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務川慧悟ピアノリサイタル

2021年1月31日、昨年の4月から延期されたリサイタル。
緊急事態宣言の中、ホールもご本人もギリギリの選択を迫られた事でしょう。

それはプログラムの多彩さに現れていました。

ヘンデル:シャコンヌ ト長調 HWV435
ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ
ブーレーズ:アンシーズ(2001年版)

ショパン:ピアノソナタ第2番 変ロ長調 Op.35 「葬送」
ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガより
第15番 変ニ長調
ラフマニノフ:コレルリの主題による変奏曲 ニ長調 Op.42

アンコール 
ラヴェル ソナチネ 第2番
モーツァルト ソナタ イ短調 


ヘンデル、パリで古楽器も学ばれているとの事、
まるでチェンバロのような音色が鍵盤からこぼれていく。
最後のト長調の和音からラヴェルの洒脱な6つのワルツへ、パリの公園で鳥の声に耳を澄ます彼の姿が浮かんでくる。やがて夕闇が迫り街灯が照らす窓。楽しいお喋りとワイン、今はどうなっているのだろう?深い森が夜の包まれ眠りにつく。

アンシーズ:CDにも収録されているが、より一層の進化を感じた。現代曲と一言で片付けてはいけない迫力が、伝わってくる。分解と模索を繰り返したであろう痕跡がリサイタルの中で唯一、譜面台に置かれた楽譜からも窺える。

そして、どうしても今、日本で弾いておきたいと願い、急遽プログラムに加えたショパン『葬送』  実は少し聴くのが怖かったが、危惧に終わる。繰り返されるのは絶望ばかりではなく、確かな階がみえるソナタだった。

ショスタコービッチ:短い曲だが、音が次から次へとピアノから溢れて可愛らしい。

ラフマニノフ、ここまで堪えた涙腺が徐々に崩壊する。フランスの教会にいるような錯覚。「ただそこにある事」を携えた音が光りながら軽やかに上昇していく。満ち満ちた光の粒は最後の一音で「無」になる。

体力のいるプログラム。務川さん、幸せな時間を、ありがとうございました。

ここまで書いて務川さん、書類の不備で飛行機に乗れなかったというツィートが、、、。渡欧されてもどうかご無事で、充実の時間を過ごされる事をお祈りいたします。









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