官公省庁の調査:家計調査

①概要

基幹統計調査
層化3段抽出法による標本調査
・調査結果は「家計収支編」と「貯蓄・負債編」に分けて公表される。「家計収支編」では二人以上の世帯、単身世帯、総世帯のデータを公表、「貯蓄・負債編」では二人以上の世帯のみ公表
・毎月公表されるのは「家計収支編」の二人以上の世帯のみ
・調査結果である各品目の支出金額は、無購入世帯を含む全世帯の平均金額。したがって、品目の単価、購入個数、購入頻度、購入率等に影響を受ける
支払い時点で調査票(家計簿)に支出額を記入する方式。したがって、光熱費等、利用時点と支払時点にタイムラグがある品目について分析する際は注意が必要
・「子供服」「ゲーム機」等、一部収支項目は単身世帯にはないので注意
・用語の意味を正確に知らないと、データを読み間違える恐れがある→参考:総務省統計局"家計調査 用語の解説" https://www.stat.go.jp/data/kakei/kaisetsu.html

②設立背景

・1946年7月~1950年8月「消費者価格調査」…消費者目線で支出を調査
・1950年9月~1952年12月「消費実態調査」…収支ともに調査
・1953年1月~「家計調査」

③管轄

総務省統計局

④調査時期

毎月実施

⑤発表時期

<家計収支編>
二人以上の世帯は毎月公表(調査月から2か月遅れ
単身世帯・総世帯は四半期ごとに公表(最終調査月から2か月遅れ。二人以上の世帯も併せて公表)
調査年の翌年に年報を公表

<貯蓄・負債編>
四半期ごとに公表(最終調査月から4か月遅れ
調査年の翌年に年報公表

⑥調査対象

・学生の単身世帯、施設等の世帯、外国人世帯等、収支を正確に知ることが難しい一部世帯を除いた全国の世帯が母集団
・全国を168層に分け、確率比例抽出で各層から1市町村ずつ抽出
→単位区(=国勢調査の調査区2区分)を抽出
→調査員が単位区に出向いて単位区内の全世帯をリスト化。ここから調査対象外の世帯を除いた上で、指導員が乱数表を使って二人以上の世帯6世帯、単身世帯1世帯を抽出
・二人以上の世帯は合計8,076世帯、単身世帯は合計673世帯
・市町村は確率比例抽出しているが、世帯の抽出率は全国一律ではない(世帯数の多い市町村では標本に選ばれにくく、世帯数の少ない市町村では選ばれやすい)ので、集計(母集団を推定)する際に、係数を掛けて「抽出率調整」を行う。そうしないと、選ばれにくい標本のデータを過小評価してしまい、正しく母集団を推定することができない
・世帯は①二人以上の世帯、②単身世帯、③総世帯の3種類(総世帯=二人以上の世帯+単身世帯)
・二人以上の世帯、単身世帯はさらに、世帯主の職業によって①勤労者世帯、②無職世帯、③勤労者・無職以外の世帯に分けられる。無職世帯は年金で生計を立てている世帯等
<世帯の種類>
二人以上の世帯×勤労者世帯
二人以上の世帯×無職世帯
二人以上の世帯×勤労者・無職以外の世帯
単身世帯×勤労者世帯
単身世帯×無職世帯
単身世帯×勤労者・無職以外の世帯

⑦調査項目

世帯票サンプル
…世帯構成、世帯員の年齢、職業等を調査員が質問して記入

家計簿サンプル
…収入額および品目ごとの支出額・購入数量を世帯が記入。調査票は「口座自動振替による支払」「口座への入金」「現金収入又は現金支出」「クレジット・電子マネーなど現金以外による購入」に分かれている
→支出額÷購入数量で平均購入価格がわかる
→収入額は一定の周期で収入がある勤労者世帯・無職世帯のみ調査

年間収入調査票サンプル
…調査開始1か月目の後半に、調査開始1か月目を含む過去1年間の収入を世帯が記入。記入済み調査票は機械で読み取る
→家計簿で収入額を記入しない勤労者・無職以外の世帯も調査

貯蓄等調査票サンプル
二人以上の世帯にのみ配布。調査開始3か月目の前半に、貯蓄、負債の現在高を世帯が記入。記入済み調査票は機械で読み取る

⑧調査方法

層化3段抽出法で世帯を抽出(詳細は⑥調査対象参照)
・調査員が調査票を配布・回収(2018年1月~オンライン回答可)
・調査票は①世帯票、②家計簿、③年間収入調査票、④貯蓄等調査票の4種類※④は二人以上の世帯のみ
・二人以上の世帯は6か月間、単身世帯は3か月間、家計簿に記入
・調査票回収後、家計簿の内容を(おおむね5年ごとに改定される)収支項目≒分類基準に従って分類
・消費支出の分類方法は①用途分類、②品目分類の2通り。用途分類ではまず、自分の家の為の消費か、よそ様の為の消費(贈答用・接待用)かで分類。自分の家の為の消費はさらに品目で分類。よそ様の為の消費は交際費としてまとめる→用途分類と品目分類の違いは交際費を区別するかしないかだけ

⑨活用

・経済政策の基礎資料
・国民経済計算(GDP)四半期別速報における家計最終消費支出等の算定
・生活保護基準の算定
・消費者物価指数の品目選定・ウェイト算定 ほか

⑩その他メモ

・実収入=経常収入+特別収入
・実支出=消費支出+非消費支出(税金・社会保険料等)
・可処分所得=実収入-非消費支出
・平均消費性向(%)=消費支出÷可処分所得×100
家計簿で収入を調査するのは、勤労者世帯・無職世帯のみ。したがって実収入、可処分所得、平均消費性向等、収入に関連するデータは勤労者世帯・無職世帯のシートでしか確認できない(しかも1か月間のデータのみ!)
・総務省統計局"家計調査の結果を見る際のポイント" https://www.stat.go.jp/data/kakei/point/index.htmlで調査結果に影響を及ぼす現象等確認できる

⑪参考資料

・総務省統計局"家計調査" https://www.stat.go.jp/data/kakei/index.html
・国立教育政策研究所社会教育実践研究センター"社会教育調査 ハンドブック 第3版"(2008年) https://www.nier.go.jp/jissen/chosa/h23_handbook03_all.pdf
・日経リサーチ"多段抽出" https://www.nikkei-r.co.jp/glossary/id=1642