市原仁奈、ペンシルパズルの気持ちをつかむ

※この記事は「ペンシルパズルI Advent Calendar 2022」16日目の記事です。

あらすじ

20XX年。かつて新聞や書店の片隅でときどき見かける程度であったペンシルパズルは、今や日本を代表する文化として、国民に広く浸透している。

新聞を開けば、ペンシルパズルに関する数多の記事。ここ数日はFIPA(Federation Internationale de Puzzle Association)W杯の話題で持ちきりだ。 パズルのコーナーではデカビロサイズのペンシルパズルが日替わりで出題されている。パズル作家の層が厚くなった結果、出題するネタには困っていないらしい。

書店の新刊コーナーを飾るのは、ペンシルパズルに関するさまざまな書籍。パズルの制作論、プロパズラー名鑑、書き込み式の推理パズル小説……「パズル本」はもはや、単に「パズルが出題される本」だけを指す言葉ではないようだ。

子どもたちの間では、ペンシルパズルは部活動・習い事の定番となり、その存在感を確かなものとしている。また「頭の体操」としての側面が高齢者たちの間で広く好まれており、ペンシルパズルが果たす社会的役割は大きい。

さて老若男女がペンシルパズルに興じる世の中において、ここにもペンシルパズルの影響を色濃く受けた業界がある。アイドル業界だ。
これは、とある事務所のアイドルがペンシルパズルに奮闘する姿を描いた物語である——

つかめるか? パズルのきもち

歌声Vocal踊りDance容姿Visualだけでは、現代のアイドルたちが生き残ることは難しい。
このアイドル事務所では、現代のニーズに即応できるアイドルの育成を目的としてパズルりょくの向上に尽力しており、それを実現してきた。

豊かな語彙をもって、言葉系パズルのスペシャリストとなった鷺沢文香
異なるパズルどうしの化学反応によって、ハイブリッドパズルの魅力を発信し続ける一ノ瀬志希
類稀なプログラミング能力を活かし、ソルバー・自動生成の研究に日々勤しむ大石泉
7638なるみや」の語呂合わせがブームになり、もはや伝説的な存在となりつつある成宮由愛
他にも200人近いアイドルたちが、自分だけのパズルの個性を輝かせながらさまざまな仕事に取り組んでいる。

ここにいるのは、この事務所に所属するアイドルの1人・市原仁奈。着ぐるみを着るのが大好きな、9歳の少女だ。
いろんな動物たちの「気持ちをつかむ」ことが得意な仁奈だが、ペンシルパズルは未知の世界。パズルの気持ちをうまくつかめず、仁奈は困っていた。


仁奈「おおー! あきらおねーさん、すげー!」
P「うん、だけど紗南も惜しかったね。いい試合だった」

プロデューサーと一緒にテレビ番組を鑑賞している仁奈。
番組では事務所所属のアイドル・砂塚あきら三好紗南が、PC上でパズルを解くタイムを競う企画が行われていた。

司会「いやあ、今週も手に汗握る熱戦が繰り広げられましたね! どうですか、今回の勝負を振り返ってみて」
あきら「難易度低めのセットだったんで、どれだけ操作のロスを減らせるかの試合になるって思ってて。こういう勝負なら負けないデスよ」
紗南「うう〜、そのセリフはあたしが言うはずだったのに……でも、すっごいアツくなれた! プレイングもっと磨いて、次は絶対トゥルーエンドにしてみせるから!」

仁奈「さすが、おねーさんたちはすげーです! 仁奈よりもパズルの気持ちをつかんでやがりますね」
P「うーん、仁奈はああいうの見て憧れたりする?」
仁奈「もちろんでごぜーます! 仁奈はもっともっと、パズルの気持ちをつかみてーです! だけど、パズルのせかいは大きすぎてよくわかんねーです……どうしたらいいか、仁奈におしえてくだせー!」

P「(パズルに関しては、今まで仁奈には基本的なレッスンを受けさせてきたけど……そろそろ実践の機会も必要みたいだな)」

P「よし。それじゃあ今度、パズルの気持ちをつかむレッスンをしよう! 初めての本格的なレッスンだから、僕が直接教えてあげるね」
仁奈「本当でごぜーますか!? やったー! どんな気持ちをつかめるか、ワクワクだー!」

