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はじめまして、私のクリスマス

1958年の統計開始以来、2度目の雪が少ない12月らしい…
1度目はいつなんだろう。

美雪は、そんなことをボンヤリ考えながら、積雪ゼロの舗道を見つめた。

辺り一面が真っ白な雪に覆われた、キラキラと輝く朝に生まれたことから「美雪」と名付けたのだと両親から聞いた。

美雪は、雪の降り始めるこの時期が嫌いだった。
降っては解け、また降っては解けて行く雪の降り始めは、まるで自分自身も消えてしまいそうな不安な気持ちになるからだ。
まして今年は、いつもならすっかり根雪になっているはずのこの時期。
いつもにまして、美雪の心を不安にさせた。

物心がついた時から、そんな気持ちを密かに抱えていた。
誰にも言ったことはない。
自意識過剰と笑われるのが落ちだ。
幼い頃は、クリスマスが何よりも待ち遠しかった。
華やかな街の風景や部屋に飾られた装飾。そしてお目当てのプレゼント。何にもましてその頃には、しっかりと雪が街中を覆い尽くしてくれるからだ。
そうなってやっと、自分がここにいる確かな思いを感じることが出来るのだ。

思い起こせば、今年は始まりから大きく躓いた。第一志望の高校に落ちてしまったのだ。
すべり止めで受けていた高校に通い始めたが、なかなか気持ちの整理も出来ず、結果、クラスにもいまいち溶け込めずに居る。

そして、この12月の積雪ゼロ…

自分は、このままみんなの前から消えてしまうのではないか。そんな思いにすら駆られるのだ。

今日も雪が降る気配はない。
少し恨めしげに空を見上げる。
その時、手にしていたスマホがブルブルと震え、LINEの受信を知らせる。

画面に目を向けると、短い文が表示されている。よく見るとそこには、

「大通り公園のイルミネーション、今日までのようです。一緒に行かない?」

眼鏡の奥の柔らかな眼差しが印象的な、クラスの男子から。

続いて、

「今、どこにいますか?」

美雪は、自分でも驚くくらい自然に、そしと即座に返信をしていた。

「大通りの直ぐ近く!」

クリスマスに雪が無くたっていいかも!
初めてそんなふうに思えた気がした。


Merry Xmas ミスターローレンス。

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