ルッキズム的な

・これ見て思い出したんだけど。

・おお〜むかしに、ぜんぜん前職くらいに、某大学の案内パンフ作る仕事をやった。在校生や卒業生のインタビューが大量にあり、1ヶ月くらいほぼ毎日カメラマンと一緒に撮影しに行っていた。

・撮影した画像をレイアウトしては大学側に送り、ほぼ完成に近づいた頃、理事長の最終チェックが入り、そこで突然呼び出しをくらった。

・なにごとかと赴くと、某学科代表の女の子のページを開いて理事長がおかんむり。

「なんでこんなブスを使うんや💢💢企業案内や大学案内っちゅーのは、イメージが大事なんや💢💢💢こんなブスじゃあ入学希望者など来えへんやろ💢もっと爽やかな美人に差し替えろ!!撮影し直せ!!」

・いやー驚いたわね。そもそもこの子を選出したのは大学側だし、こちらに怒るのも筋違いではあるのだが、そんなことよりいい年こいてなんて言い草かしら。こんなクソ理事長の学校の虚構イメージアップの片棒かつぎたくねーなーと心底この仕事を投げ出したくなった。

・この理事長、何年か前に某大手企業から経営立て直しにやってきたかなりのワンマン経営者。部下も教授陣も全く逆らえない空気ムンムンだった。かわいそう。。

・しかしその後、救世主が現れた。この学科を持つ学部長がこれを聞いてマジギレ。

「差し替えなんてできるもんですか💢彼女は学科で一番真面目に努力してきた、成績優秀な自慢の学生です。学部長は私です。私が太鼓判を押せるのは彼女だけです。絶対に彼女を掲載します。」とキッパリ言い切り理事長を黙らせたらしい。

・再撮影しなくてホッとした、ということ以上に、この学部長かっこよくて痺れた。あろうことか自校に通う大事な生徒のことをブスと宣った理事長閣下は、それはそれは醜い憎まれクソジジイだったが、学部長は普段は温厚な紳士。生徒からも当然慕われていた。歳はそう変わらないだろうけど、生き様って、出るわよね。。

・ちなみにその女の子の写真は、とても素敵だった。私はその撮影にはたまたま立ち会ってなかったけど、ひたむきに夢に向かう姿がきちんと写真に収められていた。少なくとも私はレイアウトしてる間にブスなんて言葉はひとつもよぎらなかった。

・今書いてても信じられない話だが、一切盛ってはいない。もう15年近く前の話だから、もう理事長はくたばってるかもな。

・ただ…こう書いてはいるものの、自分にもうしろぐらいところは正直ある。長年広告の仕事をしていると、より写真映えする人を探してしまうクセは私にもついている。

・冒頭の美人学生さん、学校入ってあの子見つけたら、そりゃあメインで抜こうってなる。多分カメラ持ってる人はみんなそうなのではなかろうか。先の学校案内みたいに学業とか本質的な話ならビジュアルの優先度は下がるが、それでも例えば全く同じ内的スペックの子がふたりいたとしたら、より写真映えする方を選出してしまうということはおそらくあるのだ。。

・クソ理事長を軽蔑してはいるが、あんなアホみたいにデカい声で騒がないだけで、自分だってルッキズムに静かに加担していることは否定できない。

・とはいえ、別に世の中見た目が全てというわけではないので、広告みたいな広く大衆に出るものやドラマや映画では美しい人が活躍するのはまぁ致し方ないとも思っている。我々ふつうの容姿の人間は、そのほかのことを頑張ればいいだけである。

・でも特に思春期の子たちには、残酷な話だよな…と、隣で見切れる女の子を見て胸を痛めたおばちゃんであった。余計なお世話かもしれないけれど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?