つかめ! シークワーズの気持ち

後日、レッスンルームにやって来た仁奈とプロデューサー。
せっかくなのでと、仁奈と同い年のアイドル・横山千佳龍崎薫も一緒にレッスンをすることになった。

仁奈「プロデューサー! ついに仁奈もパズルの気持ちがつかめるのでごぜーますね!」
千佳「チカも、すっごく楽しみ! だけど、むずかしいのはちょっと不安…」
薫「せんせぇ! 最初は、かんたんなパズルでおねがいしまー!」
P「そうだね、まずは分かりやすいパズルから始めるのがいいと思う。ってことで用意したのが……これ!」

仁奈「文字がいっぱいだー! これは何をするパズルでごぜーますか?」
P「これはシークワーズといって、いろんな言葉を探すパズルだ。一見ぐちゃぐちゃに見えるけど、よーく見るといろんな言葉が隠れてる。それを全部見つけるのが目的だよ」
仁奈「おおー、ことばのかくれんぼでごぜーますね!」

千佳「はいはーい! レイナちゃんはっけーん!」
薫「せんせぇ! かおるも見つけたー!」

P「はーいストップストップ! シークワーズはただ言葉を探すだけじゃダメなんだ。まず千佳! 探すのはリストにある言葉だ。他の言葉を見つけても、パズルが解けたことにはならないんだよ」
千佳「えー、そんなー!」
P「次に薫! 言葉はまっすぐ、一直線に探すこと。途中で折れ曲がったり、文字を飛ばしたりするのは反則だ」
薫「うーん、せっかく見つけたのに…」
P「そのかわり、言葉はいろんな方向に探していい。左から右・上から下だけでなく、右から左・下から上に読むのもOK。さらに、ナナメに探すのもアリなんだ」

仁奈「それじゃあもう1回、やり直しでごぜーます! えーっと……あっ、仁奈はここだー!」
千佳「チカも見つけた! ここー!」
P「いいね。言葉を見つけたらその場所をぐるっと囲んだり、こんなふうに線を引いておこう。それと、探し終わった言葉に目印をつけるのも忘れずにね」

薫「かおるが最後になっちゃった……どこだろうー?」
P「そうだ、これも伝えておかないと。一度使った文字を、別の言葉でまた使ってもいいんだ」
薫「そうなの!? それじゃあ、ここの『か』をもういっかい使って……ここだー!」

P「はい、よくできました! これでこの問題は解けたってことになるよ」
仁奈・千佳・薫「やったー!!」
P「いま解いたのは普通のシークワーズだったけど、他にも…」

  • 探す言葉が1つだけの問題

  • 指定された言葉がいくつあるかを答える問題

  • 盤面の一部が隠されていて、自分で文字を書き込みながら言葉を探す問題

P「…などなど、ちょっと変わったシークワーズがある。ぜひ、いろんな問題に挑戦してみてほしいな」

後日。プロデューサーが事務所を訪れると、仁奈・千佳・薫の3人が謎の遊びをしている……

P「おはよう……どうしたの? 床に寝そべって」
薫「おはようございまー! これはねー、シークワーズの気持ちごっこ!」
千佳「プロデューサー、そこに寝転がって!」
P「えっ…? えっと、こう……かな」
仁奈「とりゃー!」
P「ぐえっ!?」
ちひろ「あの……これはいったい…?」
仁奈・千佳・薫「ニナーっ!」

つかめ! 美術館の気持ち

いよいよ本格的なレッスンが始まり、パズルの気持ちをつかみ始めた仁奈。
ある日仁奈はプロデューサーから「大事な話がある」と、会議室に呼び出される。

仁奈「プロデューサー、お話ってなんでごぜーますか? またプロデューサーが仁奈のレッスンしやがりますか?」
P「それもいいね。だけど仁奈には、もっと大事なことをしてもらうんだ」
仁奈「だいじなこと?」
P「それはね……仁奈に初めてのパズルのお仕事が入ったんだ」
仁奈「すげー! パズルのお仕事だー! 仁奈、どんなお仕事でもがんばるですよ!」
P「やる気満々だね、それじゃあ早速お仕事のお話をしようか。近々発売されるパズル雑誌があるんだけど、その雑誌で美術館っていうパズルが特集されるんだ」
仁奈「びじゅつかん?」
P「仁奈にはこの雑誌の発売記念イベントに出演して、美術館の紹介をしてもらうんだけど……」

