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5日目 平和島の冷蔵倉庫 2連続奇跡へのリーチの果てに

皆さんこんにちは。前回は、倉庫の夜勤に行ったら終電前に帰れる事になったという奇跡の夜の記事を投稿しました。今回はその翌日にまた倉庫の夜勤に行ってきたのでその話を書きたいと思います。

終電で帰れたのは3日の夜で、明けて4日は丸一日予定がありませんでした。僕は4日の9:55にアラームをかけておきました。もしこの時間に起きて、作業出来ないほどの筋肉痛でなければこの日の夜勤にも応募しようと思っていたのです。

9:55に起きて、筋肉の状態を確かめてみました。わずかな筋肉痛はありましたが、今日夜勤に入っても問題ない程度の痛みだったので、10:00になったら電話をかけて夜勤に応募しました。この日もあっさり仕事に入る事が出来ました。また1度18:00に事務所に行くというシステムでした。このシステムは固定なのかもしれません。

18:00少し前に事務所に行きました。受付の人は僕の顔を覚えていて「地図は大丈夫ですよね?」と言いました。どうやら夜勤は1度事務所に行くシステムだけでなく勤務先も前2回に行った平和島の冷蔵倉庫で固定のようでした。

電車に乗って平和島へ行きました。今日はさつまっこを食べないと決めていたのですが、駅前の別のラーメン屋に行ってしまいました。

平和島の鶴見家という家系ラーメン屋で塩ラーメン(680円)とライス(50円)を食べました。平和島の夜勤の前にはラーメンとライスというのが自分の中で定番化してしまい、安いパン等で済ますことがどうしても出来ませんでした。

しかし、さつまっこに行かなかったというのは自分の中では大きな意味がありました。もし2日連続でさつまっこに行ってしまった場合、前日食べた通常のラーメンとライスから変化をつけたいという気持ちから、900円するさつまっこラーメンという店名を冠したラーメン、さらにはご飯ものもチャーシュー丼といった、より値の張るメニューを頼んでいた可能性も少なからずあった訳です。

なのであえて別のラーメン屋に行って最も安価なラーメンとライスを頼む事で、自分の中での変化をつけて安く済ませるということには成功しました。美味しかったです。

橋を渡って冷蔵倉庫に到着しました。この日の日雇いは昨日と同じで僕を含めて7人で、昨日もいた人は1人しかおらず、それ以外の人は初めて見る人達でした。

しかし、その初めて見る人の内の2人ほどは顔見知りなのか、談笑していました。雰囲気から熟練の日雇いであることが察せられました。

管理者の点呼の際に、この倉庫で勤務するのが初めてかどうかと、そもそもこの会社に連絡して働くのが初めてかどうかという2点の質問があり、それぞれ1人ずつ手をあげていました。つまり、少なくとも2人は僕よりも初心者にあたるという訳です。1人は僕と同世代ぐらい、もう1人は40代ぐらいの男性でした。自分よりも慣れていない人がいるというのは、何故か僕を安心させました。

倉庫内に入りました。現状のコンテナ作業はレギュラーだけで事足りているようで、日雇い全員がラップ巻きを指示されました。一応2日目の時の図を貼らせて頂きます。

前日は持ち場に2人でもパレット待ちの時間が生まれていたので、それを7人でとなるともはや持ち場は深刻なパレット不足に陥っていました。パレットの譲り合いがそこかしこで生まれていました。

しようと思えばラップを持ったままパレット待ちのふりをしてずっとラップを巻かずにいる事も可能な状況でしたが、それも忍びないので時々誰も手を付けていないパレットにラップを巻いて、作業に参加はしているという空気を出しました。

完全初心者の2人もレギュラーの人に教わってラップを巻いていました。2人とも僕が以前陥っていた、引っ掛けてもすぐ取れる、ラップがぐちゃぐちゃになるなどの時間のロスの嵐に見舞われていました。

僕はそんな彼らを横目に、慣れた手つきでラップを巻きました。少しの優越感が生まれましたがすぐにそのような自分に嫌気が差しました。ラップなんてすぐに慣れて巻けるようになりますし、そのような事で優越感を覚える事自体が虚しいからです。

コンテナ作業において僕が彼らよりも早いスピードで荷下ろししていればまだ「力がある」という他の場面でも用いれる尺度で優れているという解釈はできるので優越感を抱いても仕方がないかもしれませんが、「上手くラップを巻ける」というのは「上手くラップを巻ける」という尺度でしかありません。ほとんど意味のない物差しです。

1時間ほどそのように日雇い全員でラップ巻きをしているとコンテナが空になったようでそれと連動してこちらに来るパレットも尽きてラップ作業は終わりました。

管理者の方からコンテナの作業はこれで終わりだと告げられました。びっくりしました。今日は1度も荷下ろしに携わる事なくコンテナが終わったのです。作業はもちろん楽な方が良いですが、1本ぐらいはコンテナの荷下ろしをして、自分の筋力の確認と向上をしておきたかったという気持ちもありました。

