雨にうたれ続ける車
舗装もされていない野ざらしの駐車場に、車を乱暴にとめた。
月極の看板が、だらしなく垂れさがっていような駐車場だった。
とめられれば、どこでもよかった。
それから二人は、もう2時間もそこに居る。
エンジンを止めた車の中で、だらしなく身体を横たえ、ただぼんやりと外を眺めていた。
シミシミシミトツトツツー
静まりかえった車内には、降るしきる雨の音だけがしんみりと響いている。
シミシミシミトツトツツー
雨は、フロントガラスをまるで小さな羽虫のようにシミシミと跳ね、不規則にトツトツと音を立てた。
そして、先を急ぐようにツーと流れ落ちた。
「ねぇ、雨の粒って一つひとつ大きさ違うのかなあ」
「何で」
「だってさっきから見てると、窓にくっつくのと、ボタって流れるのがあるみたい」
そう言われて男は、改めてフロントガラスに目をやった。
確かにそうだ。
「ホントだな。一つひとつ違うみたいだな」
「新しい発見だね」
「発見…ねぇ」
こんな天気の悪い午後。
世の中からも見捨てられたような駐車場で、二人は雨を眺めて新発見をする。
昨日までとは違う二人にとって、何もかもが新しい発見なのかもしれない。
「そうだな。おれも初めて知った。新発見だな」
「意外とみんな知らないよ。きっと」
男は少し笑ってみせた。
二人にとってこの時間は、これから先どんなふうに記憶されるのでだろう。
二人だけの忘れえぬ記憶になるのか。
それぞれが別々に思い出すことになるのか。
どちらかだけの記憶となってしまうのか。
出来ることなら、二人とも記憶から消し去ってしまうかもしれない。
シミシミシミトツトツツー
トランクの中のモノに動く気配はなかった。
雨はまだやみそうにない。
二人のこれからは、もう雨がやむことはないのかもしれない。
だから今は、静かに雨を眺めるのだ。
シミシミシミトツトツツー
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