コンコン。
やさしくドアをノックする音とともに、事務所所属のユニット「スプレッド・パレット」のメンバー・成宮由愛古澤頼子吉岡沙紀が会議室にやってきた。

由愛「失礼します……わわっ、遅れてしまいましたか」
P「大丈夫、ちょうど話に入ってもらうところだったから」
頼子「レッスンが長くなってしまい……あら、仁奈ちゃんも一緒なのですね」
沙紀「珍しい組み合わせっすね。どんな話っすか、プロデューサーさん」
P「まあまあとりあえず座ろうか。よし、それじゃあ改めて……」

後日。仁奈とスプレッド・パレットの3人は、事務所の談話室に集まっていた。

由愛「私たちが、仁奈ちゃんの初めての美術館をサポート……どう進めましょうか」
頼子「美術館の例題を用意しました。これを使って、説明していきましょう」
沙紀「おおっ、用意周到! 助かるっす」

仁奈「文字が少なくて、さみしーです。これはどんなパズルでごぜーますか?」
頼子「ふふっ…それじゃあ仁奈ちゃん、このパズルの気持ちになってみましょう。このパズルの舞台は、とある美術館。たくさんの絵画が飾られているのですが、実はこの部屋は真っ暗なのです」
仁奈「まっくらじゃ、絵が見られねーです!」
頼子「そうですね…これではみんな、困ってしまいます。仁奈ちゃん、どうしたらいいでしょう?」
仁奈「部屋を明るくしないといけねーです。どこかに明かりはねーですか?」
頼子「そう…! 美術館は、照明を置いて部屋をすべて明るく照らすパズルなのです。試しに、ここに照明を置くと…」

仁奈「明るくなりやがりました!」
沙紀「照明を置くと、その場所から縦横に光が広がるっす。壁か黒いマスにぶつかるまで、ずーっと伸びていくっすよ」
頼子「紙に書き込んで解くときは、こんなふうに照明から線を引いたり、マスを塗りつぶしたりすると見やすいですよ」

仁奈「それなら、明かりをたくさん置いて……全部明るくなりやがれー!」

由愛「わわっ……仁奈ちゃん、ただ照明を置くだけじゃダメなんです……」
沙紀「そうっす。アートは自由でも、照明の置き方にはいくつかルールがあるっす」
仁奈「そうでごぜーますか!? 仁奈に教えてくだせー!」
頼子「少しずつ話しますから、よく聞いてくださいね。まずは数字の説明から始めましょう」
仁奈「1とか4とか、この数字はなんでごぜーますか?」
由愛「数字が表すのは、照明の数……その数字に隣り合う上下左右のマスのうち、いくつのマスに照明が置かれるかを表します」

沙紀「この数字より多くてもダメ、少なくてもダメ。数をピッタリ合わせないといけないっす」
頼子「このルールを使って、照明を置いてみましょう。一番わかりやすいのは、4と書かれたマスですね」
仁奈「明かりを4つ置かないといけねーですね。あ! こうするしかねーです!」

由愛「『4』の上下左右には、必ず照明が1つずつ置かれます。やさしい入り口ですね」
仁奈「いっぱい明るくなったー! みんな幸せでごぜーますね!」
沙紀「まだまだこれからっすよ〜、次は右下の『1』に注目するっす。照明は、白いマスにしか置くことができないっす」
仁奈「この『1』のまわりには、白いマスは1つしかねーですね。ってことは…こうだー!」

頼子「いい感じですね…! このように、まずはわかりやすい数字を手がかりにして照明を置いていくのが、美術館のコツです」
仁奈「あと少しで全部明るくなりやがりますね! ……でも、次はどうすればいーですか? 進みかたがわからねーです」
由愛「それじゃあ、ここでもう1つ大事なルールを教えますね。照明が照らしたマスには、他の照明を置くことができないんです」

