第14話 TとN

浅草キッド  ビートたけし

お前と会った仲見世の 煮込みしかない鯨屋で 夢を語ったチューハイの 泡に弾けた約束は 灯りの消えた浅草の 炬燵一つのアパートで 同じ背広を初めて買って 同じ形の蝶タイ作り 同じ靴まで買う金はなく いつも笑いのネタにした いつか売れると信じてた 客が二人の演芸場で 夢を託した百円を 投げて真面目に拝んでる 顔に浮かんだ幼子の 無垢な心にまた吠えて 独り訪ねたアパートで グラス傾け懐かしむ 「そんな時代もあったね」と 笑う背中が揺れている 夢は捨てたと言わないで 他にあてなき二人なのに 夢は捨てたと言わないで 他に道なき二人なのに

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