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3日目 歌舞伎町のホストクラブ 3時間8000円皿洗いバイトの実態 前編

皆さんこんにちは。前回、新宿歌舞伎町でホストラブの人事の方からホストクラブのキッチンの皿洗い3時間8000円という破格のバイトを紹介された話を書きましたが、今回は実際にそのバイトに行ってまいりましたので、その記事を投稿させて頂きます。

前回書いたようにそのバイトを持ちかけられたのが26日の話でしたが、その日は予定があって行けず、名刺とラインだけ交換して行ける日に連絡することになり、その人事の方とは別れました。今週は夜の予定がライブやイベント等でかなり埋まってしまっており、一番近い行ける日は30日でした。

バイトの内容自体に対する不安はもちろんありましたが、それとは別に、日が開いてしまう事でこの話が立ち消えてしまうのではないかという不安もありました。

声をかけられた次の日の27日に人事の方(以降頭文字を取ってlさんとします)から29日に入れませんか?というラインが来ました。声をかけられた26日の段階で、とりあえず今日明日は行けないと伝えており、28日はそのホストクラブが休みの水曜日だったので、それを踏まえた上で一番近い29日を指定してきたということはやはりまだ人が足りていないということなのだろうとひとまず安心しました。

僕は「お疲れ様です!すいません...!29日は厳しくて、30日なら行けます!30日是非お願いしたいです!どうですか?!」と返信しました。断ってはしまいましたがすぐさま次の日には入れる事を強調して伝え、さらには「どうですか?!」と前のめりにすら感じる質問を投げ掛け、情熱を文面ににじませました。

その情熱が伝わったのか、30日に入れる事となりました。備品などはこちらが用意するので身分証だけ持って21:30にお店の前に来て欲しいとの事でした。後は実際に行ってみて実態を確かめるのみです。僕は不安と期待の入り交じった気持ちで30日を待ちました。

3時間8000円を時給換算すると2666.6円。東京都の最低賃金が現在時給985円で、昼の時間帯だと大体1000円前後、夜勤だと1200~1500円が一般的なアルバイトの時給かと思います。皿を洗うだけで一般的な夜勤のバイトの時給の2倍近い時給が発生するバイトが本当にあるのだろうか、騙されて損したり危険な目に遭ったりしてしまうのではないかという不安はずっとありました。

前回の記事を更新したあと、前回の記事を読んでくれたという芸人仲間から、ホストクラブにおける「ペナルティ」の話を聞きました。

ホストクラブでは遅刻等仕事上のミスをした場合、ペナルティが課せられ、給料からお金を引かれる事が日常的に行われているところもあるそうです。ペナルティが重なったホストの中には毎月の収支がマイナスになってしまう人もいるとの事でした。

もしかしたらこのペナルティというルールが皿洗いのバイトにも適用されるのかもしれません。グラスを1つ割る毎に1万円のペナルティが課されるかもしれません。ホストクラブで使われるようなシャンパングラスは細く割れやすく、新人だったら3~4本は軽く割ってしまうかもしれません。数万円のマイナスで3時間のバイトを終える事になるかもしれません。

そのようなネガティブな想像があらゆるパターンで浮かびました。やはり今までしてきたバイトとは明らかに一線を画す、とてつもない条件のバイトでそれがホストクラブともなれば、不安は自ずと膨らんでいってしまいました。

しかし、同時に意外とあっさり3時間皿洗いをするだけで8000円ポンともらえるのではないかという気もします。こればかりはウダウダと考えずに行ってみるしかない。30日の夜、僕は考える事をやめて歌舞伎町に向かいました。

歌舞伎町の近くにはお笑いライブの劇場がいくつかあるので、普段歌舞伎町を通ったり、ライブ終わりには歌舞伎町にある居酒屋で飲んだりもするので歌舞伎町自体には慣れているつもりではあったのですが、ホストクラブのような歌舞伎町のディープな部分に触れる機会は今までありませんでした。


お店の前に到着しました。豪華な店構えでした。目の前に立った瞬間、一気に緊張してきました。緊張というより、怖かったです。入りたくないと思いました。僕が入って良い場所ではないと感じました。

