あるルポルタージュを読んだ時、頭の中で靄のように湧き上がってきたアイディアがあった。
で、それをストーリーの形式に落とし込んでpagesでまとめた。アイディアの名前は「Cocoon」、あらすじはこんな感じ。↓
こんな感じ。
どんな媒体で表現するかはちょっと悩んでいる。一番いいのは映画とかかな。僕は漫画家だけど。この作品の「臭い」とか「痛み」「光」みたいな要素の質感はできるだけリアルにしたい。実写の映像ならそういうものの細かいところまで映せると思う。漫画でもいいけど…
なんでこんな話を考えついたのか。
多分その答えの根底には、指先で摘んだ端から崩れてしまうような、不安定な「人間性」と「人間らしさ」のせめぎ合いがある。
「理性」と「本能」とも言い換えられるその二つは、お互いを支え合い、また破壊し合う。理性は本能を野蛮だと教育し、本能は理性を「俺がいなかったらお前も存在しないくせに」と論破する。
最近そんな大喧嘩が、安樹子さんのように、僕自身の心の中でもたくさん起きている。この感覚が新鮮なうちに、ちゃんと形にしなきゃと思った。
もう1つ言うと、最近になってやっと車の免許を取ったのが影響してると思う。ルポを読みながら、車上生活をしている人の身体感覚が少しずつ自分の中に染み込んできた。
車はパブリックでありながら、プライバシーな空間だ。時速50kmとか80kmで走る金属の個室には、乗っている人以外は誰も干渉出来ない。安樹子はやっと理想の孤独に出会えた。しかしその時にはもう遅すぎた、車に逃げ込むに足るような彼女自身の過去の記憶は、駐車場に停めた静かな車内で、彼女の頭の中に響き渡る。
だから走るしかない、ガソリンスタンドによる暇も金もないから、走るしかない。ガス欠でエンジンが焼け付き、否応がなしに止まるその時まで。
過去は安樹子を苛み、責め立て、そして孕ませ。彼女の「人間らしさ」を彼女に認めさせようとする。それに対し、彼女は最後の力を振り絞って「人間性」を掲げる(掲げてしまう)。…とか。
なんかそんなような事が頭の中でぐるぐるして、行ったり来たりしている。
だからそろそろ、形にしてしまわなければいけない気がするんだ。
別に「お前ら全員死ね」って言いたいわけじゃない。そんな事を言ったら、一番人間らしい僕が真っ先に飛び降りなくちゃいけないし。
僕は僕で、もうそういうのにはある種、諦めがついてるんだ。
だけどたまに、こうした表現を通して、また追い求めたくもなるんだ。
とりあえずは、まず取材をしなくちゃなと思っている。
1週間とか2週間、もっと?1ヶ月とか、車の中だけで、実際に安樹子が辿った道のりを(あらすじには書いてないけど僕の脳内には設定されてる)、道の駅に泊まりながら辿ってみなきゃ、リアリティが生まれない。
それから脚本を書く。その先の事は…まだ検討中。漫画にするなら費用とかやり方が分かるけど、映画にするとなると…機材とか俳優さん、スタッフ、上映会、DVD…その他諸々。僕一人では手に負えない。
まぁそんな感じのことを考えつつ、生きているんです。
いい作品になると思うんだけどな。どうだろう?