仁奈「えー、なんで置けねーですか? 明かりをいっぱい置いたら、いっぱい明るくてうれしーですよ」
頼子「ここは美術館なので、眩しすぎても困ってしまいますよ。それに……光を当てすぎると、絵画が傷んでしまいますから」
仁奈「美術館の気持ち、わすれてたー! 美術館は、ちょうどいー明るさにしないといけねーですね」
沙紀「その通りっす! このルールを使えば、右上の『1』が次の手がかりになるっす。周りに白マスは2つあって、置く照明は1つっす」
仁奈「でも、もう明るいマスがありやがります! ここには明かりは置けねーから、こうでごぜーますね!」

由愛「そうです…! 仁奈ちゃん、順調ですね…!」
仁奈「えっへん! 仁奈は美術館の気持ちもつかめたでごぜーます! あ、でもまだ暗いマスがありやがります…」
頼子「あとちょっとですよ、仁奈ちゃん。次はこのマスに注目してください」

頼子「このマスも明るくしないといけませんが、周りに照明を置けそうな場所がないですね」
仁奈「ほんとだー! どうしたらここは明るくなりやがりますか?」
沙紀「周りから照らせないなら、自分で明るくしてしまえばいいっす。つまり、このマスに照明を置く!」

仁奈「すげー! 数字がなくても、明かりを置けちまいました!」
由愛「さあ、あとちょっとです…! 最後は、左下の『0』に注目してください」
仁奈「0は、明かりを1つも置けねーです。これじゃあ明るくできねーですよ」
頼子「実は、『照明を置くことができない』という情報も大事なんですよ。0の周りには照明を置くことができないので、このように目印を打っておきましょう」

沙紀「紙で解くときは、印は自由に書いてOKっす。点じゃなくて、バツ印を書く人も見かけるっす」
仁奈「うーん、これはどう役に立つでごぜーますか」
由愛「いま点を打った、このマスを見てください……ここはさっきみたいに、自分で明るくなることができないんです。つまり、誰かがこのマスを助けてあげないといけません…!」
仁奈「たいへんだー! このマス、助けてーって言ってやがります!」
沙紀「だけど、このマスを助けてあげることができるのは、もうあのマスしかいないっすよ!」
仁奈「このマスを助けられるのは……あ! このマスしかねーです!」

頼子「はい、正解です…! こんなふうに、『このマスを照らすには、ここに照明を置くしかない』という考えも使うのです。そのために『照明を置くことができない』という情報が必要になるんですよ」
仁奈「これで、部屋が全部明るくなりやがりました!」
由愛「はいっ…! これでこのパズルは、無事解き終わりました」
仁奈「やったー! 仁奈、今度こそ美術館の気持ちをつかんだでごぜーますね!」

ところでこの記事、何?

こんにちは。最近は諸星きらりにお熱なふーなんとかさんです。

ふーなんとかさんといえば「7638」「成宮由愛」というイメージが強そうですが、ここ最近はデレマス全般、そしてペンシルパズル入門者・初心者向けの活動を主に行なっているなあという認識があります。主に挙げられるのは「#ペンシルパズルデビュー週間」や「成宮由愛と学ぶ!ヘルゴルフ作問基礎」、Puzzle Square JPでの「はじめてのペンシルパズル」名義での出題などでしょうか。

さてこれはとある日のご友人(デレマスP、パズルもする)との会話で私の口から飛び出した一言。

「ニナチャンがペンシルパズルの気持ちになってデビューする本!?」
※注 ニナチャン=市原仁奈

勢いで言っただけのネタのようなものでしたが、あれ案外面白そうだぞ、プロデューサー向けのいいパズル教材になりそうだぞ、やってみたいぞと話が弾み……。
「じゃあ試しにひと記事書いてみるか!」と独断で進めたのがこちらの記事です。

パズラーとプロデューサーの架け橋になることを目指し、デレマスをテーマにしたパズルを募集・紹介する「#デレパズ」という企画を開催していますが、やはりパズル側のハードルがやや高いのがネックであると実感しています。
それを解消する手段として「ニナチャンがペンシルパズルの気持ちになってデビューする本(仮)」はアリなのかもしれない……と、考えたり考えていなかったり。

ひょっとしたら来年あたりに、この記事の内容をブラッシュアップ&ボリュームアップしたものが本となってお披露目されるかもしれません。続くかやる気、足りるか時間。

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