された調査区内で常用労働者数1~4人の全事業所約2万5,000事業所に調査票配布

⑦調査項目

<全国調査・地方調査>
・主要な生産品の名前、事業の内容、操業日数、企業規模、変動状況(定昇、ベア、休業等)
常用労働者については、(性別の)前回調査末日/今回調査末日の労働者数、採用・転勤等による増加人数、解雇・退職等による減少人数、出勤日数、所定内労働時間数、所定外労働時間数、きまって支給する給与額、超過労働給与額、特別に支払われた給与の名称別金額
パートタイム労働者については、前回調査末日/今回調査末日の労働者数、採用・転勤等による増加人数、解雇・退職等による減少人数、出勤日数、所定内労働時間数、所定外労働時間数、きまって支給する給与額、超過労働給与額、特別に支払われた給与額

<特別調査>
・事業所名、電話番号、主要な生産品の名前、事業の内容、企業規模、常用労働者数
・各常用労働者の氏名または符号、性別、通勤・住み込みの別、家族労働者であるかの別、年齢、勤続年数、出勤日数、1日の実労働時間数、決まって支給する現金給与額、特別に支払われた給与額

※金額は税込み

⑧調査方法

<全国調査・地方調査>
・第一種事業所(常用労働者数30人以上の事業所)は層化抽出法で抽出。ただし、常用労働者数500人以上の事業所は全数調査
・第二種事業所(常用労働者数5~29人の事業所)は層化2段抽出法で抽出
・第一種事業所には郵送で調査票を配布・回収。オンライン回答可
・第二種事業所は調査員が調査票を配布・回収する調査員調査。オンライン回答可
・対第一種事業所調査では同じ事業所を3年間継続して調査。毎年3分の1ずつ標本が入れ替わる
・対第二種事業所調査では同じ事業所を1年半継続して調査。半年ごとに3分の1ずつ標本が入れ替わる

<特別調査>
・常用労働者数1〜4人の事業所を集落抽出法で抽出
・調査員が調査票を配布・回収する調査員調査

⑨活用

・国民経済計算の基礎資料
・雇用保険、労災保険、船員保険、事業主向け助成金の給付額算出のための基礎資料 ほか

⑩その他メモ

・名目賃金=現金給与総額
実質賃金消費者物価指数を使って物価変動の影響を除いた賃金。実質賃金指数=(名目賃金指数÷消費者物価指数)×100。購買力を表す指標として広く用いられる。最近は「物価上昇の伸びに追いつかず」というフレーズとセットでよく聞く
・統計不正発覚当時の雰囲気
→NHK"問題の核心は!?徹底検証・統計不正"「クローズアップ現代全記録」(2019年2月18日)https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4248/
・統計不正の再発防止に向けた取り組み
→首相官邸"統計改革推進会議" https://www.kantei.go.jp/jp/singi/toukeikaikaku/index.html
→日本経済新聞"統計不正"https://www.nikkei.com/theme/?dw=19011101

⑪参考資料

・厚生労働省"毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査)" https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1.html
・厚生労働省"毎月勤労統計調査(特別調査)" https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/31-1.html
・厚生労働省"毎月勤労統計調査の概要及びこれまでの経緯について" https://www.mhlw.go.jp/content/10700000/000802074.pdf
・厚生労働省"毎月勤労統計:賃金データの見方" https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/maikin-20180927-01.pdf