それでもここまで来てやめる訳にもいかなかったので、Iさんに電話をしたら外まで来てくれ、Iさんと一緒に地下の階段を降り、ホストクラブの店内へ入りました。

ドラマや映画などで観るような、ホストクラブの光景がそこにはありました。もう、ホストクラブの光景としかいいようがない、そんな光景です。

僕はIさんに連れられ、奥まったところにあるボックス席に通され、支配人を含めた3人で軽くこれからの流れ等に関する説明を受ける事となりました。

支配人は30-40代ぐらいの方でしょうか。若々しく健康的な見た目のイケメンでした。優しく分かりやすく色々と説明をしてくれて、怖さは第一印象から感じる事はありませんでした。ただ、僕はもうすぐにそこから逃げ出したくなっていました。

ホストクラブの空気に完全に呑まれてしまいました。ドラマや映画などで観る光景そのままなのですが、ただ1人、僕だけがそこで浮いているような気がしました。僕は現在坊主頭で167㎝の、野球部の補欠のような見た目なのですが、そんな人間がホストクラブにいるのはドラマでも映画でも観たことありません。

ここに僕はいるべきじゃない、怖い。僕は説明を受けながら、普通に泣きそうになってしまいました。僕が不安に感じていたような、損したり危険な目に遭ったりといった事ではなく、ただただホストクラブの空気に呑まれて泣きそうになってしまいました。

それでもとにかくやるしかありません。説明自体は事前に聞いていたのとそれほど違いはありませんでした。キッチンでの作業には白いワイシャツが必要だったようで、僕はそれを言われてなかったので持ってきておらず、Iさんとドンキホーテに行って買ってきました。

お金は僕の財布から出したのですが、領収書をお店の名前で書いてもらい、それを渡したらすぐにお店のレジからワイシャツ分のお金をくれました。今のところ損したり騙されたりは全くしていません。

それを着て、お店からもらった前掛けとチョッキを着ました。格好に関してはちょっといいレストランや喫茶店のウェイターみたいになりました。実際、僕に与えられたポジションの名称はウェイターというようでした。早速作業に入る事となりました。ホストの方とお客さんでにぎわうフロアを通り端にあるキッチンに通されました。

キッチンには3人いました。シェフの方が1人、僕の先輩にあたるウェイターの方が2人、そして僕が足されて4人。これがキッチンの体制となるようです。

まずウェイターの先輩の1人にグラスの洗い方を教わる事となりました。頭文字を取ってYさんとします。Yさんはツーブロックで背は僕より少し高く、がっちりとした体型の若い男性でした。名前を名乗って挨拶するとにこやかに元気よく答えてくれて、手を差し出してくれたので、握手をしました。

ホストクラブでは大量のグラスを使用するようで、キッチンにも使用済みのグラスが大量に戻ってきます。それらを洗剤をつけた取っ手付きスポンジで洗い、水で流し、トレイに置いていきます。

グラスは普通のグラスが大きさの違いで2種類、シャンパングラスが2,3種類、後はロックグラス、デキャンタと呼ばれる割りものを入れる大きなグラスな分かれています。

洗い方にそれぞれ大きな違いはなく、量がとにかく多いという点と割れやすいため注意が必要という点はありますが、普通の洗い物作業とそれほど違いはありませんでした。

とりあえずグラス洗いをするように指示され、黙々とグラスを洗いました。キッチンは普通のキッチンだったので、先程感じたホストクラブに呑まれるという恐怖感は少しずつ薄れ、落ち着きを取り戻して来ました。意外だったのはキッチンにホストの方がひっきりなしに飲み物や氷を取りに来るという事でした。

僕はキッチン作業だとそれほどホストの方達と関わる事もないのだろうと思っていたのですが、確かに考えてみれば、通常の飲食店とは異なり常にテーブルにホストの方がいるので、お客さんは注文もホストの方にするのでしょうし、注文を受けたホストの方がキッチンに来るのは自然な流れです。

ホストの方にも様々なタイプがいました。髪を染めている人もいれば黒髪の人も、背の高い人もいればそうでない人も、スーツの人もラフな格好の人もいて、オラオラ系可愛い系、性格にもそれぞれ違いはありそうでした。多種多様のイケメン達が寄せては返す波のようにキッチンを行き交いました。

後編(もしかしたら中編)に続きます。

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