別の持ち場に行くように指示されました。次の持ち場での作業は積み替えでした。フォークリフトに乗っているレギュラーの人が運んでくるパレットの上に積まれた段ボールを別のパレットに決められた積み方で積み直すという作業です。

積み替え作業を行っていたのですが、人数に対して作業量が少なく、すぐに終わりました。レギュラーの若い男性は、「いやぁ、もう積み替えるパレットないなぁ...」と言っていました。

とはいえ、日雇いの僕達に何かしらの作業は与えなくてはいけないようで、どこかから一応は積み替えの必要なパレットを無理やり見つけて来て僕らに積み替えさせていました。

他の持ち場にも急を要する作業があるようでもなく、僕ら日雇いにさせるべき仕事はもうほとんど無いように僕には見えました。僕は昨日と同じ空気を倉庫全体に感じ取りました。今夜中に帰れるというあの奇跡がもう一度起きそうな空気でした。

僕は昨日一緒だった人に思いきって「昨日もいましたよね?これ、昨日みたいに帰れそうな感じですか...?」と聞いてみました。

50代前半ぐらいで熟練の日雇いの雰囲気のあるその方は意外にもにこやかに「ちょっとまだわからないけど、今日も美味しい可能性はあるかもね。」と言っていました。

今日もあの奇跡が...そう思った瞬間から僕の動悸は早くなりました。しかしまだどちらに転ぶかわかりません。ドキドキしました。この感覚には覚えがありました。それはパチンコのリーチの演出です。

パチンコは数える程しかやったことがないのであまり詳しくないですが、2つの数字が揃うリーチになったら寸劇のようなアニメーションが始まってそれが当たるか外れるかするまで続くという演出と呼ばれるものがあり、それを思い出したのです。

今は7 7と揃っていて真ん中のリールが回っている状態です。777と揃ったら終電前で帰れます。この無理やり生み出され続ける積み替え作業が尽きたら帰してもらえるかもしれません。

7こい...7こい...僕は祈りながら積み替え作業を続けました。「もう本当に無いな...」と若いレギュラーの人が言いました。この持ち場での作業が尽きました。時計を見ると22:30でした。いい頃合いです。帰ってもいいと言われるならそろそろです。僕は固唾を呑んで次の指示を待ちました。

若いレギュラーの人よりも上の立場と思われるレギュラーの人が来て「1時間休憩で」と言いました。787でした。7は揃いませんでした。ここで1時間休憩を挟むという事は僕達を終電で帰すつもりがないという事です。僕は落胆してしまいました。

休憩場所である外の喫煙スペースに向かいながら先程僕が帰れそうか聞いた日雇いの人から聞いたところ、恐らく今日の状況は昨日とほぼ同じ、むしろ今日の方が早い段階で帰れる状況ではあったけれど現場責任者であるレギュラーの方が昨日と今日では違うとの事でした。

昨日責任者だった人が今日はおらず、今日の責任者は昨日の人より厳しい人だから、終電前に僕らを帰すというのは本来会社としてはそんなに良くないので帰してもらえなかったのではないかと言っていました。

僕は落胆しましたが納得しました。そもそも3時間働いただけで9490円もらえた昨日が異常なのです。2日連続で終電で帰すのはさすがにするべきではないと判断したのでしょう。人件費の無駄にもなります。

しかし、状況としては昨日も今日も7人という人数を持て余してる訳ですからどちらにせよ人件費を無駄にしていることに変わりは無いかもしれません。どういう理由かは不明ですが会社側は必要な日雇い人数を少なくともこの2日間連続で読み間違えて多く補充してしまっている訳です。

会社側が正しくこの2日の状況を読めていたら7人どころか1人も日雇い募集をかけていなかったかもしれません。そう考えると僕はその読み間違えによって生じた隙間に上手く入り込めたとも言えます。この2日とも仕事にありつけたという事自体ありがたく思うべきなのかもしれません。

そのような訳で1時間休憩に入りました。その後は本当に特筆すべき事のない作業が続きました。

段ボールに「○○ハム」と呼ばれたシールを貼っていく作業、先ほどと同じ無理やり生み出されたような積み替え、同じく無理やり生み出されたようなラップ巻き等を行いました。

その間に仕事が無さすぎるという理由でもう1度1時間休憩を挟みました。15分程の小休憩も2度ほどありました。この日は本当に仕事がなかったのだと思います。気だるい時間が過ぎ行きました。正直なところやはり終電で帰して欲しかったです。

何とかその気だるい時間にも終わりが来て4:00ちょっと過ぎに終業となりました。この日はコンテナもせず肉体的にはほとんど疲れていませんでした。暇疲れのような疲れはありました。

終電で帰るという奇跡は2日連続では起きませんでしたが、本来ならば電話した段階で今日は仕事が無いと言われてもおかしくない程の仕事量だったので、やはりこのような状況の隙間をついて入れた事は良かったように思えます。

そのような訳で、今回は奇跡の夜再びならずだったという記事を投稿しました。本日の教訓はこちらになります。

「冷蔵倉庫では奇跡は2度起きない」

お付き合いありがとうございました。次回も是非お楽しみ下さい。

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